第十三話 俺が間違っていたのか?
感想ありがとうございます‼
しばらくニヤニヤしてしてしまうほどに嬉しかったです‼
ただどうにも感想の返信が苦手でかなり時間がかかってしまうので、もしも他の方からまた感想をいただいても、忙しいときは返せないことが出るかもしれないため、感想の返信はしない方向にしました。
ですが、笑顔で犬の散歩をずっとしているくらいに本当に嬉しかったです‼
ありがとうございます‼
※今回は騎士団長視点です。
気に入らない。
俺、オリバー・カーティス騎士団長はクソみたいな気分だった。
急遽会議に皇女が出席すると聞いて内心彼女が追い詰められることを期待していたのに、皇女は周囲の大人達をいともたやすく味方につけてみせた。
少し前まで毒にも薬にもならない皇女だったのに……。
皇女が会議室に入って来たときとは打って変わって明るい雰囲気で進む会議を眺めながら、俺は友人のウォーレン・エリオット公爵との先日のやり取りを思い出していた。
「オリバー!良い酒が手に入った‼今日は2人で飲もう」
「……俺を笑いに来たのか」
皇女に負けて体罰も食事制限も無くなり、そして俺の威信も消えた。
貴族達はいつも訓練している俺達をこぞって馬鹿にし、財務大臣から年端も行かない皇女に負けるようなら予算がもったいないと予算を減らす告知も受けてしまった。
あの勝負は完全に皇女に優位に行っていた。
だからこそ、あんなふざけた勝負が成立したのだ。
俺達が弱いのではなく、通常の方法では勝負にならないから優位に立たせてやったというのになぜ周囲は理解しないのか?
皇女への脅しにも近い直談判を企てる騎士達を抑えているのは誰だと思っているんだ。
この帝国の平和を守っているのは誰だと思っているんだ‼
「まぁ、そうふてくされるな!ただの飲みの誘いだ!肉もチーズも良いものを揃えた!」
ウォーレンは明るく言い放ち、俺の外行きの服を勝手に部屋から持ち出し渡してくる。
「皇女殿下の愚痴も部下の手前言えないんだろう?公爵家に来い!上手い酒と肉とチーズ、そして何を話してもいい部屋を用意してやったんだ。こんな友人思いの色男をもったこと、むせび泣いてありがたがるんだな!」
「……あぁ」
もう今日の訓練を終えていたこともあり、副団長に一言告げて俺は公爵家へと向かった。
長年の友人なだけあって、食事は全て俺の好みを取り揃えていた。
「で、言いたいことがあるなら聞いてやるよ。そのために呼んだんだ」
「…………俺は今年で騎士団に入って32年目になる。血反吐を吐く様な訓練をして、やっと騎士団長になったんだ‼それなのに、それなのにだ‼子供だと思って手心を加えてやっただけなのに調子に乗りやがって‼周りもなんだ⁉まるで俺が間違っていたみたいじゃないか‼‼誰がこの帝国を守ってきた⁉誰が皇帝一族を守ってきた⁉死線は超えただと⁉ふざけたことをぬかすな‼なんで生まれたときから知っているガキに俺は‼‼…………なんで、負けたんだ」
「うん」
ウォーレンはただグラスを傾け静かに聞いてくる。
「ウォーレン、俺は……俺の全ては間違っていたのか?」
「聞かれたから答えるが、正直なところは分からないな。お前だって年々騎士の入団者が減っていることと続かないことを愚痴っていただろう?」
「黙れ、それとこれとは別だ。最近の若い奴らは平和ボケして甘やかされて育ってきたから弱いんだ。だから‼騎士団に入ったからには叩きなおしてやっていただけなのに‼‼」
言った瞬間、あの皇女の言葉が蘇った。
答えなさい騎士団長‼‼
あの棍棒を持った騎士は笑いながら若い騎士を叩いています‼私の眼には‼彼がその役割の意味を理解して行っているとは到底思えません‼‼
