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悪役令嬢に転生した元OL、婚約破棄で辺境追放されたけどチート生産スキルで大繁栄! 今さら戻ってこいと言われても、もう遅いですわ!  作者: 和三盆


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第97話『見えない偏り──静かな違和感』

退いてから五日。


流れは、安定している。

数字も、速度も、問題ない。


それでも――


「……何かが、揃いすぎている」


朝、書類を眺めながら、私はそう呟いた。


「揃いすぎている?」

リュシアンが問い返す。


「ええ。

判断は分散している。

場も機能している。

でも――」


私は紙をめくる。


「結論の方向が、

微妙に同じ」


大きな問題ではない。

基準内だし、妥当だ。


だが、ほとんどの案件が、

“安全側”に倒れている。


慎重。

安定。

確実。


悪くない。


だが、


「……挑戦が、減っている」


ミレーヌが静かに言う。


私は頷いた。


退いたことで、

場は自立した。


だが同時に、

“失敗しない選択”が

暗黙の最適解になり始めている。


午後、港の拡張案が一件上がってきた。


数字は十分。

リスクも限定的。


だが、提案は保留になっていた。


理由はこうだ。

「確実性が不足しているため」


私はその文を、何度も読み返す。


不足しているのは、

確実性か。


それとも、

覚悟か。


夕方、例の簡易机の場を遠目に見る。


議論は落ち着いている。

声は穏やか。


だが、以前のような

熱を帯びた指の動きが少ない。


「……守りに入ったな」


ガイルが隣で言う。


「ええ」


私は否定しない。


自立は、安定を生む。

安定は、慎重を生む。


慎重は、

時に前進を鈍らせる。


夜、執務室で一人になる。


退いた中心は、

流れを見る役目を持つ。


今、流れは滑らかだ。

だが、速度が一定すぎる。


水が澱む前触れは、

波のなさだ。


私は、机に指を置く。


介入するか。

それとも、待つか。


壊す必要はない。

だが、揺らす必要はある。


小さな石でいい。

大きな波は要らない。


静かな違和感は、

見逃さない。


中心が退いても、

眠るわけではない。


私は、明日の予定を一つ書き足す。


「拡張案、再提示を求める」


理由は添えない。

問いだけを、戻すのだった。

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