evidence 5「とりあえず、作戦会議」
「さて…どうする?」
うん、夏海には自信ありげに「おう!」とか答えたけど。
かなりのステイルメイト状態。
「そうだな…土方、榎本さんは文化部に入ると言ったんだな?」
と、奈々子が聞いてくる。
「ああ、確かにそう言った。運動部に入るようなタイプじゃなさそうだし」
「ダメだよ想介、そういうこと言っちゃ」
と、奈々子の隣に座っている女の子に叱られる。
豊崎琴音。高二。文系。メディ研部員。
マロンブラウンのウェーブがかった髪型が特徴的な子だ。
「ダメって何が?」
「見た目で判断しちゃうことだよ」
ああ、なるほどね。
「まあ琴音、土方も悪く言ったわけじゃないし、スルーしてやれ」
「はぁーい」
そう言って、琴音は昼食のたまごサンドにかじりつく。
ここは、学院の中にある食堂。
かなり広いしメニューも豊富なので、昼休みの度に大盛況である。
そして、その食堂のテーブルの一つに集まっているのが、絶賛廃部危機なう、のメディ研の部員三人。
ここは昼飯がてら会議にはもってこいの場所、
「おおっ、四組の土方が女二人連れてるぞ」
「アホ、あれはメディ研のやつらだろ」
…でもなかった。
「んー…悪い…」
なんとなく謝罪。だって思春期の女の子にとって脈もない野郎とセットでヒューヒュー言われるのは嫌だろうし。
「気にしないよーそのくらいで」
ブンブン手を横に振りながら琴音は答える。
「私もだ。それにああいう輩は殴りたくなる」
ポキポキ指を鳴らしながら奈々子は答える。
ってなんか怖いからやめて。
「さて、話を戻すか」
奈々子が真剣な顔に戻る。
「とにかく…俺がホームルームの時にでも勧誘してみるよ」
「そっかー想介と同じクラスだもんね」
「わかった、私たちも行くから頼むぞ」
というわけで、作戦決定。
作戦名、「とりあえず勧誘してみる」。
全く戦略性を感じない。
昼休み終わりの授業、四時間目は現国。
ちなみに、東雲学院における授業1コマの授業時間は60分と長い。
県内のとある進学校でもこの方式で、1日に60分×5、6時間をこなしている。
「…筆者がここで解いているのは、」
―眠い。
時折、教師の話が途切れ途切れになって聞こえる。
今まさに副交感神経がはたらいているところだ。
いわゆる「マジで寝ちゃう五秒前」という状況。
「…うー…やば…」
首がかっくん、と揺れているのを意識の遠くで感じる。
「…くぅ」
俺の意識、ログアウト。
「…えーじゃあ、土方。ここで述べていることを抜きだし…」
宮本先生、土方くんは絶賛居眠りキャンペーン実施中です。
と、誰か女子が言ったのが聞こえたような。
まあそんなキャンペーン実施したらあっという間に倒産だよね、間違いなく。
「…ったく」
ひゅっ、と細長くて小さい物体が投げられる。
コンマ数秒後に、
「ふごっ!」
俺の額に着弾。
「模試の存在も忘れるなよ…」
なんでもないような一言が。
生徒全員を戦慄させる。
「ひいっ…」
これはいわゆる言霊か。それとも単なる勉強不足によるものか。
「そっそっか…テスト…」
隣で榎本さんもはわはわしていたり。
まあ、いいや。
To be continue...