彼が笑いながら人を傷つける理屈は何ですか⁉
「答えられなかった……なんで俺はあのとき……」
正当な理屈を答えられなかったのだろうか。
なぜ、仕方がないことのように答えてしまったのだろうか。
なぜ騎士達の家族を皇女が連れてきたとき、これは誇らしい訓練だと答えられなかったんだろうか。
いつも訓練を頑張っているこの騎士達を見て行ってくれと、労ってくれと言えなかったんだろうか。
「清廉であれ、誠実であれ、寛大であれ。大いなる勇気を胸に、弱きを助け、強きを挫き、その強き刃を汚すことなかれ」
騎士団の叙任の言葉は毎年微妙に違う。
俺は入団試験を首席で通ったこともあり、皇帝自ら俺に剣を当てていただき、誓いを立てた。
「俺は過ちを犯したのかもしれない、清廉とは言えない、誠実でも無かったのかもしれない、寛大さも無かった。勇気など……いつ無くなったのかも分からない、弱きを助ける?弱い者達を俺は……俺は、守るべき刃を汚してしまったのか?」
「待て待て待て!まだ汚れてはいないだろう!」
ほぼ独り言になっていた俺に、ウォーレンは素っ頓狂な声で言った。
「オリバー、お前は部下を殺していたのか⁉流石にそれだと擁護できないが…」
「そんなことするものか‼‼」
「だろう?なぁオリバー、もっと単純に考えろよ。過ちを決めるのは基本的に環境と己だ。己が正しいと思うなら周囲にもう一度正しさを証明すればいい。だが己が間違っていると思うのならそれは正せばいい、ただそれだけだ」
「単純ではないだろう。俺は……もはや自分が間違っていたのかも分からないんだ」
「なら悩めよ、言っておくが僕はやり手の公爵と名高いが数多くの失敗をしている。悩み考え、答えを出し、行動出来る者こそが真の強者といえると僕は思う。お前は運よく今まで大きな失敗をしなかったらしいが、死ぬまで失敗をしない人間はただの賢者だろう⁉
僕の知らない内に賢者になったのか?常に正しくあれる聖人にいつからなった?酔って奥方に裸で求婚したのはどこのどいつだ?そんなヤツが賢者か?聖人か?」
「求婚の件はもうやめろ。あれは一生の恥だ」
「フッ自分を賢者とのたまう愚か者が居る限り僕は言い続けるぞ!」
沼の中で泳いでいた気分が少しだけ浮上し、俺は水をあおった。
「あぁ、まだ考える……次はもっと上等な酒を用意しておけ、飲んだはずなのに味を覚えてない」
「名高い公爵に向かってきく言葉とは思えないな。次は君が用意しろ。場所と食事はまた提供してやる」
「まるで、騎士団に入団したてで疲れてしまった方達みたいに……」
突然隣のメイド長から騎士団の名前が出てきて、俺の意識は引き戻された。
「今なんと?」
「も、申し訳ございません。騎士団を悪く言うとかではなくて……」
「いや、そういうことではなく」
「騎士団長は度重なる仕事で疲れて聞いていなかったのでは?我が親友はこれしきで怒る狭量な男ではありませんよ。そうですよね?騎士団長?」
完全に仕事用の顔をした友人、エリオット公爵に言われ俺は軽く頷いた。
「申し訳ない。少し考えごとをしていて聞き逃してしまった」
メイド長は俺の顔を見ることも出来ないようで青い顔をしながら周囲を見まわし、味方がいないと判断したのか諦めて先ほど言ったであろう言葉をもう一度言ってくれた。
「その……滞在されているウネマ王国の、主に使用人達ですが行動がどうにもおかしいのです。異様に無気力な者や常に笑っている者、かと思えば突然泣きだしたりするも者もおり、どうにもそれを正常と捉えている感じでもなくて……」
「それが……騎士団に入団したての者達と似ている姿だと?」
「申し訳ございません‼」
雷に打たれたような衝撃を受け、怒りをにじませて聞き返せば、皇帝陛下が割って入って来た。
