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第三話 遊園地デート!!

 デートの日がやってきた。

 天気に恵まれ雲ひとつない晴天が広がる。まだ気温が低いと思っていたが、いつの間にか春が来ていたようで温かい風が吹く。人たちはいつもより来ている服が一枚少なくなっていた。

 

 待ち合わせ場所に乾は30分前に着いていた。待ち合わせ場所は、遊園地に直行のバスが出ているバス停前。駅前のバス停ということも、土曜日ということもあり、待ち合わせ場所は若い男女で溢れていた。


 未だに自分が女の子を待っていることを信じられない、乾は思う。これまで女の子と付き合ったこともなかったため、遊ぶときは男と決まっていた。そのときはどんな馬鹿なことをしようか、や飯何処行こうなど、自分のことばかりを考えていた。しかし今となれば華が喜んでくれるか、行く予定のレストランは彼女の好みなのかなど、華が最優先となって考えている。

 人は変わるものだ。良くも悪くも。

 

 そして集合時間の10分前に華はやってきた。 

 白いタートルネックのセーターに、カーキ色のアウター、そしてデニム生地のロングスカート。それ財布しか入らなくねと思いたくなる小さな可愛らしいバッグ。見つけたとき、互いに手を振り近づいていった。


 「優也くん早いね〜」

 「楽しみだったからね」デートできることも、遊園地に行くことも。

 

 「それにしても温かいね。昨日までの寒さが嘘みたい」

 「ほんとそうだよね」乾は返事がする。これまで寒かったのは今日を暖かくするためのような気がした。それは思い込みというやつだ。

 「嘘みたい。魔法みたい」良いフレーズが思い浮かんだのか華は小さくつぶやいた。

 

 遊園地へ向かう派手なラッピングが施されたバスは少ししたらやってきた。

 自分たちと同じように遊園地に行くカップルの姿もあり、自分もようやく仲間入りしたかのような気がして乾は気分が良くなった。

 二人掛けの席に座り、バスの中では膝の上に遊園地の地図を広げ、どうやって回るかを話し合う。 

 

 「このジェットコースター乗りたいっ!あ、これも!」と華が指さしていくアトラクションを見ていく。

 華はなかなか絶叫系のアトラクションが好きなようで、速いのや、高いのを次々と指していった。

 

 「優也くんはどれに乗りたい?」

 地図に視線を落としていた乾の目の前に、華の顔が突然現れる。もう鼻同士がぶつかりそうな距離に顔があるため、顔が熱くなっていくのが分かった。


 「俺は遊園地が初めてだから、全部乗れたらいいな」

 「え、遊園地初めてなの?」

 「そうだけれど」

 

 「それってある意味すごいよね。誰もが通過することをしていないって」

 「凄いのか、それ?」

 自分にとって遊園地ぐらいいかない人もいるだろうぐらいの考えであったため、乾はどう答えればいいのかわからなくなり、曖昧な返事をしてしまう。

 

 「凄いよ!ジェットコースターの登りきったところから降りる瞬間の浮遊感も、観覧車の一番高いところから見える風景も、ドロップタワーの最後の重力に押しつぶされるような感覚もまだなんでしょ?」

 「う、うん」


 「それじゃあ、私と行くのが、優也くんが初めて行く遊園地なんだね。なんだか嬉しいな」

 少し頬を赤らめながら言う華は、物凄く、いやそんな言葉では言い表せないほどに可愛かった。



 **********************



 「これが遊園地か......」乾は呟く。

 予想していたよりもアトラクションは高くそびえ立ち、どこからか悲鳴のような、笑い声のような叫びが聞こえる。

 すごい速度で駆け抜けていくジェットコースター、高いところから落とされたかのように降りていくドロップタワー。どこか中世のファンタジーを模したような建物。乾の知らない世界に来たような、未知の景色がそこには広がっていた。

 華と一緒に歩きながら、忙しなくキョロキョロといろいろなものを見て回る。


 「初めて遊園地を見た感想はどう?」

 「うん。予想していたよりも凄い。高さとか、速さとか」乾は呆気を取られてしまい、この異世界にでも来たかのような感想は口から出なかった。

 イラストやらネットやらで調べていたが、全てが予想以上。


 「怖い?」華は確かめるように言う。

 「まあ、少しだけ、ね。でも楽しみだと思う」変に格好をつけることなく、素直に答えてみると華は「そっか。それじゃあいこ」と乾の手を取り、アトラクションに向けてあるき出す。なんだかエスコートされている気分だ。

 いざアトラクションの世界へ。




 アトラクションは怖そうだと思っていた。特に待ち時間。

 人が多いため、少しばかし待たなければならないアトラクションがいくつかあった。その間に聞こえてくる悲鳴や、通り過ぎていくジェットコースターなどが更に恐怖を増幅させる。


