evidence 12「友達、ということ?」
そして、翌日。タイムリミットに指定されていた木曜日。
昼休みの時間、俺らは揃いも揃って職員室の中にいた。
「…はい、確かに受け取ったわ。これで正式に入部になるわ」
と、雨宮先生こと江里花は告げた。
「はい! ありがとうございます!」
葵ははっきりと明るく、そう答えた。
これで葵は晴れて東雲学院メディア研究部の四人目の部員となった。
それと同時に全員の肩の力がほっ、と抜けた、ように感じた。
「やっと…やっと終わったな…」
思わず床にへたりこみそうになる俺。
「ああ…なんとか一段落というところだろう」
いつも通りの落ち着きを保ちつつ、安堵の表情を浮かべる奈々子。
「いえー! あおいんキタコレー!」
テンションマックスになる琴音、って、
「こらっ…ここは職員室だろーが…」
とっさに後ろに回り込み、琴音の口を塞ぐ。「ふぎゅー…」と猫みたいに唸る琴音。
「おう…土方大胆だね…」
江里花がかなり驚きながら言う。
「あっ、いやこれは違うんです」
「まあ琴音と土方は中学から一緒ですからね」
「あら、初耳よそれ。奈々ちゃん詳しく聞かせて」
二人の会話を聞いて、なにやら良からぬことが始まると察知した。
押さえ込んだままだった琴音もこくこく頷いていて。
「これは琴音自身から聞いた話なんですけど、中学の三年間と去年までずっと同じクラスで」
「へぇぇい奈々子ー! そこまでそこまで!」
俺の拘束から解放された琴音は阻止すべく奈々子に殺到、
しかし、
「はいお黙り」
「むぎゅ」
今度は江里花の拘束によって阻止された。
ただ拘束といっても、
江里花の双子桃色山脈による拘束なのだが。
双子桃色山脈とはいわゆる、胸である。お、で始まるアレ。
ただ、生徒に人気の美人教師がそんな大胆なCQCを繰り出してるのを見ると、
すごくいたたまれない気分になるから困る、いろんな意味で。
「はわぅ…」
そして、その手法に敏感に反応しているのは、葵。
「どうした?」
「いや…あんなこと私には出来ないよ…って」
その言葉を聞いて、さりげなく葵の胸を見る。
小さな手が添えられているそこは、なんというか、関東平野というか。
…うん。
うちの夏海といい勝負だ。
でも大丈夫、あと十年後には江里花並みに大きくなれるよ。
とか言いたかったけど、あまりにもこれじゃあ変態だし。
なんか奈々子に張り倒されそうだから、俺の心の内にしまうことにする。
「じゃ、よろしくねー」
「…わかりました」
おっと、変な妄想してるうちに話が進んでしまっていたようだ。
先に職員室を出るためにドアに向かった三人を追う。
「どうかしたのか?」
ドアを閉めて、奈々子に尋ねる。
「また面倒なことだよ…」
「てか聞いてなかったの想介?」
と、琴音がちょっと呆れながら返す。
そんな彼女の頬が、ほんの少し赤くなっているような、そんな気がした。
「ああ…ちょっと意識がな」
「でも琴音ちゃんもずっと視線動いてなかったよ…上の空みたいで」
「くっ、バレたか!」
「「おい」」
俺の意識が飛んだのは、そういう方向ではなく、単なるエロ心だ。
ただ、
もし、俺の行動の意図に琴音の考えていたこと、それがもし、シンクロしていたとしたら―。
まさかな、どうだろうか。
自分だけで、そう結論づけるのは良くない。
その過ちでたくさんの男子高校生が散っていったことを、俺は知っているから。
「まあ、細かいことはあそこで話せばいい」
「あそこ、だな」
「お腹へったー」
はい。恒例のあそこです。
「榎本さん、金持ってきてる?」
「あ、うん…。私初めて行くから、楽しみかも」
お、今のやり取りで「あそこ」がどこかわかったのか。
なかなか侮れないぞ。
「ほら、時間なくなるから早く行くぞ」
「へいへい」
そして、俺たち東雲学院メディア研究部四人は。
職員室の脇の階段を降りて「あそこ」へ向かう。
To be continue...




