ヴォイニッチ手稿・解読完了報告書:第四部
――「人生の浪費」の終着点――
1. 「羊皮紙」という成長のタイムライン
羊皮紙は当時、家畜の皮を加工して作る極めて高価な消耗品であり、子供が一度に数百枚単位で手に入れられるものではなかった。そのため、そんなものを無意味に使う訳がない。そう考えられてきた。
しかし、少年は授業に使うために、このノートを書き進めていった。
筆致の変遷:
初期のページ(植物セクションなど)と、後期のページ(複雑なパイプが絡み合うセクション)で、筆致の「慣れ」や情報の「複雑化」が見られるのは、彼がこのノートと共に数年間の思春期を過ごしたからである。
「増築」される世界観:
最初は単純な植物の写生(あるいは模倣)から始まり、成長と共に習ったばかりの占星学や解剖学の「聞きかじり」が重なっていく。数年もかけて少しずつ積み上げられた「俺設定」は、後世の目には「重層的に設計された高度な体系」のように見えてしまった。それが単なる「数年間の趣味の蓄積」であることに、誰も気づかなかったのだ。
2. 結論:ヴォイニッチ手稿の真の正体
我々が「世界最大の謎」と呼んできたものの正体は、こう定義される。
「15世紀の富裕層の少年が、成長過程で少しずつ高価な羊皮紙の授業内容を書き記すためのノートに、習いたての知識と、溢れんばかりの見栄、そしてリンゴの皮のような日常の断片……または授業内容を、格好いい装飾(俺様フォント)で綴じ込めた、壮大な暇つぶしの記録の集大成となる黒歴史ノートである」
そこには解読すべき秘密も、救うべき人類の未来も存在しない。あるのは、一人の人間がかつて持っていた、純粋で、かつ滑稽な「自意識の爆発」だけである。
3. おわりに:この真実は「金にならない」のか?
この結論は、ロマンという名のビジネスを根底から破壊する。
観光と夢の終焉:
「宇宙の秘密」なら本が売れるが、「子供の落書き」では観光客は来ない。
知性の敗北宣言:
現代のスパコンや天才たちが、15世紀の子供の「ハッタリ」に数百年翻弄された。この事実は、人類の知性にとってあまりにも残酷な「屈辱」である。
しかし、この事実に辿り着いた者にだけは、深い「解放感」が与えられる。
「どっかで気づけよ……」という溜息とともに、この豪華な羊皮紙の束を閉じる。それが、この数世紀にわたる壮大な茶番劇に対する、唯一にして最高の「解読」なのだ。
……だれか、どっかで気づけよ!!