 華は乾が緊張しているということを読み取ってか、気を和ませようと話してくれたおかげで乾の不安も少しはましになった。まさかここまで自分が怖がりだとは自分でも知らなかった。これまで多少危ないことやらに巻き込まれたが、遥かにこちらのほうが怖い。


 そしてドキドキしながら乗り込む。隣に座った華は「楽しみだね」とにっこり微笑むが、乾にはその余裕はなくぎこちない笑みを浮かべるだけであった。

 ギチギチと危なげな音とともにコースターはゆっくりと上り始める。こちらを焦らすかのように、恐怖を少しずつふくらませる。自分をコースターに繋ぎ留めているベルト、それを握る手に力を込めた。

 「大丈夫だよ、終わってみれば一瞬だし、慣れたら怖くないから」

 「わ、わかった」


 ついに登り終えてしまった。眼の前に広がるのは一本の空中にウネウネと続く道。太陽の光が道を照らす。

 そして一瞬の浮遊感とともにジェットコースターが走り出した。




 「面白かった」それがジェットコースターから降りた乾の一言だった。

 これまで感じることができなかった浮遊感、そしてコーナーを曲がるときや宙返りをするときに体を押さえつけるかのような重力、そして凄い風。すべてが初めてであり、普段の生活では決して味わえないスリル。癖になりそうだ。ジェットコースターが中間地点に差し掛かった頃、隣を見るとそこには両手を挙げている華を見習って挙げるほどの余裕もできていた。

 

 「よかった、それじゃあ次はあれを乗ろう!」と華が指さしたアトラクションに向かって歩いていった。



 ******************


 

 他にもアトラクションに乗った後、華はトイレに向かっていった。

 乾も同じようにトイレに行き、用を足し、髪の毛を整えたて外へ出てもどうやら女性用のトイレは込んでいるようで、まだ時間はありそうだ。

 次は何処へ行こうかと地図を広げたりする。


 華はまだだろうか、と顔を上げたときそれが視界が入った。


 遊園地の壁に書かれている落書きに。先程までは何もなかった場所に、例の落書きが存在していた。

 山口に見せてもらったようなものや、自分の目で確かめたものとは異なり、グラフィックアートのような魔法陣の背景はなく、そして書かれているものは本格的なものであり、そして中心には人間の目が描かれている。間違いない、これは本物の魔法陣だ。

 

 意味はわからない。しかし背筋に嫌な悪寒が走った。まるでその目が俺を見透かしているように思える。

 そして何か自分の知らないところで、何かが大きなものが蠢いている気がした。ぞろぞろと、無数の黒いものが。


 直ぐ様スマホを取り出すと写真を撮り山口に送る。乾が知っている限り一番魔法陣について詳しいのは山口だ。

 

 一体どうすればいい?これは悪影響を与えるのか?

 これまで浮かれていた思考が、慌てて走り出す。これは組合せではなく、一つの陣で完成している。あとは魔力を込めるだけだ。

 かなり精密に書かれているため、規模は大きいものだと想定できる。そしてこれを描いた魔術師が心の内に秘めている「魔」の大きさでも決まってくる。

 

 魔術師は心の中に秘めている「魔」を術る者だ。うちに秘めている「魔」が大きいほど術師が使う魔術も強大なものになっていくのだ。

 

 

 「あれが見えるの」

 いつの間にか乾が座っていたベンチの隣に、見知らぬ女が座っていた。

 どれほどブリーチをすればそんな髪になるのか不思議になるほど白い髪に、カラコン?と思わせる金の瞳。季節にまだ合わない真っ白なワンピース。瞳以外全て白だ。まるで天使のように見える。


 「なんのことだ」

 「見えているのでしょ、壁に描かれた陣が」

 金の瞳がこちらを見る。その瞳孔に身体が吸い込まれていくような錯覚の後、全身の内側で激しく震え激痛が走った。

 「あ、ああ.......」本当は泣き叫びたいほどだが、周りには大勢の人たちがいる。こんなところで変に目立つわけにはいかない。


 (何だこれ、一体何が俺の中で起きているんだ、魔術?魔法陣の影響か)ぐるぐると頭を回す。

 金の瞳の前で静電気のようなバチッと音が弾けた。途端に身体の痛みは何もなかったかのように消えた。


 白(仮)が瞳を大きく、目玉がこぼれそうなほど見開く。

 「なんなの、君」未知の化物を見たかのようなリアクションに少しばかしのショックを覚える。そして


 「いやお前が誰だよ」乾は渾身の突っ込みをした。

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