evidence 8「DVD-RAM の中には」
「んじゃ、俺が説明するよ…」
「いよっ副部長!」
琴音が囃し立てる。ただまたコントもどきをやりかねないからお口チャックな。
「土方、お前ちゃんと考えてきたんだな…さすがだ」
「日頃から比較的マジメにやってるからな」
どやぁ、と奈々子に切り返す。
奈々子はフン、と微笑みながら鼻で笑うが。
それめちゃくちゃリアクションに困るからやめて欲しい。
まあいい、ツンツン気味の奈々子は放置しておこう。
「では、」
解説タイム入ります。
この県立東雲学院には、ちょっと珍しい部がある。
それが、この「メディア研究部」であって。
そもそも、なんでこんな部が設立されたかというと、
七年前にさかのぼる。
当時は、大人気スポーツマンガがいくつか連載されていた時だった。
各方面でメディアミックスが展開され、
それに影響された少年少女たちは部活動に入る形で憧れのキャラたちに近づいていった。
なんとまあ、ジュブナイルな精神だろうか。
人のこと言えないけど。
その影響で、運動部への新入部員は急増。
だがその裏で文化部への新入部員は激減していった。
そして一年後、学院のいくつかの文化部で異常事態が発生した。
「新入部員ゼロ」という、いわゆる廃部フラグが立ったのだ。
この事態に、職員ならびに生徒会はある決断をする。
「部の合併」である。
要するに、
「部員が限りなく少ないなら部室のスペースがもったいない!」
「なんなら一つにまとめて押し込んじゃえ!」
「ついでに部費も削っちゃえ!」
と、生徒会の皆さんが戸惑っているうちに、職員陣は勝手に話を進めた結果。
写真部、新聞部、視聴覚研究部、イラスト研究部の四つを廃部となった。
かつ、一つの部に強制送還。
そうしてできあがったのが「メディア研究部」というわけだ。
四つの部に共通していたのがメディア関連ということでその名前がついたとか。
そして集まった十一人の部員が、初代メディ研部員の皆さんである。ちなみに今は二十代半ば。
彼らは学院の側の理不尽な対応に不満を募らせていた。
さらに忙しい運動部連中からは暇人扱いされる始末だったとか。今もだけど。
それでも校内新聞の発行、映像作品の作成、行事ごとの写真撮影、短編小説の執筆など、コツコツ活動してきたらしい。
が、しかし。
どんどんと部員は減少していき、メディ研自体も廃部の危機に至った、現在。
「…メディア研究部なのにメディアによって潰されかけるなんて皮肉な…」
七代目・部長の奈々子が深く溜め息をつく。
「ちょっと違う気がする」
正確には、メディアに潰されかけてメディア研究部になったんだよね。
「…壮絶だったんですね」
「…壮絶だったんだよ」
葵と琴音も、しみじみと感傷に浸っていた。
「さて!過去の話はこれくらいにして、現在の活動も紹介しないと」
暗くなりかけた雰囲気を一掃するため、棚から段ボールを取り出す。
「…これは?」
葵が興味深そうに段ボールを見つめる。
「去年の活動の軌跡、みたいなもの…かな?」
「お、あたしのあるかなー?」
琴音は段ボールを開けて、がさがさ、と中身をあさり始める。
「…あ、あったあったー」
中から取り出したのは、市販されているDVD-RAMのケース。
見た目はそうだが、中にはしっかりとデータが刻まれている。
その証拠に、「映像作品 No.1〜2 豊崎琴音」と、ケースに付属しているカードにマジックで書かれているから。
「これ、琴音ちゃんが作ったの?」
「んー…うん。一応あたしは映像製作を専門にしてるからね」
葵は憧れの視線を琴音に浴びせるが、浴びてる本人はあまり元気がよろしくない。
「篠原、パソコンどこやったっけ?」
「どこって机の下にあるだろ…」
見渡すと、机の上にはノートパソコン。見慣れた、使い慣れた一昔前のOSのやつだ。
「おう、あった。…起動遅いな、やっぱり」
起動ボタンを押したが、時間が経っても「ようこそ」が表示されない。
「だってこれ十年前に発売されたやつですよ…」
葵は仕方ないよ、と言わんばかりの目でパソを見つめる。
「こいつは創部以前から活躍してる…今も現役でな」
感慨深く、奈々子は葵に返答するようにではなく、ただ呟いた。
「まだ立ち上がんないな…」
「そうそう…そのまま起動しなくていいんだよ。ついでにこれも再生せずに」
琴音はガクガク震えながら独り言。
この反応は、間違いない。
琴音にとっての黒歴史だったよな、確かあのDVD-RAM。
「てか…自分で作ったやつなのに忘れてたのか?」
「だってこれの後にすぐ別作品を」
淡々と述べる琴音の額には、汗が滑る。
「あ、立ち上がったよ奈々子ちゃん」
「よし、セット」
いつの間にか奈々子の手に渡ったDVD-RAMはパソに挿入されて。
「ぁはああああ! だめぇ! あたしの若気のいたりがぁぁ晒されるぅ!」
黒歴史フラッシュバックの危機に直面した琴音は冷静さを失い、
ってか俺と奈々子は内容だいたい知ってるしね。
「あれ!? これどうやって出すんだっけ!?」
琴音はカチカチカチカチ、とクリック連打。おまけに手も震えている。
「だっダメだ琴音! そんなにクリックしたらっ」
「ぎゃー! メモリが侵食されるからやめろ!」
「こ、琴音ちゃん落ち着いてぇっ!」
三人の制止も、多分耳に入ってないだろう。
さて、いろんな悪条件が揃ったパソさん。
動作の重さはもちろん、システムの脆さもピカイチだ。
つまり、
「ああああ…ブルースクリーンだ」
「やっぱりか…年寄りに肉体労働させるようなもんだしな…」
老体に鞭打たれたパソさんは反抗期、応答しなくなりました。
「どうするんですか…これ?」
「俺らじゃどうにもならない…な」
一方、パソさんをいじめた琴音も魂が抜けたようにフリーズしていた。
To be continue...




