第十八話 情報戦
「皇女様‼ぜひウチのを見て行ってください‼」
「あの白い光すごかったです‼」
「皇女様がウネマ王国に行かなくて良かった‼」
現在私は街にくり出していた。
メンバーは私、侍女1名、マシャドさん、そして近衛騎士3名。
マシャドさんも護衛なので近衛騎士は1人で良いと言ったのだが、騎士からするとマシャドさんがついて行く方が危険とのことで多めに3名にされた。
私はというと、流石に皇女の恰好のまま行くわけにはいかないので黒髪に染め、ビン底眼鏡と野暮ったい化粧、帽子を目深に被り、田舎貴族の箱入り娘が父の事業についてきて街を散策している風に装う。
マシャドさんは耳や顔が見えないようにマントを被っているがどうしても全身入れ墨なので、否が応でも目立ち、大所帯ということもありすぐにばれてしまった。
私は騎士団のお手本となるような職場を、このストレス値を見る目を使えば探せないかと思って来たのだが、これでは探すどころではなく進めない。
「皆さん、お気持ちは嬉しいのですが今日はお忍びで来ているので」
「わぁ!コージョデンカダ‼トッテモキレイ‼」
とてつもない棒読みの言葉に振り向けば、そこには平民にしては身なりの良い7歳くらいの少年が真っ赤になりながら黄色と青色の花をもっていた。
隣の気の強そうな女の子は多分少年よりちょっと年上で、貴族の真似をしてふわりとスカートを広げて頭を下げる。
「初めまして皇女殿下。良ければ静かなところでお茶でもいかがでしょうか?美味しいチーズタルトもございます」
なんとも可愛らしい。
チーズタルトは好きだし、この集団の中で1人を優遇するのは皇族としてどうかと思ってしまうが子供に誘われたとなれば角も立たない。
「可愛らしい紳士と淑女ね。お呼ばれしようかしら?どこに行くの?貴方達のおうち?」
「パパとママが経営しているカフェがあります!こっちです‼」
私の言葉に女の子は元気に答え、男の子はそっと花束を差し出してくる。
「もらっていいの?」
「うん……あの、あのね?」
「どうしたの?」
言いにくそうにしているので屈んで耳を貸せば少年はこっそりと伝えてくる。
「肖像画よりも綺麗でびっくりしたの」
「ふふっ!ありがとう」
「パパが女の人への綺麗は思ったときに言いなさいって」
良い教育してるわ!
もじもじして顔を真っ赤にしながらも少女に続いて私を誘導する姿は本当に可愛い。
ついクスクス笑いながら歩いているとすぐ隣にマシャドさんが来ていた。
『……少し近いです。守りにくいので距離を取ってください』
『エ?子供なのニ?』
『子供ですが赤子ではなく、れっきとした男です』
『えっと……うん』
マシャドさんの顔は無表情ではあるけれど、黒くて長い尻尾は左右に勢いよく振られていた。
あれ?
猫の尻尾を振るのって確かいらついている時じゃなかったっけ?
子供達に連れられて歩いて行けばそこにはおしゃれなカフェ2階建てのカフェがあった。
だがあいにく賑わっているように見える。
「パパ‼ママ‼皇女様連れてきたよ‼」
「もう!マルク走っちゃダメー‼」
女の子のさっきのお澄ましもどこへ行ったのか、少年が走るとそのまま少女も追いかけて走っていき、中から両親が出てきた。
「ようこそお越しくださいました、二階は貴族様向けとなっていますのでご安心ください、どうぞこちらへ」
「見て、流石やりての店主ね。皇族を連れてくるなんて」
「あぁ、やっぱりここの店主は違うな」
コソコソと噂話を横目に二階に上がれば日差しが差し込む優雅なプライベートスペースが演出されている。
「どうぞメニューです。今月の新作はオレンジピールとラム酒、チョコレートを合わせた特性クリームです。スコーンに塗って食べていただくと美味しいですよ。皇女殿下のお好きなチーズケーキもございます」
「どこで私の好物を?」
子供達が誘い文句にしていたのは偶々だと思ったのに。
転生を思い出す前はあまり自分の好き嫌いは隠していただけに驚きだった。
「以前新聞で珍しく皇女殿下が食事を褒めていたことが書かれていたので、いつかこんなチャンスがこないかと皇族全員の好みは把握しております。商売は情報が命ですので」
軽いウィンクをして茶目っ気たっぷりに笑うけれど、確かにこの店主やり手だ。
気がつけば子供達は二階に上がって来ずに、室内はとても静か。
「もしかして子供達が私の所に来たのも?」
「はい、こちらのカフェ、妖精の森では情報に応じて支払いをしているので情報提供をして小銭を稼がれる方が多いんです。そして差別化のために息子が皇女殿下を好きだったこともあり行かせました。ご迷惑でしたか?」
「ふふっいえ、とても可愛らしい案内役でした。ではその新作を護衛と侍女の分、私はチーズケーキ1つ、それと人数分の紅茶を」
「はい、かしこまりました。新作は毎月変わるのですが皇女殿下はよろしいのでしょうか?」
「本当に商売上手ですね、では私の分も1つ」
「ありがとうございます」
『平和なのに戦場みたいだな』
私が促したこともあり、正面に座っているマシャドさんに問いかけの視線を送る。
『あっ!すみません、独り言のつもりでした。情報は命という言葉は聞こえたのでつい戦場みたいだな、と。戦場も先に情報を得て早い判断をしたが勝つことが多いので……』
『情報を得テ早い判断をした方が勝ツ?』
『いえ、この平和な国で言うことでは無かったです』
どうやら平和な国で戦場の話をしたことをちょっと後悔しているようだけど、私が繰り返した意味は違う。
『……私、ソノ話どこかで聞いたことがある気がします』
『え?』
なんか頭に引っかかる。
マシャドさんの言う通りこの帝国はとても平和で戦争などとは無縁。
しかも最近聞いた話では無い気がする。
じゃあ前世の日本で?
日本も私が生きている間は戦争が無かったし…………。
「あっ!」
少しずつ遡っていくなかで私の頭の中にある動画が思い出された。
確か初めの社内研修でPDCAサイクルを学んだのに、それがもう古いと書かれていて驚いたもの。
「そうだOODAループ‼」
『「ウーダループ??」』
侍女やマシャドさん、護衛の騎士達も首を捻るなか、私は一筋の希望が見えた気がした。
ちなみに実際のところ私はPDCAサイクルが古いとか悪いとかではなく一長一短だと思ってます!
一応次回で掘り下げるつもりですが、結構人によって言っていることにばらつきがあったのでこれも付け焼刃の知識として、気になる方は調べてみてください(;´・ω・)
あと物語の都合上、理解されている方からすると結構間違った使い方かもしれません!
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