「騎士団長、本当に聞いていなかったようだから補足するが、私が強く聞いたんだ。言っている状況がよく分からないから帝国で似た症状の者はいないかと。メイド長を責めないでやってくれ」
「かしこまりました。皇帝陛下」
答えつつ、頭の中は殴られたようにうまく回らなかった。
騎士団でも警備の関係でウネマ王国の使用人達の不自然な行動は聞いていた。
だがそれが……周囲から見れば騎士団の新人と同じだったとは。
「あの、発言をよろしいでしょうか?」
皇女が名乗りを上げる。
宰相が許可を出せば、皇女は気まずそうに俺を一瞬だけ見た後、話し出した。
「それはもしかすると、その、心が疲れているというか……確認しないと分かりませんが私の魔法で一時的に改善出来るものかもしれません」
周囲にどよめきが広がる。
「アンジェラ、それはすぐに確認出来るものか?」
皇帝陛下が聞けば皇女はすぐに頷いた。
「見ればすぐに分かります。そういえば偶然ウネマ王国の、多分身分が高くない方にお会いしたのですがその方もかなり疲れていました。複数の使用人がそんな行動をとるとなるとウネマ王国の問題の一つはそれなのではないでしょうか?」
「ふむ、貿易ではないがアンジェラの魔法が有用となればこちらがかなり優位になれるな」
「アンジーを侮辱したこと、地の底まで後悔させるのにはちょうどいいですしね」
皇子が悪い顔をしていると皇女が睨み、会議はそのまま他の者は調査を行い皇女は明日南宮に向かうことが決定して終わった。
まだ衝撃が癒えないなか、すぐに会議室を出ようとしたところを皇女に呼び止められる。
「騎士団長‼」
「……なにか?」
己の正しさをまた誇示しにきたのだろうか?
最早その顔を見るだけで腸が煮えたぎるようだった。
「謝罪をさせてください」
「は?」
「謝罪をさせていただきたいんです。ですが、周囲に人がいる状況ではどうあっても騎士団長が私を許すしかなくなります。ですので、騎士団長の都合の良いときに時間をもらえませんか?」
意味が分からない。あの勝負で勝ち、周囲も賞賛をしている、それなのに……謝罪?
「今でもかまいませんが、何の謝罪ですか?」
「不必要に貴方の尊厳を踏みにじってしまったことに対してです。私が浅はかで権力に酔っていました。私は騎士団長の訓練そのものには今も賛同できません。それでも騎士団長の費やしてきた思いや尊厳を踏みにじることは最低な行いでした。本当に申し訳ございません」
深々と周囲に人がいるにも関わらず、俺の半分も生きていない皇女は頭を下げた。
『清廉であれ、誠実であれ、寛大であれ。大いなる勇気を胸に、弱きを助け、強きを挫き、その強き刃を汚すことなかれ』
自身の行いを省みて、周囲に惑わされず突き進むその姿は騎士道を彷彿とさせる。
強いな。
そう思うと同時に俺は跪いた。
「皇女殿下、謝罪は不要です。騎士道にあるまじき行いを止めていただきありがとうございます。ですが恥ずかしながら、新しい訓練方式も制度もうまく回っていないのが現状です」
「はい、全てもう一度考え直す必要があります。もちろん騎士の方々や騎士団長の意見も踏まえて」
頷く皇女の強い瞳は美しいと思うが同時に、イラつきもした。
もはやほぼ癖づいてしまった感情はすぐには消えることが無いらしい。
怒りとも妬みともいえないそれを訓練で解消し、俺は久しぶりに酒の味を噛みしめて寝た。
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次回更新は10月20日19時頃です。
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