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決着、麒麟

「キュウウアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??」


麒麟が、今までアウル達を圧倒してきた生物としての格上の存在が、大きなダメージを許した。

その事実による矜持への痛みが、そして何より角という生まれ持った自身の生体機能を失った物理的な痛みが麒麟に切り裂く悲鳴を上げさせた。


「よしっ!」

「やったわ!!!」


カレハはガッツポーズを決め込み、普段冷静なアウルでさえ快哉の声を上げる。

それほどまでに出した成果は大きく、目に見えて士気が上がるものであった。

麒麟型〈ヴータリティット〉はあわや自分が倒されるのでは、という不安と、そしてそれを軽く凌駕する怒りが、その眼を支配していた。


「ハッ、いい眼をするようになったじゃない」

「決めにかかるぞ、カレハ!!」

「ええ、さっさと終わらせて休憩としましょう!」


麒麟も決戦を急くアウルたちの気持ちを感じ取っているのだろう、怒りに燃えつつも据わった冷徹無比な眼光とともに巨体を二人に向けていた。もはや蹂躙するだけの餌としての認識ではなく、明確に生命に関わる敵であると認めている眼光だ。


「────!」


もはや声にもならぬ啼き声を上げ、麒麟が吶喊してきた。

自身のアイデンティティである角による魔法攻撃ができないのだ。後に残った攻撃手段といえば、最も原始的でシンプルな攻撃、肉体による暴威である。

だがしかし、その選択は正しいのか否かと問われれば、間違った判断だと言わざるを得ない。

なぜなら、それはカレハの領域だからだ。


「わざわざ肉弾戦を所望とはね!アタシに倒されすのがお望みなのかしら!?」

「──キュ!」


カレハの踏み込みが地面を砕き、麒麟の巨体が空を駆ける。上から飛びかかってきた麒麟に、カレハは高い横回し蹴りを叩き込まんと、独楽のように廻った。そして鳴り響く鈍い肉音。麒麟の前足付け根部分にクリティカルヒットだ。麒麟は苦悶の表情を浮かべて、しかし突撃をやめない。その巨体は痛みに耐えながら地に落下、絶大な振動を生み出した。


「〜〜っ!」


直前で気づき、避けようとカレハは体を傾けるが、避けきることができず左の肩口に衝撃が走った。

思わず肩を右手で抱きながら崩れ落ちるカレハを尻目に、麒麟はその眼光の切っ先をアウルに向けた。


「今度は俺の番、ってか……あんまり激しい運動は避けてほしいんだがな」


もちろん皮肉が通じるはずもなく、麒麟はその巨体をもってノッシノッシと歩を進めた。

アウルは内心冷や汗をかきつつも口元の微笑は緩めず、大胆不敵な顔を作っている。

なぜなら眼力に取っては不敵な顔こそ最も似合うものであり、その威力を最も高める顔であるからだ。

麒麟もアウルにある程度の警戒は配ってはいたのだろうが、脅威度的にいえばカレハの方が断然高いため、アウルのことは鬱陶しい蝿程度に思っているだろう。


「眼力を喰らいな!!」

「キュアッ──!」


そう叫び、アウルは魔眼布を引きずり降ろす。晒されるは見るものすべてを破滅させる魔の眼力。だがしかし、麒麟も一度食らっている。なんと麒麟は、その紺碧の瞳を閉じて突貫してくる。突進であるなら、どうせ一直線なので眼をつぶっても何ら問題はないという判断であろうか。いま一度思うが、これは塔の機構によって生み出された〈ヴータリティット〉であるのに、なんという知能の高さだろう。


「グ……チッ!」


アウルは対策されたことに、そして避けようとするも避けきれず麒麟の突撃によって腕に傷を負ってしまったことに舌打ちをした。麒麟は目下の敵であるアウルとカレハの二人をなぎ倒したことに安堵したのか、フンと鼻息を一つ、そしてその場で足踏みをしている。

だが、その安心は糠喜びだ。

なぜなら────。


「アンタは生まれたときから絶対強者だったようね。敵と認めた相手に油断するなんて、()鹿()のすることよ!!」

「キュウウウウン!?」


後ろから飛びかかったカレハの蹴りが、〈ヴータリティット〉の脳を揺さぶったからだ。

カレハは馬に対する皮肉のようなことを叫んで、更に追撃を素早く加えていく。

麒麟は身震いによって対抗しようとするもあまり効果はない、当たっては離れ(ヒットアンドアウェイ)を繰り返すカレハには。精々かすり傷を負わせる程度だ。

しかしかすり傷も傷は傷。カレハも疲労と細かなダメージの多大な蓄積によって動きの精彩を欠いており、その速度も新人狩りとの闘い(初めてのバトル)のときと比べたら圧倒的に遅くなっている。その証拠に、だんだんとカレハが手傷を負う数も増えている。


(なるべく速く決着をつけたいが……決め技に欠けるな。俺の眼力を決めきればいいが、〈ヴータリティット〉は避けたり防いだりしてくるだろう。となると必要なのは動きを止めさせることだろう、もしくは()()を使いたいが……、魔力が足りるかわからないしな)


動きを止める。これまでの闘いではカレハがその役目を担っていてくれたが、彼女はもう疲労困憊、頼ることは忍びない。だから自分でやるしかないのだが、アウルは今魔法はとある理由から使えない。武器は拘束するには不十分なナイフ。

……であれば、取る方法はただ一つ。力技だ。


「フッッ!」

「キュウ!?」


カレハが必死の猛攻を仕掛けている間隙に、合わせてアウルは魔眼布を下げ、その素貌を麒麟に注目させる。視線を合わせるだけ、それでいいのだ。

カレハにこの作戦は伝えていない。カレハの攻撃が止まってしまうと、眼を瞑られてしまうからだ。

不規則な連携だからこそ、2つのことを警戒しなければいけない麒麟のほうが不利に決まっている。


「アンタ、どこ見てんのよ!私のことはそんなに脅威じゃないとでも!?」

「キュグウウウッ!」

「私達は、アンタを倒して先に進む!1億ポイントのために、消えなさいっっ!!」


渾身の、それはもう最後の余力をも注ぎ込んだ乾坤一擲の拳が放たれた。

およそ人体から出るはずのないような音が轟き、そして、麒麟の傷だらけの体に穴が貫通していた。

カレハの手に持つは────麒麟の折れた角。


「さっき拾っといて、正解だったわね」

「やったな、カレハ」


〈ヴータリティット〉の巨体が、力抜けて傾ぐ。

そのまま、ズシン!!と地面に倒れ伏し、光の粒子となって、呆気ないほどすぐに消えていったのだった。


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