第十四話 違和感の残る会談
書けたので出しました。
この先の展開もザックリは決めているのですが、ストックが切れたので毎日更新は難しくなるかもしれないです。
結構長い話なので気長に付き合っていただければ幸いです。
無事に騎士団長と和解し、疲れて泥のように眠った翌日。
私はお兄様や近衛騎士達とともに南宮の近くまで来ていた。
ウネマ王国からの正式な謝罪は今日の午後。
それまでに出入りする使用人を見ておきたかったのだ。
状況が状況のため彼らをそのまま町に出し買い物をさせるわけにもいかず、行商を呼び、必要な物を購入してもらう形をとっているのだが……。
「チガウ!モノ‼チガウ‼」
「だーかーらー!違うだけじゃ分かんねぇっつってんだろ‼」
南宮の近くまでくると若いウサ耳の女の子と、猫耳の女の子、そして行商の壮年の男が言い合いをしていた。
「チガウ‼肉!チガウ!オス!」
ウサ耳の子が必死で言うが、伝わらない。
ウネマ王国の言葉は、曾祖父が冒険家だったという言語学者から私達皇族は習った。
けれど普通は知るはずもない。
『もう嫌ぁ!なんでこんなことばっかりなの⁉もう全部嫌‼‼』
『ちょっとしっかりして‼』
ウサ耳の子が泣き出してしまい、猫耳の子がそれを宥めている。
心のお疲れ度は95と87とかなり高め。
「メイド長の言っていた通りね。ちょっと行ってきます」
「アンジー⁉遠目から様子を見るだけって約束だろ⁉」
「でもこのままではウネマ王国が出航の準備もままならないでしょう」
微妙な顔をしながらも引き下がってくれたお兄様を横目で確認して、私は三人に近づいた。
近寄れば行商側も数人いるが全員渋い顔をしている。
「どうしたの?」
「こ、皇女殿下⁉あ、いや…この方達が言われた商品を持って来たのに違うとしか言わないもので」
行商から話を聞いた後に、ウネマ王国の使用人に視線を戻せば彼女達は震えあがった。
そっと肩を触りながら魔法を使う。
『怒りにきたのではナイわ。偶々通りかかったの。それで何ガ必要なの?』
『うっ……うぅ‼許して!許してください‼‼ご子息様がしたこと許してください‼‼』
『ごめんなさい‼ごめんなさい‼‼』
魔法で緊張の糸がきれたのか、猫耳の女の子まで泣き出してしまい、仕方が無いので行商の相手はお兄様にしてもらい私は近くの休憩スペースに2人を誘導した。
『すみません、何だか体がポカポカしたら急に安心してしまって』
『大丈夫、気分が良くなる魔法をかけたの。ちゃんと魔法を使ってもいいかシラ?』
2人は見つめ合ってからキュッとお互いの手を握り、私に静かに頷いた。
頷いたときに少し揺れる白いフワフワのウサ耳とグレーの猫耳が可愛らしい。
2人の手をとってきちんと魔法を使えばまたウサ耳の子はポロポロと泣き出してしまった。
『さっき男の人がコージョデンカって言っているのが聞こえました。あの、ご子息様……アマデウス殿下のこと、ごめんなさい』
『……厳しいことを言うヨウだけド、殿下本人か、国を背負う人からでないと謝罪はあまり意味ガ無いの。それよりも何が必要だったの?』
『干し肉が必要だったんです。あとドライフルーツとか、根菜とか』
気持ち良いのかうとうとしながら言ってくれる。
『不思議です。ずっと眠れなかったのに、すごく眠い』
『そう、他の人達も眠れていないの?それに疲れてる?』
『『…………』』
2人はハッと顔を見合わせて黙っているが、その表情を見れば多分他の者も同じだということは察することが出来た。
その後、2人の帰りが遅いことを心配した男の使用人が2人来ていたが彼らも同様に数値が80後半と高かった。
行商人には長期保存のきく食材を再度持ってきてもらい、事なきを得た。
そして午後、賓客用の応接室で待っているとアマデウス殿下達はやってきた。
「あー、その……すみません。あの時は気が立っていて……何か行き違いがあったようで」
