evidence 10「予想外の展開」
俺は部屋を出て、電話に出た。
「どうした?」
『おー、やっと出た。ちょっと報告があってな』
報告、と言った正哉のトーンの明るい声。
まあこいつのことだから、いつものこと、
『俺ら…軽音部の存続が決定した』
「…おお」
その言葉を聞いて、始めに浮かんだ安堵。そして後から来た焦り。
―まさか、とは思うが。
「…で、誰がご親切にも入部してくれたんだ?」
『おう、篠原が入ってくれたんだ』
「え? 篠原って?」
『お前らのとこの部長の篠原だぞ。…なんでも兄貴がインディーズで活動してる人で、その影響で二年くらいギターやってるみたいでな』
おいおい。そんな話は当の本人からも聞いたことはないぞ。
兄が音楽活動やってることは薄々聞いていたが…。
「要するに掛け持ちだよな」
『そりゃーね。メディ研の部長辞めさせてまで強制させてねーよ』
「ならいいんだ…当たり前だけどな」
とにかく、まだ余命は残されていた、ってことは分かったから大丈夫…だろう。
『お前らの方はどうなんだ?』
「まだわからねえんだよ…」
『っ…明日までだろ? 大丈夫なのか?』
「わかってる…なんとかしてみせるさ」
絶対だ。
『そうか、じゃまた明日な』
「ああ」
通話を終了し、ケータイを閉じた。
「ん…?」
俺はサブディスプレイに表示されているメッセージに気付いた。
『新規メール 1件 着信 1件』
さっきまでは表示されていなかった。
とすると、正哉と通話している間に届いたワケだな。
「誰だ…?」
まず、受信ボックスから確認する。
『篠原奈々子 無題』
「篠原…」
例の件だろうか…とにかくメールを開いてみる。
12/4/15 23:05 篠原奈々子 無題
夜遅くに悪い。
多分中村から話は聞いてると思うから、簡潔に伝える。
とりあえず、九月の東雲祭までサポートメンバーとして軽音部に入ることになった。
もちろんメディ研の活動もちゃんとやってくから心配しないで欲しい。
それと、部室の段ボールに入れていた卒業した先輩が書いたイラストが無くなってるんだけど、知らないか?
-END-
「簡潔でもないよなこれ…」
とにかく、状況はわかったけど。
最後の一文が気になった。
恐らく、二個上の先輩がイラストの下書きに書いたけどそのまま放置して段ボールに突っ込まれたあのイラストだろうけど。
両手の指を駆使して、メールを打っていく。
12/4/15 23:14 土方想介 Re:
事情はわかった。正哉のアホを頼むわ。
イラストのほうはわかんない、悪い。
-END-
すぐさま返信する。数秒後、『送信しました』のメッセージ。
「さて…次は、っと」
着信のほうを見てみる。
だが、着信履歴に表示されている番号は、全く見覚えのない番号である。
「間違い電話か何かか…?」
とにかく、スルーしても問題ないみたいだ。
「お兄ちゃぁん…」
ずっと待たせていた夏海が寂しげに、ドアの向こうから覗きこんでいた。
「電話終わった? 誰から?」
「ああ、正哉だよ」
そう答えると、ほっとしたみたいにぺったんこな胸を撫で下ろして。
「なーんだ、男か…」
そう残して、自分の部屋のほうに歩いていった。
「もう寝るね。おやすみ、お兄ちゃん」
「おやすみ、夏海」
いつものようなやり取りを交わす。
そうして、夏海は部屋に入ってドアを閉めた。
俺もそろそろ風呂に入って寝ようか、と考えた途端、
ぶるるっ、
またケータイのバイブが鳴った。
ディスプレイに表示されているのは、履歴に残っていたのと同じ番号。
「…」
ぴっ、
「もしもし…どなたですか?」
『あ…土方君でいいんだよね…?』
この聞き覚えのある声は、
「榎本さん?」
To be continue...




