序章 目覚めは最悪
カーテンの隙間から朝日が差し込む。小鳥の囀りのアラームによって起こされる朝は嫌いじゃない。
ゆっくりと体を起こし、軽く身支度をする。手に新聞とコーヒーを持ち、椅子に腰かけ用意した朝食を食べる。
誰にも邪魔されず自分だけの空間と時間を楽しみながら一日を始めるのだ。
コーヒーを飲もうとすると、サイレンの様なけたたましい音が鳴り響く。
なんだい、なんだい?こっちは優雅な朝を過ごしてるって言うのに……
「朝っぱらから騒がしいねえ…」
けれどそんな音でこの生活が壊れるわけじゃない。無視を決め込んで朝食に手を付ける。けれどそれも叶わぬこと。相変わらず騒がしいのだ。一体何処の誰がやってるのか問い詰めたくなる。
そしてその音は次第に大きくなり…
「イリア!いつまで寝ぼけてんだい!早く起きないと遅刻するよ!」
「…遅刻……?…ああああああああああああ!?」
これが現実に引き戻された瞬間である。夢とは全く真逆の状態で、急いで飛び起き慌てて身支度をする。
朝食もパンだけを口に咥えて家を飛び出る。
「いってきまーす!ぎゃあああああ!遅刻する!」
さっきから騒いでるのが私、イリア=アルベルツ。賑やかな町のとある学校に通っているこの世界ではごく普通の学生だ。そう、この世界では…
まずは結論から。私は一度死んだらしい。らしいって言うのは、自分の記憶には無いから。それにここは日本とは言い難い世界。そして何より…この世界には“魔法”なるものが存在する。現実ではありえないものが。
この世界では魔法が常識らしく、中身が完全に日本人の私は日本とは大違いな日々に振り回され最初は何も呑み込めなくて苦労ばかりだった。けれどそれも十数年前の話。今では日本の文化とこの世界の文化療法を身につけ何不自由なく過ごせている。
そう、何不自由なく……
「ああああ!早く飛行魔法習いたいなあああ!走って登校とか魔法使いらしさ皆無じゃん!」
嘘です。不自由ありまくりです。そう、学校に入学して授業を受けたのはいいものの、飛行魔法や瞬間移動魔法は上級魔法に部類されるらしく、まだ習えないらしい。そもそも魔法すら習ってねえよ。なんだよ魔法使いって。
仕方ないので今は通学路にしてる道を猛ダッシュ中。これだけ見たらただの学生だよ。これじゃ前世と何ら変わりないじゃないか!
「だあああ!間に合えええええ!」
異世界転生者ですが、魔法は何一つ学べてません。今はごくごく普通の人間と変わりないです。
もしこの世に神様がいるならお聞かせください。
異世界転生させた意味、ありますか?




