朝焼けに映る五人
20☓☓年
東京都☓☓町に建っている一棟のマンションの一部屋で5時10分にセットした携帯のアラームが鳴る。
ピピピッピピピッ
手探りで携帯を探し、適当にボタンを押してアラームを止める。
秋の空はまだ薄暗く、鳥の声さえもまだ聞こえない。
この部屋の住人、林田伸は眼鏡を取り、眼鏡をかけながらトイレへ向かう。
トイレを出た伸はカップにコーヒーの粉とポットのお湯を入れ、一口飲み椅子に座る。
目の前にパソコンの電源ボタンを押し、パソコンを起動させた。
パソコンの画面は様々な色を表し、伸の眼鏡に反射し美しい色を部屋中にまき散らした。
伸は慣れた手つきであるサイトをクリックし、ページを開いた。
伸はパスワードを打ち、もう一つの架空世界への扉を開いた。
「なんだまだ帰ってないのか・・・」
伸はコーヒーを一口飲み、カップをそっと置いた。
その時、玄関の扉の鍵が開く音が聞こえる。
帰ってきたのは、コンビニのバイトを終えた小島徹だった。
伸は徹に一言声をかけた。
「徹くんおつかれ」
徹は暗闇にぽつんっと立っている伸に驚く。
「うわっ伸さん・・・起きてたの?」
「うん、今日は少し早く起きたんだ。今日大学は?」
「昼からなんでシャワー浴びてそれまで寝ますよ。美由紀ちゃんは?」
「まだ寝てるよ」
二人は少し会話し、徹がお風呂場へ入ると別の扉が開き一人の女性がやって来た。
「あれ?伸君早いね・・・」と目をこすりながら登場したのは、フリーターの武藤美由紀だった。
「美由紀ちゃんはもう起きたの?」
「ううん、話声が聞こえて目が覚めて・・・お水飲んだらまた寝るつもり」
「そっか、起こしてごめんね」
「ううん、いいよ」
美由紀は伸を横切って、キッチンの方へ行きコップに水を入れてゆっくりと喉へ通す。
目に慣れている伸は美由紀をじっと見つめる。
伸は美由紀のヨレヨレの服から見えるブラジャーと水を飲む音そしてゆっくりと動く喉を見る。
美由紀が飲み終わったコップを置くと伸は目をそらす。
美由紀が部屋に戻ろうとした瞬間、シャワーを浴び終えた伸が腰にタオルを巻き上半身裸で出てきた。
「あ、徹君おはよう」
「おはよう・・・何してるの?」
「水飲んでた」
「あぁ、そう」
美由紀は部屋に入り、再び眠りにつく。
徹はタオルで頭をゴシゴシ拭いて乾かした。
徹は美由紀が使ったコップに冷蔵庫から取り出した牛乳を入れて、いっきに飲み干した。
そして伸にコップを向けて言った。
「伸さんもどう?」
「僕はいいよ、もうコーヒー飲んだし」
徹はそのまま西村彰が寝る部屋へ静かに入って行った。
西村彰、会社員でこの部屋の中では一番年上である。
また静かになったと思いきや当然玄関の扉をドンドンッと叩く音が聞こえる。
伸が恐る恐る開けるとそこには一人の女性が居て、突如として伸に抱きついてくる。
二人はその場に倒れる。
「リサさん酒臭いですよ~」
「な~に言ってんの~わたしは酒なんか飲んでないわよ~」
森下リサ、雑貨販売員でこの部屋には武藤美由紀と森下リサの女性二人が住んでいる。
リサの小さな胸が伸の体で潰れる。
「ちょっリ、リサさん・・・」
リサの大きな声で眠りから覚めた西村彰、小島徹、武藤美由紀の三人が部屋からそれぞれ出て来る。
「うるせぇーんだよ!!」
「ちょっと伸さん、リサさんをどうにかしてくださいよ~」
「リサちゃん・・・おかえり」
「ただいま~う・・・気持ち悪い・・・吐きそう」
「ちょっとここで吐かないでくださいよ!!」
「伸!早くトイレに連れて行け」
「は、はい!」
外はすっかり明るくなり、カーテンの隙間からの光が部屋を明るくする。
五人はお互いの姿をしっかりと見ることができるようになった。