evidence 7「これがいつもだったり」
東雲学院の東校舎三階の端にある、約六畳半の教室。
そこが、「県立東雲学院メディア研究部」の部室である。
狭い部室ながらも、窓からはちゃんと光が差し込み、カビ臭さはあまりない。
室内には長机が二つ、イスが四つと、
そのイスに座っている、四人の高二男女。男女比率、一対三。
棚には、大事なもの、いらないもの、いろんなものが積まれている。
七割はいらないものだが。
「…す、すごいんですね」
と、榎本さんこと、葵は感嘆する。
「えー改めまして、メディア研究部、略してメディ研にようこそ」
コホン、とそれらしく俺は切り出す。
「あ…どうもです」
葵はぺこり、と律儀に頭を下げる。
いや、下げるのは俺らのほうだから。
「榎本さんだったな? 私は二年五組の篠原奈々子。この部の部長だ」
奈々子はクールな笑顔を見せながら流暢に話した。
「あ…よろしくです…えっと、しの…」
「奈々子、でいいぞ」
ふふ、と奈々子はまるで姉が妹に言い聞かせるみたいに。
「奈々子ちゃん…でいいかな?」
「よろしく、葵。それでこっちが、」
と、自己紹介が琴音に引き継がれる。
「っと、二年五組の豊崎琴音。琴音って呼んでね葵ちゃん」
ふわり、と琴音はわりと簡潔に終えた。
「よろしく…です…琴音ちゃん」
「まーそう固くならずに」
そう言って琴音は葵の肩をもみもみ、と揉む。
「あふぅ…きもちひぃ…でふ…」
そんで葵は軽く昇天状態。
「…にやつくなよ、土方?」
いきなり奈々子が放置ぎみの俺に振ってくる。
「なっ…別ににやついてなんか…」
「顔が赤いぞ?」
にやー、と奈々子が詰め寄る。
「おうっ! 想介も私の超絶マッサージの餌食になりたいのなら遠慮せ」
「お断りしておく」
悪ノリするんじゃない、琴音。
「み…みんなテンション高いですね」
なんとか落ち着きを取り戻した葵がふぉー、と静かに感動。
いやそこ感動ポイントじゃないから。
「まあ、いっつもこんな感じだからなあ」
「あの…普段の活動って、どういうことしてるんですか?」
「…よくぞ聞いてくれた」
一仕事終えておとなしく座ってた琴音がガタリ、と立ち上がる。
「ではっ! 私たちメディ研の活動の説明を、」
琴音のふわふわボイスで言われてもいまいち締まらない。
「…奈々子よろしく」
「なっ、私か!?」
「なすりつけたっ!?」
なんという予想外の展開。
「いや、琴音がやれ」
「いや部長の奈々子がやるべきでしょここは」
「本来はな…だけど、」
奈々子は拳をぐっ、と握り、
「そんなの全く想定してなかったッ!!」
「力強く言うなァァ!」
それこそ奈々子の凛々しげボイスで言っちゃだめだって。
そして、俺のツッコミの勢いがすごい。
今日は調子が良いみたいだ。
「そっか…この部の活動はテンポのいいコントを研究するんですね」
「榎本さんそれは断じて違うから」
葵は早くもこの独特の雰囲気に飲み込まれつつあった。
そんなことよりも、まだコントもどきを続けているアホ二人を止めなきゃ。
「さて…これを止めるには」
被写体をどう写すか考えるみたいに、観察する。
「…ああ」
秒針が二回動くよりも早く、理解した。
「部長の奈々子がやるのー」
「琴音、あとで飴あげるから」
…今だ!
「じゃあ俺がやる」
「「どーぞどーぞ」」
「ぅぷっ」
葵はこの展開に吹き出したけど、
長年使われてるギャグだからね、これ。
「土方…遅いぞ」
「…くっだらねぇフリするなぁ」
まあでも、こういうのは嫌いじゃないし。
To be continue...




