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7.ドラゴンと少年と夕食


うちに帰ったらもう大分夜も回った時間だった。


俺の住んでいる町はシーリという田舎町だ。とはいえ街道沿いにあるので流通はそれなりにあるし、人の流れもそれなりにある。

田舎の都市といえばいいのか、貴族街はないが、近隣の村の人たちが『町に遊びに行く』といったらここに来る、というような微妙に栄えた町だ。



「どうぞ」

「お邪魔します!」


元気な声が玄関から家の中に響いた。

俺の家は、市場の開かれる中央広場からほど近いところにある。一人で暮らすには少しばかり広すぎる2階建ての小さな家だ。それもそのはず、先々月までは親父と一緒に住んでいた。この家も親父のものだ。


親父も冒険者だった。

というか、親父が冒険者だったから、俺も憧れて冒険者になったというのが正しいか。親父は、Cランクの冒険者で堅実な人間だった。

冒険者で堅実というのもおかしな話かもしれないが、身の丈に合った依頼をうけ、無理はせず、人を助け、男やもめで大変だろうに俺のことを不自由なく育ててくれた自慢の父親だ。


幼いころは三日以上家を空けない依頼しか受けない親父だったが、十歳をこえてからは、徐々にいろんな依頼を受けるようになった。


先々月、よくパーティを組む仲間で、片道十日の距離に新しく出現したダンジョンの様子見に出かけていき、それきり戻ってこない。

冒険者協会(ギルド)にも問い合わせているが、いまのところ、ダンジョンに潜ったという報告以降、帰ってきたという情報はない。

まだ希望を捨てたわけじゃないが、何かあったのは間違いないだろう。


冒険者なんて、いつ死ぬかわからない職業だ。


覚悟はできていたが、それでもやはり、行方不明というのは待つしかないこちら側からするとしんどいものがある。



こうして、この家で自分以外の人間を見るのは久しぶりだ。

それにこんなに若い女性がいるというのはなんだか不思議な感覚だった。



「よければ飯を作るけど、エリスも食うか?」

「うれしい!食べる!」


彼女に遠慮とかそういうものはないらしい。

さくっと4人掛けのダイニングテーブルに腰掛けると、完全に待つ姿勢である。


もちろん、命を助けてもらった俺に否やはない。喜んで食事を用意させていただく所存だ。








☩  ☩  ☩  










「美味しかった!ご馳走様でした!」

「よかった」



ウインナーを炙ったものと黒パンとチーズという俺としては大分豪勢な夕食を、ふたりでぺろりと平らげた。

ひとりだとどうしても屋台で食べてしまうので、こうやって家のダイニングで食べるのは久しぶりだ。


さみしさ4割、うれしさ6割な気持ちだった。



「聞いてもいいか?」

「どんなこと?ドラゴンの姿でのスリーサイズは教えないよ?」

「さすがにその辺は興味ないな」



っていうか、今の姿でのスリーサイズは聞いてもいいのか?



「人魔大戦って本当にあったの?」



なけなしの紳士精神でスリーサイズは聞かないでおいた。おそらくこの選択は間違ってないはずだ。



「あったよ。あれは、今思い出しても悔しい戦争だった」



そうして俺は、敗者の立場から、戦争の全貌を聞くことになる。





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