第十六話 俺は負けたことが無い
すみません。
内容を見直してやっぱり、残酷表現のタグをつけたりジャンルを恋愛→ファンタジー→恋愛とややこしく動かしてしまいました。
結局ジャンルは恋愛で残酷表現のタグはついています。
そこまで過激な物は出すつもりは無いのですが、念のためです。
『殿下、あまり軽率な行動は控えてください。他国とはいえここは尊重すべき帝国であり、そして使用人も連れてきている以上ここでのことは王国にも知れ渡ります』
側近の一人が俺、アマデウスに言いつつ酒を渡してきた。
『分かっている、だからあの貧弱な皇女にも謝っただろ』
強い酒を受け取りつつ、つまみの干し肉に手をつけていると、扉がノックされた。
近くの使用人が扉を開ければ、そこには忌々しいクロヒョウ、マシャドが居た。
側近に指示し、少しずつ弱らせて死んだ目をするまでになっていた戦争の英雄は、皇女の魔法で元のむかつくくらい強い目をするようになっている。
『お呼びでしょうか』
『おい、今朝皇女の部屋に行ったらしいな。何のようで行った?点数稼ぎのつもりか?所詮お前は王になれないのに』
俺の最後の一言に周囲の空気が張りつめた。
ウネマ王国の王位は世襲制ではない。
国王の子供が20歳になった年に開かれる試合において、優勝した者こそが王位に就ける。
ウネマ王国では強さこそが正義なのだ。
今回は度重なる戦争と、この婚約で時期をずらすことになったがそれでも勝つのは俺だ。
俺が王になるんだ。なぜなら俺はドラゴンで、こいつはクロヒョウ。
俺の方が強い。それなのに、このクロヒョウは俺に敵意を向けられてもいつも気にしていないような態度をとる。それが我慢ならない。
『皇女殿下に国王陛下より授与されていたブラックダイヤモンドをお贈りしました』
『ハッ!お前あのクソ女に気があるのか⁉うるさいだけで貧弱なあの女に⁉』
そう言った瞬間、音も無く部屋中を白い光が満たした。
何かの攻撃かと思ったが違う。腹の底からくすぐられるような変な心地よさがこみあげてくる。
『まさか……』
部屋から出て見れば白い光は視界の全てを満たし、周囲の使用人も側近も全てがその心地よさに歓喜していた。
『ご安心ください、皇女殿下の魔法です。彼女は我が国を救える方です。殿下も国民の不満はご存じでしょう?彼女を無下に扱うのはやめてください』
隣まで音も無く来ていたマシャドが偉そうにのたまう。
国民の不満?そんなものは知っている。
勝っているとはいえ、戦争はこちらにも被害を及ぼす。もう何十年も祭りなどの不必要な行事は行っていない。
国民が購入出来る物なども厳格に定めている。
だがおかげで領土は増え、世界に名を轟かせるほどになったんだ。
感謝こそすれ、弱い国民達が強者である俺達を恨むなど許されるはずが無い。
ウネマ王国は力こそ全てなのだ。
それなのに最近は内乱を起こそうとする動きも見え隠れしている。
ましてや、俺ではなく元貧民のマシャドを敬う者も多いほどだ。
国民達は皆間違っている。だが……。
側近の一人が俺に耳打ちしてくる。
『殿下、これは何か策を考えねばなりません。心の病は既に国民病となりつつあります。それをこの規模で癒せる皇女との婚約が立ち消え、金まで払うことになりしかも…』
チラッと側近がマシャドを見る。
言いたいことは分かる。コイツと皇女の仲が良いと知れ渡ればまたしてもコイツを王にと言い始めるだろう。
『黙れ、こんな黒猫が何になる?俺に敵うとお前らは本気で思っているのか⁉俺の方が強い‼‼俺が王になるんだ‼‼だから父上も今回の婚約を俺に指名したんだ‼‼』
『えぇ殿下の仰る通りです。何せ殿下は〝負けたことが無いのですから〟』
マシャドの言葉に俺は近くにあった燭台を投げつけたが、軽く躱される。
『黙れ黙れ黙れ‼‼俺はドラゴンだ‼父上の息子だ‼誰も俺に敵うはずがない‼‼』
俺は負けたことがない。それは事実だ。
だがマシャドのように体に入れ墨は無い。
なぜなら誰かと勝負をしたことも無いのだから。
酒に溺れ、皇女の魔法で嫌に頭の中が冴えわたる中、目を覚ますと遠くの方で使用人達の話が聞こえてきた。
『今日は久しぶりに眠れたの!』
『日光が気持ちいい。こんなこと思うなんて何年ぶりかしら』
『フフッごはんも美味しかったし、ずっとこんな日が続けばいいのに』
『マシャドさんと皇女様が結婚してくれれば……』
『シッ!ここの建物、帝国人用に作られているんだから聞こえちゃう‼』
ドラゴンという種族は他の種族に比べてあまりにも強い。
他の種族が爪や牙で戦う中、俺や父上は火を噴いて戦うのだから勝って当たり前だ。
そして、同じドラゴンの種族は父上の顔を立てて王位を決める試合には決して参加しない。
だから俺の唯一の敵と言えるのはマシャドだけ。
そこでふと思いついてしまった。
マシャドには隙が無い。
娼婦の母親は既に病で死に、父親は誰か分からない。
誰とでも平均的に付き合っているせいで人質になる人間も今までいなかった。
だからこれは好機なのではないか?
誰も寄せ付けず誰も大事にしなかった男が、あの皇女のために俺に挑発的なことを初めて言ってきた。
帝国人と王国人の身体能力の差は明らかで、王国が本気を出せば皇女一人害を成すことなど容易。
俺はベルを鳴らし側近を呼んだ。
『お呼びでしょうか、殿下』
『マシャドを帝国に残していこう。皇女の魔法が貴重な物で王国としても守りたいとか、何でもいいから理由を作れ。あいつらがもしも仲良くなればそのまま試合の日に脅しに使う』
『正気ですか⁉』
『別に本当に害を成すわけじゃない。少し脅しをかけるだけだ。帝国人は鈍いからな、どうとでもなる』
側近は渋っていたが、しばらくすると頷き帰って行った。
俺の居ない王国で、あのクロヒョウが国民の人気を伸ばすことが気がかりで連れてきたが丁度よかった。
これでアイツの顔をしばらく見なくてもいいし、ずっと居ない男に国民も忘れるだろう。
俺は安心して、使用人が持ってきた朝食を食べ始めた。
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