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浮上する問題

「またアンタ壊したのかよ!!いい加減にしろ!!」

「まあまあ、そうカッカするのはやめや。儂だって、好きで壊してるんじゃないわい」

「剣の扱いが雑いからだよ馬鹿野郎!」


ウィーナが彼の姿を認めるやいなや、怒髪衝天をつく勢いで怒鳴り散らかし始めた。その態度はもう慣れと諦めがどこか入っていて、二人が顔見知りということが伺える。彼女の長身が詰め寄っていくと、かなりの威圧感になるはずなのだが、一方男はあくまで飄々とした雰囲気を崩さず、余裕を保っている。

男は風貌でいえば、灰色の髪を後頭部でまとめた、頓着していなさそうな髪型に加えて、深緑の水晶が眼窩に嵌っている。纏う雰囲気は軽薄とも物静かとも異なる、独特のものだ。

男はウィーナの怒りを無視して、こちらに話題の矛先を向けてきた。


「で、そこのおみゃーさんたちは?まさかウィーナが詐欺を仕掛けてきたんじゃあるまいに」

「違うわ馬鹿。客だよ、客」

「あんだ、お客さんかいな。コイツにいきなり話しかけられて、怖かったやろ?」

「アハハ……」


謎に同情を買われたので、苦笑する以外アウルたちはすることができない。本人のいる手前、そうですねと肯定するにもいかないだろう。


「後輩ちゃん達をいじめんじゃねえよ、フィズ」

「フィズ?」

「儂の名前やよ、フィズ・ガンジス。コイツと同じ、4年や」

「ってことは、ウィーナさんって4年だったんですね……」

「あり、言ってなかったか」

「そうですね。それで、お二人はどういった関係で?まさか……」


エディアが、好奇心丸出しの輝く瞳でそう問いかける。すると、二人は同時にお互いを指差して、手を振った。


「「ただの常連と店主の関係だ!!」」

「そ、そうですか」

「誰がこんな鉄女と……」

「鉄女ってなんだよ、オイ馬鹿」

「熱しやすくて、芯が硬いからやな」

「…………言いえて妙だな」

「君ィ!」


ボソリとユウセイが呟くと、心外だったようでウィーナが叫んだ。と、いい加減に漫才のようなことに耐えきれなくなったのか、カレハが口を挟む。


「で、結局私達と何を話すのかしら?」

「何をって、依頼の話だろ、鍛冶の。君たち、武器を作って欲しいんだろ?」

「なぜそれを」

「素手で、鍛冶を話題に出してるってことはそういうことでしかないじゃん。いいよ、作ってやるよ」


彼女の言うことに嘘も偽りもないのは、一部始終の会話から伝わってくる。であれば、彼女が武器を作ってくれるのは本当の話に違いない。鍛冶の腕は、信頼するだけだ。


「いいんですか?」

「応ともよ。それが仕事だしな。あ、もちろんそれ相応のものは支払ってもらうが……」


それはそうだろう。無償ほど怖いものはない。覚えがあるのか、ユウセイはとても深く頷き、アウルも軽く首肯した。


「それって、オーダーメイドってことだよな。なら、色々指示していいか?」

「無論だ。君たちそれぞれに合う武器を作ってやんよ」


ウィーナは腰からハンマーを抜き取り、肩に引っ掛ける。そのさまは本当に堂に入っていて、まさに質実剛健な鍛冶師という印象を、不思議とアウルらに与えた。


「んじゃ、まずはどんな武器種がいいかだな。そこの馬鹿はいつもの剣として、君たちは?」

「いつものでまとめんなや、儂だってしっかり指定はしたいんやが」

「黙っとけ」

「ア、ハイ」

「……俺は、こういうやつが良いんですけど」


ユウセイは、既存の武器種ではあまり見ないような形状を空中に書いた。彼女も引っかかったのだろう、ユウセイに顔を近づけて、その武器の詳細を事細かに聞いている。


「なるほどな、お前さんの魔法に合わせた汎用性のある武器……面白い」

「私は杖がいいです」

「杖、ね。オイラは魔術刻印は耐久増加しか出来ないが、いいか?」

「ええ。魔術刻印なら他の人にも依頼できるので」


魔術刻印というのは、魔法的な作用を起こす専用の紋章であり、使用者の循環魔力を利用して武器防具を強化できる。魔術刻印は鍛冶師が簡易的なものをつけるか、刻印師が魔法陣を媒介して本格的につけるかがある。どちらにせよ一朝一夕で身につけられる技術では無いので、刻印技術があるものは引く手あまた、ということだ。

特に魔法術師(マジックキャスター)が使う魔法の杖に関しては、魔術刻印が刻まれていればいるほどいい、というのが通説だ。


「おっし、なら見た目にこだわりゃいいな。そっちのお前は?」

「私の武器、ね……」

「おや、乗り気じゃない?」

「まぁ。武器を持つのはいいんだけど、肝心要の私が振るう技術がないのよね」


確かに、カレハはその自慢の身体能力を十全に活かした肉弾戦だ。剣術を使える、という気配はしないので、習っていなかったのは確かだろう。それに、彼女の強みは身軽さからくるスピード戦だ。適当な武器を持ってその強みを殺してしまうのは、残念ならない。


「ふむ。それなら手甲と言うのはどうだ?あれなら、相当厚くしなければ重みはないし、何より素手に近い取り回しが出来るぞ」

「……手甲、確かにアリね。バトルスタイル的にも、拳の防御は欲しかったもの」

「それじゃ、それで決定だな。眼帯のお前さんは?」

「俺は直接戦闘をするわけじゃないから、武器はいらないな。すまない」


アウルがそう言うと、彼女は何かが引っかかったのか、顎に手をあてて考え始めた。

そして指を一本立てて、講釈たらすように言う。


「護身用の短剣、ナイフとかはどうだ?持っておくに損はないだろ」

「……心得は全く無いが」

「ま、ナイフなんて振り回しゃ意外と脅威になるもんよ。火力不足は否めないけどな」

「なら、それでお願いしよう」

「オーケー、これで四人のリクエストが揃ったな。早速作る、と言いたいところだが、お値段の話をしようじゃないか」


ニコリと、どこか営業的な他人行儀(うさんくさい)ような笑みを浮かべたウィーナは、そこいらにほっぽってあった羊皮紙を取り出した。そのまま、サラサラと書き連ねる。


「あ、私金貨は持っていないですよ?この塔現金を使う機会があまりないので」

「私もだわ。分割払いってできるのかしら?」

「というか、そもそも金貨で払うのか、これ?」

「カムフトームだぞ、ここは。勿論ポイントで支払うに決まってんだろ」


そう言って、彼女は書き終えた請求書を、アウルたちの眼前にビッ!と突きつけた。

その額はというと。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん…………」

「「「「…………200万ポイントォ!?」」」」


戦いを得意としない、と何故彼女が自称していたのかという疑問が、一気に最悪の形で氷解したのだった。

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