3.ドラゴンと少年と魔獣暴走《スタンピード》中編
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彼女の下着のことは忘れることにする。
それよりも魔獣暴走だ。エリスはその災害から俺を守ってくれるというのだ。
このひょろっとした白い女性が。
俺だって腐っても冒険者だ。見た感じ、彼女に負けるとは思えない。だって彼女は干し肉を貪るほどに飢えていたし、何も持っていないし、体つきだって筋骨隆々とは程遠い。
守る側というよりは、どう見ても守られる側にしか見えない。
とはいえだ。
もしこの戯言にしか聞こえない話をまったく信じなくて、本当に暴走が起きてしまったりしたら、それはもう大変なことになるだろう。彼女の言うことを真正面から信じるつもりもないが、内容が内容だけに放置するにはあまりに危険だ。
悶々とそんなことを考えを巡らせていると、彼女はツッコミを入れた俺ににこやかに宣った。
「だって、そのくらい簡単だからね!」
災害を止めることが、ピクニックと同等であってたまるか。
と、突っ込もうとしたが、先に彼女は俺の手を取った。
あたり前のように言葉に詰まる。
だって!!女の子と手をつないだことなんてないんだもん!!
だけど、慌てて乱れた思考は続かなかった。
くんっ
「っ!?」
物凄い力に引っ張られ、俺の体がふわっと地面から離れた。息に詰まる。すごい風圧にぎゅっと目をつむって左腕を引っ張られる力に耐えること数分、始まりと同じく、唐突に俺の足は地面についた。
恐る恐る目を開けてみれば、ニコニコとさわやかな笑顔の彼女がそこにいた。
そして周りの景色が、草原から雑木林へと変化していた。そしてすぐそこに、見覚えのある迷宮の入り口がある。
開いた口が塞がらないとはこのことだ。
ほんの数分で行けるような移動距離じゃない。連れてこられたとしか考えられないのはわかっているけど、そんなことがあるのか。でも実際起きてるし。どんな魔法だろう。
「よっし!さくっと行って、さくっとコアを壊しちゃおう!」
今にも踊りだすんじゃないかというような軽やかさで、彼女はダンジョンに入っていこうとする。
ワンピースを着ただけの女性がだ。
「まてまてまてまてまて!!っ、あ゛づっ!」
思わず全力で止める。
が、あまりの肩の痛みに思わず立ち止まった。さっき引っ張られていた方の肩だ。ぶらんとしている。脱臼しているらしい。
俺の声に反応して、駆けだそうとしていたエリスが振り向いた。そしておそらくは俺が脱臼していることに気が付くと、ハッとした表情をしてすぐにこちらにやってきて、ひどく申し訳なさそうな顔で肩に触れた。
「ごめんね。すぐ治すね」
ふわ、と彼女の手元から白い光と共に優しく風が吹き、肩が元に戻る。
だめだ、詠唱なしで治癒魔法とかちょっと意味が分からない。どういうことなんだろうさっきから。なんかおかしなことが起きているのはわかっているんだけど、正直もう色々一気に起こりすぎていてよくわからない。
夢でも見ているんだろうか。なんかもう、そうであってほしい。
「さ、これで大丈夫かな?一応物理障壁と魔法障壁もかけておくね。たぶん大丈夫だとは思うんだけど、私ももしかしたらなまってるかもしれないし」
本当に、もう意味が分からない。
あれかな。考えるだけ無駄なのかな。
何も言えなくなった俺を引っ張って、彼女はあっさりと迷宮へと足を踏み入れたのだった。
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