2章 俺が使えて周りが使えないワケ
今回から人物のセリフの行間を開けてみました。
自分で読み返した時に見づらいんじゃないかなと。
転生しても、勉強しなきゃいけないのか。
女の子を助けたら性別が女に変わって魔法使いとして世界を救うことになってしまった。正直世界を救うというワードには多少の興奮を覚える。
だが、何故世界を救うのに勉強、魔法ではなく普通の、勉強をしなければならない?
「勉強より魔法だ。魔法がなきゃ敵?にも勝てないだろ?」
女性特有の高めの声が喉から出ることに未だに違和感を覚える。数時間前まで男の声帯だったから当然のことなんだろうが。
「そりゃ勉強なんて退学にならない程度にしとけばいいよ。僕も手伝うし。何よりテストは魔法で答えを僕が君の答案に映し出すから」
「そんなことができるのか!?」
ヘルパの顔を見るとイタズラをしそうな子供の顔をしていた。とりあえず勉強をしなくていいことを知って安心する。
「君の『普通の人間』としての設定は李世魔歩。帰国子女設定。」
「帰国子女…それいるのか?」
「そりゃいるよ。魔法書を学校で読んでもらうんだから。それを海外の適当な言語とかでごまか…せないね。人間も進化したから」
愚痴をこぼすようにそう呟いた。
「本当は、普通の人間も魔法が扱えるはずだったんだ。それなのに人間は殺し合いをしはじめた。弱肉強食なのはいいけどわけもなく殺しをし始めた頃からおかしくなった。そこで魔法を開拓した存在は人間に魔法を与えないことにしたんだ。それと他の動物にも。魔法の使える動物を悪用されたら困るからね。そしてなんで僕や君、それと初代が魔法を扱えるのかっていうのは魔法を開拓した存在の周囲で大きな分裂が起こったんだ。そして開拓者とは別の立場についた存在が今人間を襲おうとしてる。殺しもあるけど本当の目的は…その人間をモルモットにするためなんだ」
「結局僕達も人間も、変わらないんだよ。お互いを排除しないと自己が成立できない。学校でよくみるいじめも、それとなんらかわりない。僕達が優れてるから魔法が扱えるんじゃないのは覚えててほしいんだ。」
本を音を立てて閉じる。先程までの真剣な眼差しをすぐに明るいものに変えた。
「よし!この話は終わり!もっと魔法教えるね。一応戦えるくらいには」
「待ってたぜ!」
『ウォータービーム』というダサい魔法でないことを祈りながらヘルパの方を見つめる。
「『ウォータービーム』とか基礎魔法とは別に戦闘用魔法は全部やることは同じなんだ。まず手のひらに魔法陣を形成してそれを媒介に魔法を放つ。それだけ」
ヘルパの手のひらに黄色…いや、金のようなそれの透き通ったような紋章が現れる。ファンタジーアニメで見る光属性といえばわかるだろうか。
「これをまず展開してみて。イメージはさっき手に取り込んだ紋章を手のひらに出す感じ」
言われた通り、紋章を出すイメージを持って力を込めてみる。目をつぶり集中してみる。
手のひらが暖かくなったのを感じで目を開けるとヘルパとは違う青と紫の魔法陣が現れた。
「おお上手いうまい。ここからは後で渡す魔法書に書いてある詠唱を覚えてて魔法陣展開したまま詠唱して。そしたらその魔法が撃てるよ。でも高難易度の場合は練習が必要だから、とりあえず簡単な魔法だけ乗ってる魔法書を渡すよ。これ君の教科書ね」
テーブルのすぐ隣にあった木でできた本棚から青い本と紫の本を取り出す。そこで俺は1つ疑問を持った。
「なあ、魔法って属性があるんだろ?」
「うん。君は水と闇。僕はこれといった属性を持たない『ニュートラル』ってやつだけど。」
「大体どのくらいの魔法があるんだ?」
「そうだなー」
顎に手を当てて家の中をウロウロするところをみて、俺はまだ何も始まっていないことを悟る。
「大体50種類?水、闇とか言ってるけど細かい分類とかあって、それを含めれば50。でもー普通に見れば6種類かな。炎、水、風、光、闇、土」
指を折って説明していた。そしてヘルパは先程の魔法陣をおもむろに展開するとよくわからない言語で詠唱を始めた。その詠唱が完了すると魔法陣は光を帯び、ヘルパの手のひらに衣服が出現する。
よく見れば学校で着るような制服。しかし何故か女性用。
「はいこれ。君の制服。」
「女物じゃない!?これ」
「女性でしょ?」
「それはお前が勝手に……。わかった、わかったからそんな目で見るな」
せっかく作ったのに…と言わんばかりの目で見上げるものだからこっちが折れるしかなかった。
案外俺は押しに弱い。
「一応この服は魔法の強化をしてくれるものだよ。それっぽく深川高校の制服に寄せてみたから違和感とか他の人は覚えないかな」
ヘルパは制服を笑顔で手渡す。それを困惑しながら受け取る。
「なあ、服をちゃちゃっと着る魔法とかは」
「ないよ。そんな魔法必要ないからね。自分で着てよ。僕は女だし見られても平気でしょ?」
「そうじゃねぇよ!女物の服なんて着たことないから着れるわけないだろってことだよ!」
そもそも着方を知ってるやつは余程の物知りか女装趣味でもあるようなやつだろう。
「もー仕方ないな。女性にした責任は僕にもあるし、今回は手伝うよ。ちゃんと覚えてね」
そういってヘルパは指を鳴らす。すると俺の服が
一瞬で消し飛んだ。