「行き違い?私の妹でありこの帝国の皇女に向かって女と見れないし見る気も無いだとか、目も耳も悪いだとか言ったことが行き違いだと?謝罪をしたいというからこの場を設けたのだが?」
お兄様が間髪入れずに切り返すとアマデウス殿下は一瞬だけ眉をしかめたが、私のことを見てはっきりと頭を下げた。
「すみませんでした。皇女殿下」
「は、はい……私もこれ以上両国の関係を悪化させたくないので謝罪を受け入れます。ですが今回のことは帝国全体を侮辱した言葉ですので私の管轄の範疇を超えています」
用意していた言葉を言うが、思ったよりもあっさりと謝られたため内心焦ってしまう。
「えぇ。父である国王に相談して後日正式に謝罪文をお送りします」
正直、もっとごねるかと思っていたため、私もお兄様もお父様も驚き、普段は表情が変わらない宰相でさえ肩眉を上げている。
先ほどからアマデウス殿下は微妙な顔をして私をチラチラ見てくるが何なのだろうか。
悪いと思っているという感じではない。
「ふむ、変わらず婚約のことは白紙に戻させてもらうが帝国としても正式な謝罪文が届けば受け入れよう……しかしこのままでは両国の関係が悪くなる一方だ。そこで一つ提案があるのだが」
「提案ですか?」
「あぁ、そちらの使用人の様子から見てどうにも心の病を患っているか、あまりにも疲弊しているように見受けられる。我が娘アンジェラはそういったものを癒す魔法を有している。そこでどうだろうか?相応の金額はいただくが良ければそちらの手助けをしよう」
「厳密に言えば、私の魔法は対症療法のようなもので根本的な悩みなどを改善しなければまた元に戻ってしまいます。
ですが私は実績を積むことが出来、そちらは問題が格段に解決しやすくなる、いかがでしょうか?」
一応お父様の言葉に補足を入れる。
マシャドさんも数日で数値が上がったし、お父様達に魔法を使ってもウネマ王国とのことが悪化すれば数値は上がった。
私の魔法は怪我の様に一回治せばはい終わり、という風にはならないらしい。
そのため、効果の証明が難しいのだ。
なんなら今居る使用人にかけてしばらくは様子見でも良いと思っていたのだが、アマデウス殿下からは思いもよらない言葉が出てきた。
「先ほど使用人から聞いてまさかと思っていましたが……それはマシャド、あー、顔まで入れ墨が入ったクロヒョウにも使いましたか?」
「え?はい、偶然彼が魚を取りにきているところに出くわしたので」
流石に逢引きっぽいあの時のことは言えないが、魚のときのであれば本当に偶然だしまぁ大丈夫でしょう。
「……なるほど、死んだ目をしていた人間が息を吹き返したので驚いていたんです。分かりました。私の一存では決められないのでどちらにしろ王国に帰ってから父と相談します」
「は、はい……」
「では、新たな取り組みのことについてこちらからも使者を送りましょう。おって連絡します」
宰相が締めくくり、会談は終了した。
驚くほどスムーズに進み、私としては嬉しい限りなのだが、妙に釈然としない。
それだけ国民のストレス値が酷いことになっているのか、それとも他に思惑があるのか。
その夜はアマデウス殿下との去り際のやり取りが気になってしまった。
「皇女殿下、あのクロヒョウには二度と魔法を使わないでいただきたい」
「それはなぜですか?」
「……ただのお願いです」
それだけ言うとアマデウス殿下は軽く礼をして戻って行った。
私の魔法は人を傷つけるものではない。
それなのに使わないでほしいし、その理由も言えないとなるとまるでそのまま死んだ目をしていてほしいととれる。
アマデウス殿下やその側近は文化は違うけれど、所作には品がある。
言動は最悪だが。
けど、どう思い出してもマシャドさんは普通の、いやどちらかというと下町育ちっぽい気がする。
ただ単に嫌われているだけ?
それとも何かある?
答えの出ない問題をグルグルと考えている間に私はいつの間にか眠ってしまった。
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