表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生した元OL、婚約破棄で辺境追放されたけどチート生産スキルで大繁栄! 今さら戻ってこいと言われても、もう遅いですわ!  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/16

第5話『初めての交易と“黒衣の商人”──裏切りの予感、そして出会い』

ローデン領が再生を始めてから、二週間が経った。

畑は広がり、村には笑顔が増えた。

だが――物資の不足だけは、まだ深刻だった。


「小麦も野菜も育ってきましたが、塩や布、鉄器が足りませんわね」

私の言葉に、ガイルが頷く。


「だからこそ、明日“交易路”を再開する。

隣領グランツとの取引が上手くいけば、物流が戻るかもしれん」


「交易……つまり、商人との交渉、ですね」

「そうだ。お前の交渉力に期待している」


「まさか……私に営業をさせるつもりですの?」

「元OLだったのだろう?」


「ぐっ……! それを言われると否定できませんわ!」


(営業職ではなかったけれど、取引先への資料作成やプレゼンは散々やったっけ……。

まさか異世界で使う日が来るなんて!)


翌朝。

まだ朝霧が残る中、私たちは街道を南へ向かった。

木製の荷馬車には、試作品として作った“ローデン特産のハーブオイル”と“改良型工具”が積まれている。


道中で出会った村人が手を振ってくれた。

「レティシア様、気をつけて!」「うちの野菜も持ってってくだされ!」


その声援に手を振り返しながら、胸がじんと熱くなる。

(この人たちのためにも、絶対に成功させなきゃ!)


昼過ぎ、私たちはグランツ領との境界にある交易拠点へ到着した。

そこには、十数人の商人たちが荷車を並べている。

だが、彼らの視線は冷たかった。


「……あれがローデン領の“追放令嬢”か」

「噂じゃ、チートで土地を甦らせたとか?」

「信じられるか、そんなおとぎ話」


(うんうん、偏見MAXですね!)


ガイルが前に出ようとした瞬間、私は手で制した。

「いいんですわ、ここは私に任せてください」


「お初にお目にかかります。ローデン領領主代理、レティシア・アーベントハインと申します」


にこやかに挨拶すると、商人たちの視線が少しだけ和らぐ。

私は荷車を指し示した。


「こちらは、ローデン領の新製品“ハーブオイル”と“改良型工具”です。

香りは強すぎず、虫除け効果もあり、保存性抜群。

そしてこちらの工具は、誰でも使える軽量型。作業効率が五倍になります」


ざわっ、と場がざわつく。

商人たちが手に取って品を確かめ始めた。

「……確かに品質がいい。」「これは売れるかもしれんな」


順調――そう思った、その時だった。


「だが、信用がないな」

低い声が、群衆の奥から響いた。


そこに立っていたのは、一人の男。

黒い外套に帽子を深くかぶり、片手には商人証。

ただ者ではない雰囲気。


「“奇跡の土地”とやらが本当なら、俺の目で確かめてやる。

黒衣商会のリュシアンだ。契約の交渉は、俺が相手をしよう」


「黒衣商会……!」

ガイルが小声で息をのむ。


(知ってる、この名前……。ゲーム内では“裏社会の取引王”として登場するキャラ。

でも、プレイヤーによっては“味方”にも“敵”にもなる、超重要人物!)


私は微笑みを崩さず、彼の前に立つ。

「ようこそ、リュシアン様。ぜひローデン領へお越しくださいませ。

百聞は一見にしかず、ですわ」


「……ほう、肝が据わってるな。いいだろう」

リュシアンは小さく笑い、帽子を傾けた。

「面白い女だ。取引の価値は、現地で確かめさせてもらう」


その夜。

宿に戻る途中、ガイルがぼそりと呟いた。

「お前、あいつを信用しすぎるな。黒衣商会は、金のためなら何でもする」


「分かっています。でも、チャンスでもあるわ」

「チャンス?」

「ええ。“裏”を抱き込むことができれば、ローデンの物流は一気に広がります」


ガイルがわずかに目を細める。

「……本当に、悪役令嬢の思考だな」

「誉め言葉として受け取っておきますわ♪」


夜空には満月。

リュシアンの金の瞳が、月明かりに妖しく輝いていた。


(この出会いが、後にローデン領を大きく揺るがすことになるなんて――

このときの私は、まだ知らなかった)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