ヘビとキツネとオンボロ橋。
「はあ、今日も今日とて、またお腹が空いたなぁ」
オンボロ橋にいた食いしん坊のヘビは言う。ヘビを食いしん坊と言うのは、ちょっと正しくないのかもしれない。
常に、お腹が空いている状態でいると言うのが正しい表現だ。
ヘビは、いつもお腹が空いて空いて空いて、仕方がない。
どんなに食べても空腹感が満たされない。
「ヘビさんヘビさん、またお腹が空いているのかい?」
そこにやってきたのは、お人好しのキツネ。
「もしよかったら、これでも食べるかい?」
そうしてキツネが差し出したのは、柿。
とてもとても大きい美味しそうな柿だった。
「ありがとう、キツネくん。美味しそうな柿だ」
ヘビは、キツネから柿を受け取るとすぐに丸呑みにする。
「よっぽどお腹が空いていたんだね。いい食べっぷりだね」
キツネはヘビに言った。
「ごちそうさま。ありがとう、美味しかったよ」
「どういたしまして。・・・ところでヘビさん。君は、このオンボロ橋の森の先に何があるか想像したことはあるかい?」
キツネはヘビに聞いた。
「考えたことが無いと言ったら嘘だね。多分この森の住人は誰でも考えていると思う。だけどこんなオンボロ橋では、渡れない。そうだろう? キツネくん?」
ヘビは、キツネに諭すように言った。
「そうだね。そうだよね。分かっているんだ。渡れないと。だけど、何かが違うとそんなことも思ってしまう。何が違うのかなんてさっぱり分からない。でも、僕たちの全てが何かが違うと感じるんだ。それを正常に戻したい。でもやっぱり・・・」
そこまで言ってキツネは黙ってしまった。
「? やっぱり何だい? キツネくん。私は、難しいことは分からないけど、君の話を聞くことは出来るよ」
「いや、何でも無い。少し不安になっただけなんだ。ヘビさんに聞いて貰って少し落ち着いたよ」
「そうか、ならよかった。これからも聞くことだけなら出来るから、またこんな風に話そう」
ヘビは、キツネにそう言う。
「そうだね、ありがとう。話を聞いてくれて、ではまた」
「ああ、ではまた」
そう言って、ヘビは、キツネとすれ違いながら、森の方へに向かおうとしていた。
「でもやっぱり、もし正常に戻ったら、今の僕たちの関係は、全て無くなってしまう気がする」
「?」
ヘビは、キツネが呟いた言葉が、少し気になったが、すぐに忘れた。
そんなことより、ヘビにとっては、もっと重要なことがあった。
「ああ、お腹が空いたなぁ。何か食べ物無いかなぁ」