表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

純文学

夏の飲み物で乾杯

作者: 本羽 香那


 今日は近くで夏祭りだからと、友人とそれぞれ浴衣を着て2人で屋台を巡っていた。共に家でご飯を抜いて来たので、お腹が空いており、最初は焼きそばやたこ焼きとガッツリした食べ物で食べ歩きをしていた。そうすると、必然と喉が渇くもので、飲み物を売っている屋台を探して歩き出す。暫くすると、威勢の良い声が聞こえた。


「全て1本200円。ラムネとかいかが?」


 その時は人がいなかったため、その屋台に寄っていくと、大きなアイスボックスに浸かっている飲み物が多く並んでいた。


「おお、いらっしゃい」

 

 パッと目に付くのは、やはり露店主がオススメしてきた瓶のラムネ。ラムネが全ての約3分の1を占めていた。その他には、コーラやカルピスとメジャーなジュースやお茶などが置いてある。全て200円であるため、流石にビールなどのアルコールはなかった。私はどれにしようか少し悩みながらもラムネを買うことにし、200円を渡してラムネを貰った。透き通ったラムネに水色の瓶、そしてその冷たさから、先ほどの暑さが少し緩和されたように感じる。


「私はメロンソーダとアイスクリームお願いします。あとそのカップもいただけますか?」


 アイスクリームという友人の言葉を聞いて、ここは飲み物だけを売っているわけではないことに気づいた。よく見たらアイスクリームの他にかき氷も売っている。また、飲み物もアイスボックスにあるものだけでなく、ミキサーで現在も混ぜられているスムージーもあった。どうやら友人はスムージーのカップが欲しいと言っているようだ。

 しかし、私だけでなく、露店主も何故カップが欲しいのか疑問に感じているようだったが、それぐらいなら良いと判断したのか、メロンソーダ入りのペットボトルとコーンに入れたアイスクリーム、そして空のスムージーのカップを渡した。その対価に友人は400円渡す。露店主はありがとうと言って、すぐに次の客に接待をしていた。


「ちょっとアイスクリーム持ってて」


 そう言って私にアイスクリームを持たせると、友人はカップの蓋を外して近くにあるゴミ箱に捨て、今度はペットボトルの蓋を外してカップにメロンソーダに入れる。そのカップが透明から一気に緑色に変わり、彩りがあるカップになった。友人はメロンソーダが残ったペットボトルを蓋して反対側の手で持つ。そして、ありがとうとお礼を言って私に持たせていたアイスクリームを取り、友人は思いっきりアイスクリームをひっくり返してメロンソーダの上に乗せた。すると、あっという間にカップの中はクリームソーダの出来上がり。あの時に何故空のカップが欲しいと言ったのか、ここでようやく分かり納得した。


「これが日本発祥なんて少し意外だよね」

「え? そうなの?」


 友人は知らなかったのと逆に驚いた顔で私を見たが、すぐにクリームソーダのことを教えてくれた。そもそもメロンソーダ自体が日本発祥であり、海外では珍しいそうだ。また、クリームソーダは海外にはあるらしいが、今回みたいにアイスクリームを乗せるのではなく、泡立てたものらしい。こんな美味しい飲み物が日本発祥なんて嬉しく感じてしまう。

 そんなメロンソーダのクリームソーダに感動していると、彼女はスマホを取り出して、自身で作ったクリームソーダの写真を撮っていたが、それが終わると一緒に乾杯しようよと急かしてきた。確かに早く飲まないと冷えたラムネが不味くなってしまうのは間違いない。そのため、蓋のラベルを外して瓶栓を取り出し、思いっきり圧を掛ける。すると、カランというビー玉が落ちる音とシュワッという炭酸が抜ける音が共に弾けて、改めて夏が来たのだなと実感した。


「じゃあ、乾杯」

「乾杯!」


 ラムネは瓶であるものの、メロンソーダのクリームはプラスチックであるため、残念ながらカンという音は鳴らないが、ラムネを飲もうとする際に運動するビー玉のカランという音が聞こえてそのラムネに期待を増す。口付けて瓶を傾けると、ビー玉が引っ掛かり勢いよくは出ないものの、少しずつ流れてくるキンキンに冷えたラムネが喉を潤し、口の中は勿論のこと、体中にその美味しさが響き渡った。こんな美味しい飲み物が、これも日本発祥だなんて、夏の風物詩の代表なんて素敵なんだと感慨深くなってしまう。

 どうやら、友人もクリームソーダと飲み物は異なるものの、その感覚は同じようで幸せそうな顔をしていた。


「美味しいけど、ラムネにするべきだったかも。クリームソーダを飲むとチェリーが欲しくなるもの」


 友人は少しだけ口を尖らせて、私のラムネを羨ましそうに見つめていた。しかし、もうラムネは殆ど残っていなかったため、咄嗟にごめん無いんだと謝るものの、友人からは何で謝るのよとツッコミを入れられてしまった。そのため、そのことに対してまたごめんと謝ると、友人は笑い出し、それにつられて私も笑ってしまった。


「チェリーはないけど、クリームソーダも美味しそうだし、私も飲みたくなっちゃった。買いに行くからそこで待ってて」

「今すぐ飲むの? まあ良いけどね……私もラムネ欲しいから一緒に行くわ」


 そう言う理由で、再び同じ露店に来たのだが、露店主は少し驚きながらも、それぞれの欲しい飲み物を渡す。それぞれ飲み物を手に入れたらすぐに準備を行い、お互いにすぐに飲める状態までにした。


「ねぇ、このアイスクリームのコーンってどうした?」

「そのまま食べたけど、普通だった」

「分かったじゃあこのまま食べるわ……………………うん、普通だね。アイスクリームが乗っている方が美味しい」

「そんなの当たり前でしょ!」


 そんなやり取りに笑った後に、私達は上に掲げて2つの夏を代表する飲み物で本日2度目の乾杯をした。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
読ませていただきました。 夏祭りの雑踏や賑やかな声が聞こえてきそうですね。 おーオリジナルのクリームソーダ、ナイスアイディアですね。 こういうシチュも相まって、きっと美味しい思い出となるんだろうな。…
∀・)一文一文が丁寧でオシャレな印象を持ちました♪♪♪ ・∀・)作中の「乾杯」が心地よく響きました☆☆☆彡
我が町内でも昨日より祭りが始まりました。 町内の公園にはいくつかの出店も出て、また神楽舞も披露されており、それに多くの人が集まりお祭りらしくなっていました。 ラムネの青い瓶。 あれは今では夏の風物詩の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