evidence 14「変態という名の淑女」
昼休みでの騒動があったせいで、活動計画についての会議は延期になった。
奈々子の突然の豹変が気になりつつも、俺はなんとなく授業を受けた。
そして、放課後。
いつものように、教室のある西校舎から、渡り廊下を歩いて東校舎へ向かう。
四月も中頃に入り、段々と陽の光の暖かさが増してきている。
校内に植えられている桜も少しずつ花を開き始め、もうすぐ満開、と言ったところだろうか。
「うーっす、って、おお!?」
部室のドアを開けると、既に三人いた。
ただ、三人といってもちょっと違っていて。
奈々子と、なぜか正弥、そして、
「おぅふ副長であらぬか!」
ハイテンションな女の子が一人。ただし琴音ではない。
「榊原…俺は新撰組じゃないっつの」
榊原祐。高二、文系、メガネ、軽音部でギターボーカルを担当している。
けっこうな実力があると正弥から聞いているが、
同時にガチオタ、かついわゆる変態らしい。
「いやいやーそんなこと言って前世では新撰組の中でもうそりゃボーイズ…」
「よし黙れ」
こうなれば強行手段に出るしかない。
ちょうど近くにあったクッションを祐に目掛けて投げる。
「甘いぞ遊戯!」
祐はさっ、と身体をひねってクッションを回避する。
「ぐおっ!」
代わりに正弥がクッションに被弾した。
「おうすまん正弥」
軽く謝っとこう。
「想介…この恨み…忘れねえ」
「おーす! 想介ー奈々子いるー!?」
「ふああ…眠い」
ドアが開けられ、琴音と葵も入ってくる。
「おぅふのぶ殿!」
「誰が姉じゃい!」
祐が琴音にビシッ、と呼んだ。
そして琴音も瞬時に切り返す。
ていうか、のぶって誰だよ。
「佐藤のぶ…土方歳三の姉と言われてる人だね」
と、葵はなんかさりげなく豆知識を披露する。
「詳しいね随分」
「あ…いや、本で読んだから」
照れくさそうに葵は笑う。
って俺も本読んだよな確か。後でちゃんと読み返しておかないと。
「っと、初めましてだね転校生殿!あたしは榊原祐、よろしこ!」
祐が葵の存在に気づき、「よう」と右手をビシッと上げた。
「あ…よろしく」
少々変態に押されぎみの葵である。
「さて…後は山崎だけか」
「って山崎も来るのかよ」
さすがに七人もこの部屋には入れないぞ。
「あれ? 山崎なら今日休みだろ?」
正弥がイスの上であぐらをかきながらそう言った。
「だよな榊原? お前同じクラスだからわかるだ…」
「今度の日曜、秋葉原に行くんだぞーいいだろーいいだろー!」
「ふおおお! わざわざ電車で二時間近くもかけて行くなんてええ!」
祐は琴音と共になにやらトークに興じていた。
てか、テンション高いのが二人揃うとなんかユニゾンしてうるさいんだけど。
こんな相乗効果があるなんて知りた…くは無かった。
「は…話を聞けお前らぁ…」
正弥は無視されたので意気消沈。
「ドンマイ、正弥」
俺にうるさいの二人をどうこうできないが、せめてこの友人は慰めてやらねば。
「って篠原、活動計画の話をするんじゃなかったのか?」
俺は少々心配になって奈々子に尋ねた。
「ああ…そうだったな」
「結局山崎は今日学校休んでるし、うちらの会議は明日だね」
祐はさも残念そうに立ち上がり、ドアに向かう。
「じゃ先行ってるよ奈々子、グッバイ、メディ研の皆さん」
そう言って祐は手を振りながら部室から出ていった。
「そんじゃ俺も行くか」
正弥も立ち上がり、去ろうとする。
「あ、正弥。今日一緒帰れるか?」
俺は思い立ち、声を掛ける。
「おう、上がりは六時だし大丈夫だぜ」
「先帰んなよ」
「わーかってるって、じゃーな」
正弥は中からドラムスティックのケースがはみ出たカバンを持って出ていった。
「さて、じゃあこっちの会議もさっさと終わしてしまおう」
奈々子が切り出した。
「あれ? それ奈々子ちゃんの?」
葵が指差したのは、壁に立て掛けられていたセミハードのギターケース。
「いや、兄貴が使ってたやつを貰ったんだ」
「ちなみにそれは?」
俺は興味が湧いて尋ねてみる。
「フェンダージャパンのストラトキャスターだ」
聞いたことあるぞそれ。
「奈々子はお兄さんがバンドやってるんだよね」
「ああ。インディーズというか、けっこう精力的に活動してる」
「かっこいい…かも…」
葵は目を輝かせて感嘆した。
「そうだな…よし、そろそろ始めようか」
To be continue...




