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悪役令嬢に転生した元OL、婚約破棄で辺境追放されたけどチート生産スキルで大繁栄! 今さら戻ってこいと言われても、もう遅いですわ!  作者: 和三盆


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第40話『春を継ぐ者たち──市場の再起と、微かな影の訪れ』

封鎖の夜明けから数日が過ぎ、ローデンの朝は以前よりも慎重な明るさを帯びていた。畝の緑は伸び続け、子どもたちの走る足音は戻ってきた。だが、安堵は継続した努力の上にだけ成り立つ知恵だと、誰もが知っている。


屋敷の執務室には分厚い書類が重なり、リュシアンが帳簿に細い線を引いている。彼の黒い外套の裾は埃に汚れているが、顔つきには緩みがある。アレンからの市場保証は効き目を見せ、市場は少しずつ回復している。だが物語の歯車はすぐに次の歯へと噛み合いを求める。


午前、私は市場の再編計画の打ち合わせに出た。かつての道筋を再確認し、複数の小口取引ルートを新たに認可する。目的は単純で確実だ。大きな一極依存を避け、小さな交易を複数に広げることでリスクを下げる。職人たちは熱心にメモを取り、若手が意欲的に意見を出す。見習い制度が育てた若者たちの存在は、今日の会議室に確かな重量を与えていた。


「我々は“品質”と“由来”を武器にするべきだ」私は最初にそう言った。数字だけでなく、どこで誰が作ったかを明示することで、消費者の信頼を直接に取り戻す。リュシアンは早速、地図上に複数の出荷点とそれぞれの特産をマークし、簡潔な流通プロトコルを作成した。公国の技師も参加して、保存と梱包の指標を更に高める案が出る。


昼、広場では小さな式が行われた。公国から届いた荷札と証明書が配られ、地元の代表がそれに署名する。子どもたちは新しい標章の入った布を身につけ、鍛冶場からは金槌の軽い響きが祝福のように重なる。式は儀礼だけでなく、心理の回復でもある。人々は自分の手が作るものに誇りを取り戻し、それを示すことによって町全体の価値を再提示した。


午後になり、雑用の間に私はミカの店を訪ねた。鏡に映る彼の顔は昨日よりも少し安定している。店の棚には品物が整い、客が一人、また一人とやってくる。彼は私に短く礼を言って、慌ただしく働き始めた。赦しは言葉よりも、日々の行動で示されるものだと改めて思う。


夕暮れ、屋敷の図書室でリュシアンと私は地図を広げた。彼の指先が一つの地点を押さえる。

「ここです。連盟が本当に再編されるなら、彼らは補給の隘路をもっと根本的に押さえる可能性がある。だが、そこで彼らは“兵站”という脆弱点を晒す」


「どう動く?」私は問い返す。

「外交カードを使う。だが直接的な圧力ではなく“連鎖的利益”を提示する。つまり、彼らの利益筋に働きかけて、封鎖の損害が自分たちに返ることをはっきり示す。公国と我々の保証は既に効果を見せている。あとは速度だ」


リュシアンの目の中にある計算は無慈悲だが、私たちはその冷静さを利用する。夜が深くなると、彼は影で動く手配を進め、公国との通信を綿密に行った。


その夜、更に一通の便りが届く。王都の小さな商会から、匿名の取引申し出があった。直接的な圧力ではなく、巧妙に「協力」の仮面を被せた提案だ。条件を精査すると、そこには有利な買い取り価格と引き換えに、長期的な独占条項をちらつかせる文言が混じっていた。見た目には救いの手だが、舌の先が甘い。


私は深く考えてから返書をした。取引は可能だが、我々の自治と公開性を担保する厳しい条件をつける。守るべきは人の生活と選択の自由だ。夜遅くに届いた返答は期待通りに慎重なものだった。商会は条件の一部に揺らぎを見せたが、最終的にはこちらの提案を一度持ち帰った。


翌朝、屋敷の庭先に小さな騒ぎが起きた。見習いの一人、若い織師の少女が倒れていたのだ。原因は過労による熱と脱水だった。職人たちは慌てて救護に当たり、私はすぐに休養枠と交代要員の配置を指示する。人の体は機械ではない。今日の勝利は人の命を削って得るものではないと、私は改めて声を殺して確かめる。


午後、ガイルが静かに私を呼んだ。防衛隊の一部に新たな志願者が現れたという。若者たちが、自発的に護衛団に加わると申し出ている。志願の理由は単純だ。自分たちの土地を自分たちで守りたいという、素朴な思いだ。私はその意志を尊重し、短期の訓練と食糧手当を付けて受け入れることにした。守るという行為は、やはり自分たちの手で行う方が強くなる。


夕方、屋敷で簡素な会食が催され、アレンの代表が来訪する。彼は公国の保証の成否を確認し、さらに隣国との小規模な交易ルートを開く提案を持ってきた。提案は慎重で、相互の監査と段階的実装が条件だった。承認すれば、ローデンは更に市場を拡げられる。私は全員の意見を踏まえ、段階的実装を承認した。変化は急にではなく、確実に来るべきだ。


夜、静かに一人で風見台に上る。村の灯りが小さな海のように揺れている。そこへリュシアンが手に温かい飲み物を差し出して現れた。彼は肩の力を抜き、珍しく長い言葉を零す。

「お前はよく喋るが、あれは本当に肝だ。村の人の顔を見るだけで、方針を決められる。俺にはできない芸当だ」


私は笑いながら首を傾げる。

「あなたはあなたのやり方で人を守る。金と情報と、たまに嫌味だ。どちらも必要よ」


空気がやわらかく震え、遠くの森で小さな獣の声がする。季節は移ろい、収穫へと向かう。だが同時に、新しい影も静かに近づいている。王都の外縁で生まれる動き、あるいは更なる商会の計算。ローデンは日常を守りながら、その先の嵐に備え続ける。


月が雲の合間に顔を出す。私はリュシアンの温もりを感じながら、ゆっくりと目を閉じる。守る者たちは休める間もなく働き続けるが、その手は今日も確かに何かをつないだ。朝はまた来る。人の営みはまた繰り返される。ローデンの春は、まだ序章に過ぎないのだから。

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