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襲撃者は突然に

「そこの姉ちゃん、隙だらけだぜ」


魔眼布越しに見えるカレハ、のさらに後ろに、男が走ってきた様子が見えた。男はそのまま両手に持っていた巨大な斧──いわゆる戦斧と呼ばれるものだ──を振り下ろし、カレハの意識を刈り取ろうとする。しかしそれはとっさに手を放し身体を引いたカレハに当たることはなかった。アウルも、離されて自由になった身体を地面に転がし、落ちてくる戦斧の一撃を回避した。


数十分ほど前に始まった学年全体の決闘に参加していたアウル。つい先程の時刻に、この、カレハという名前の女子と再会した。再会というのは、カレハが塔の前で一悶着あったまさにその彼女──ちなみに名前はその時に確認していた──だからだ。彼女はそのステータスに出ていた、持ち前の身体能力で生き残ってきたようだ。周りに死屍累々と重なっている生徒の身体がそれを物語っている。その流れから出会ったアウルに戦いを申し込んできた。これまで他の生徒と会わずにきたせいであまりポイントを獲得できていないアウルはこれ幸いと、その戦いを受けたのだ。


そしていつものように眼力で気絶させようとしたら、脅威の精神力によって抵抗され、逆に窮地に陥ってしまった。といった経緯で、先述の場面につながる。


「アンタ、何すんのよ!?今こいつを倒した方がいいに決まってるじゃない!」

「確かに、こいつを倒したお前を取ってからでもポイントは奪える。それに一人だけを相手したほうが楽に決まってる。だけどなあ、お前だけを倒すとポイントが目減りすんだわ」

「たったそれだけのために……?」

「いんや?──あとは、右も左もわかんねえ一年をボコボコにするのが楽しいんだよなあ!」


そう言いながらニタニタと下卑た気持ちの悪い笑みを浮かべる男、その後ろにはいつの間に集っていたのか、5人ほどの男が立っていた。


先頭に立つ今話していたリーダー格と思しきヒョロリとした男は戦斧を、後ろの二人はそれぞれ短剣と弓矢を持っている。また素手が二人おり、その隣には明らかに気弱そうな、背中を曲げているメガネの男子が手に似つかわしくない棍棒を持っていた。

男たちは明らかに雰囲気が新入生の持つそれでなく、学院での戦いにこなれている。そんな彼らの様子や言動から、アウルは察した。──彼らが、上級生だということに。


「お前ら……まさか!」

「ああ、そのまさかさ。俺等は三年さ。またの名を【新人狩り】(ニュービー・キラー)なんても呼ばれているなあッ!」


そのセリフを皮切りに、男たちの猛攻が始まった。

振り下ろされる戦斧を避けたと思えば、槍衾のような矢の雨が追撃に入る。カレハが矢をすべて叩き落とした瞬間、彼女に向けて二方向から炎と風の魔術が飛んできた。とっさにアウルはカレハに手を伸ばし、突き飛ばすことでなんとか死の射線から強制的に移動させる。流麗な攻撃がまるで滝壺に落ちてくる水のごとく絶え間なく流れてくる。奴らがそれなりの実力者ということが、攻撃として如実に出ていた。

もちろんアウルはその場の流れで共闘しているカレハと十全なコンビネーションができるはずもなく、苦戦を強いられている。


「チッ!強いッ!」

「なかなか耐えるじゃねえか。去年の奴らは一瞬でボコボコにされていたんだがな。今年の一年は、活きがいいやつが多いのか」

「アンタたち、卑怯じゃないの!?一年相手にこんな多人数で!守護者の誇りってものはないのかしら!?」

「守護者の誇りだあ?そんなん知らねえよ。俺たちは弱い者から搾取して踏み台にする、社会の真似をしているだけさ。それの何が悪い?」

「下衆どもね……!聞いたアタシが馬鹿だったわ」


あろうことか開き直る男たちに、カレハはそう吐き捨てた。

かなり真っ直ぐな性格なのだろう。その心意気自体は褒められるものだ。だがしかし攻勢を崩せないアウルたちは段々と劣勢になっていくのみ。言葉が強くても数と地の利が相手にある分、不利であることは変わらない。

そう判断したアウルは、彼女に言葉をかける。


「おい、カレハ!」

「何かしら……って、何でアタシの名前を?」

「今はそこじゃないだろ!とにかく、コイツらを倒すまでしっかりと協力しないか?」

「……奇遇ね、アタシも同じことを考えてたのよ」

「フ、なら話は早えな。俺が視て指示を出す、それにカレハが従う、でいいか?」

「それでいいわよ……ッ!!」


話しながらも攻撃を捌き続けるアウルとカレハ。

その話が一段落したのを見て、新人狩りのリーダー格と思しき不気味な笑みの男が声をかけてきた。無論、攻撃は継続しているが。


「どうやら、話は終わったみたいだな。それで、どっちから俺等にボコボコにされたい?俺は優しいからな。希望を聞いてやるよ」

「おいおい、俺等は優しくないってんのかよ」

「うるせえな。今俺はこいつらの悲鳴を聞きたいんだよ。お前らに優しくする必要はない」

「んだとぉ!?」


何故かやいのやいの言い合っている男たちを尻目に、アウルとカレハは近づき、学院証を寄せ合う。

ピロン、とどこか間が抜けたような音が学院証から鳴り響き、表示が少し変わる。


「これで一時的だがお前とパーティを組んだことになる。よろしくな」

「ええ。足、引っ張らないでよね。後、こいつを倒したらお互いにパーティは抜けるでいいわよね?」

「そうだな。それ以上引き伸ばすメリットもない」


ふと、言い合っていたヒョロリとした男がこちらを向き、カレハの言葉尻を捉えて言った。


「おいおい、聞き捨てならねえな。誰が俺を倒すって?」

「随分と遠い耳ね。アタシ達が、アンタ等を倒すって言ってんのよ!」


そう言いながら、一歩を力強く踏み出したカレハ。彼女の文字通り怒涛の攻撃が始まったのだった。

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