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えびでんす。  作者: 紅アルペジオ
始まった、春
1/22

evidence 1「お決まりの展開」


かつて、日本が激動した時代があった。


一般には「幕末」とか、そう言われる。


江戸時代末期。平穏な世に突如訪れた外国の脅威、政治体制への不満、



そして旧幕府軍と新政府軍による、戊辰戦争。



高校生なら、これくらいわかってて当然である。


それでも歴史小説とか、専門書には教科書には載っていない真実が書かれていたり。



…まあ、そんなことはどうでもいい。




「…難解だな」


街路に植えられた桜が咲きつつある道を、本を読みながら歩く、一人の高校生。


土方想介。


高二、文系、甘党、彼女なし、童貞。


ある偉人と同じ苗字、ちゃんと由来があるのにインパクトのある名前で。


赤の他人から「土方想介くんだよね?」とかちょくちょく言われるが、


実際はどこにでもいるような、よく言えばごく普通、悪く言えば取り柄のない男子である。



そして手にしている本は、昨日買ったばかりの歴史小説。


それも、「土方歳三」に関する作品。


読み進めるうちに感じるのは、親近感―、



ギャンッ!



「うっ」


すぐ脇を通りすぎた、スポーツカー。


この道路は狭いのに、猛スピードで走っていった。


「危ねえなぁ…ったく」


本に集中していて全く気付かなかった。


万が一、事故ると悪いから、ながら歩きは止めよう。


だいたい新学期早々に事故ってはシャレにならない。


「後で読むか…」


本をカバンにしまい、走り出す。







「はあっ…ギリギリセーフか」


教室のドアを開けて、飛び込む。


既に教室には、半分近くの生徒が居た。皆それぞれ、予習だとか、やってない課題だとかをやっている。


「おーぅ、想介」


中学からの友人、中村正哉が「おっはよん」とあいさつを投げ掛ける。


「先生ならまだ来てないぜ」


「ならいいんだけど…」


今日は一学期が始まって三日目、まだ授業とかはない。


「でさぁ想介、突然なんだけど」


友人が話題を振ってくる。正哉のことだから、女の子に関することだろうけど。


「なんだ正哉?」


「うちのクラスに転校生が来るらしいぜ」


「へー…転校生か…女の子か?」


「もちのろんで」


やっぱり。




―それにしても転校生。しかも女の子。



どんな子なんだろう。


ツインテかな?


普通の人に興味がないのかな?


邪神だったりするのかな?


「想介…変な妄想してないか」


すいませんしてました。




「はい席についてー」


ガラッ、とドアが開けられ、担任が入ってくる。


「今日、この二年四組に新しい仲間が増えます」


「それじゃ、入ってきて」



そう担任が促して、女の子が教室に入ってくる。ショートカットのダークブラウンの髪型、身長はけっこう小さめ、と。


数秒で集めた情報で表すと、そういう子だ。


転校生の女の子はチョークを手に取ると、慣れない手つきで黒板に書いた。




「榎本葵」と。




「えっ、…榎本葵です…よろしくお願いします…」


緊張しているのか、小さな声でそう言う。


「えーと、榎本さんはこの春に埼玉から転校してきました。みんな仲良くするように」


と、担任が補足を入れる。


「うーっす」とか「はーい」とか、生徒からの反応が返る。


お決まりだなこのやり取りは。


「で、榎本さんの席は…」


と、担任が教室を見回した瞬間、


「想介…行くんだ」


「正哉…望むなら自分で言えよ…」



前後の席で交わされる、野郎二人のアイコンタクト。



「うん、なんか隣に来てほしそうなのが居るから、土方の隣でいっか」


そう言って、俺は指差される。


『『キター!』』


俺と正哉は歓喜するが、


「土方の奴…さっそく榎本さんを喰うつもりだな」


「きっ来たぞロールキャベツ野郎が」


なんか周りからどよめきが。


別にそういうやらしい目的ではない、とは言い切れないが。




俺は隠れ肉食ではないのは確かだ。



切ってもキャベツしか入ってない。







そんなこんなで、


正午過ぎには帰りのホームルームも終わった。


授業は明日から始まるらしい。めんどい。


教室を見回すと、ほとんどの奴らが談笑したり、帰ったている。




その中で一人、榎本さんは一人で支度をしていた。




まぁ、初日だし、無理はないけども。


女子の一人や二人くらい話しかけて来てもいいんじゃないか?



―まったく。



俺は溜め息をつき、思いきってみる。


「榎本さん?」


「ひゃいっ!?」


ビクッ、と飛び上がる榎本さん。


「な…何ですか?」


「あ、いや。部活とかどうするか決めた?」


そう。


この高校、県立東雲学院の生徒は部活動への所属が義務付けられていて、いわゆる帰宅部は認められていない。


幽霊部員はいるけど。


「えと…まだ決めてないけど…文化部系にするかも」


おっ、これは来たな。


「なら、メディ研に来ない?」


「メディ研…ですか?」


榎本さん、頭上にハテナマークが浮かべている。無理もないか。


「えっとね…メディ研というのは」



ごすっ。



「ぐばぁ!」


突如、後頭部に衝撃が走った。


「文化部なら是非軽音部に!」


聞き覚えのある声。正哉のやつだ。


「おい正哉お客を取るんじゃねえ!」


「るせえ!最後に勝てばいいんだよ!」


端から見たら、かなり見苦しい言い争いに見えているだろう。



でも仕方ないんです。



「あ、あのケンカは」


焦ったような、不安そうな声。


「おっと…いけない」


「…確かにフェアじゃない」


やれやれ、と言うように和解する野郎二人。


「「というわけで」」


「はひっ!」



強く、見つめて。



「俺はメディ研の副部長やってる土方想介、よろしく榎本さん」


「で、俺は東音の参謀長やってます中村正哉。よろしくね」


「あ…よろしく…です」



榎本さんは、若干引きながらも微笑んだ。




To be continue...


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