第八章 ジュリエットひとり
遅くなりました・・・・。すみません。
「はぁ・・・・・。」
姉さんがまとめてくれた結婚候補者リストを眺めてみる。
我々、ヒガンバナはユリとの強い繋がりを求めている。ゆえにユリの有力な人物と婚姻を結ぶのが望ましい。ユリと強い繋がりを望むことができなくとも、婚姻を結べば我が国の利益になる人物はこのリストに入っている。
1 シラユリ・ユリ
ユリの王女。よっぽどのことがない限り彼女がユリの王になると思われる。性格に少々癖があるが、結婚相手としては全てにおいてほぼ完璧。彼女には我々と婚姻を結ぶか、一生独身でいてもらいたい。また、彼女が婚姻相手として一番ふさわしく望ましい。
2 クロユリ・バイモ・ユリ
ユリの王子。彼が王になることはないと思われる。かなり自虐的な人物であり常に負のオーラを纏っており、性格面にかなりの不安が残る。
3 ミスルトゥ・ヤドリギ
ユリの三大貴族の一人。偏屈で気位が高く、人形偏愛者の可能性が高いので、婚姻拒否、離婚の可能性が高いと思われる。
4 フィアーノ・ルレザン
ユリの三大貴族の一人。精神的にあまりに不安定であり、婚姻を結んでも、自殺する可能性あり。
5 ロゼ・ロードン
ユリの三大貴族の一人。仮面を常に被っていることと、舞台に異常な拘りがあること、そして、かなりの変人であるため、婚姻後の生活は困難かもしれない。
6 ファンネル・ウイキョウ・セリ
ユリの騎士団長。前騎士団長は彼女の母である。騎士団長に相応しい器の持ち主だが、かなり堅苦しく、面倒な性格である。彼女もロゼ同様、婚姻後の生活は困難かもしれない。
7 アジサイ・アジサイ
ユリの天才学者。だが、人に一切興味がないため、婚姻拒否の可能性が高いと思われる。
8 クササンゴ・センリョウ
ユリの有力な商人。かなりの守銭奴で、金のことに関して厳しいが、比較的常識的な性格をしているので、彼女との婚姻後の生活は案外楽かもしれない。
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13 スノウ
現世にいるかどうかわからないが、いたら婚姻を結ぶかどうかはともかく、臣下として引き入れたい。名前が変わっている可能性もあるが、左目あたりを仮面で覆っていること、長い白髪、金色の右目、長身、艶やかで美しい女性的な見た目は恐らく変わらないと思われる。直接的に我々とシラユリを繋ぐことにはならないが、その知識量、頭脳に関しては目を見張るものがあり、臣下、または婚姻を結ぶことができれば、ほぼ確実に我が国の利益になるため、このリストに入れた。この人物を見つけるのはほぼ奇跡。また、殺戮をこよなく愛するヤバい奴らしいので注意。
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20 カサブランカ・ユリ
ユリの現女王。全てにおいて完璧だが、年が離れすぎているのが気になるところ。
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・・・・マジかよ。ちゃんとリスト読んでなかったから気づいてなかったけど、スノウさんもこのリストに入ってたのね!?というか、会えたの奇跡だったの!?しかもヤバい奴!?ええっ・・・・・。つーか、これ、スノウさんは今現在どっちも無理っぽくない?臣下は、今、シンイちゃんの臣下だから無理だろうし、婚姻を結ぶのも、スノウさんと婚姻を結ぶと自然とモクレンと同盟を結ぶ流れになっちゃうだろうし。・・・・ああ、でも、あの人、裏切りを持ちかけてきてたな。だけど、あれはなんというか・・・主人が嫌になったからするような普通の裏切りではないように思えるしな・・・。・・・じゃあ、スノウさんが裏切りを持ちかけてきたわけは一体何だ?あの人・・・・人なのか?・・・・は一体何を考えている?欲しいものがあると言っていたが・・・・。・・・まぁ、いくら考えたところで人の考えなんてわかるはずもないか。
「・・・・一体、それはなんだ。」
え?結婚候補者リス・・・・・
「結婚候補者リストとはいったいなんだ?その中に並ぶ人の名はなんだ?」
「フラン・・・・・。」
これをフランに見られてもなんの問題もないはずだ。だが、なぜか私は背筋が、臓物が奥底から冷えて行った。
「シラユリ・ユリ?クロユリ・バイモ・ユリ?ミスルトゥ・ヤドリギ?それは殺す必要のある人間のリストか。そうか。そうだな?」
・・・・・・・。
「では、今から殺しにいってくる。」
なに、言ってんの・・・・・?
「フ、フラン、違うよ。違う。これは私が結婚するべき人のリスト。」
「なんだ。何も違いはしないじゃないか。殺さなくては。では、
「だから!!!」
「ああ、そうだな。まず、先にお前を殺さなくてはな。リコリス。」
・・・・・・・・・・。
「貴様に・・・・なぜ幸せが許される!?お兄さまを殺したのは貴様だ!?なぜ逃げようなどと思える!?結婚などで私から・・・罪から逃げおおせるつもりか!?はっ、逃がすものか。私は貴様を地獄の淵まで追い続けるぞ!!」
・・・・・・・・。
「貴様が幸せになるなど許されるはずがない!!!貴様は罪で汚れている!!!神から愛されるはずもない人間だ!!」
「ねぇ、フラン・・・・・・。」
「煩い!!!私を諭そうとしても無駄だ!!私は貴様の言葉なぞに耳を傾けるつもりは一切な
「フラン、私たち、このままじゃ駄目だよ。もう、過去は断ち切って違う道を進もう。」
「な、なにを・・・・・・
「このままだと、フランは私に縛られ続けるし、私もフランに縛られ続ける。それってよくないと思うんだ。」
「・・・・・なにがいけない。」
「は・・・・・?」
「それのなにがいけないんだ、と言っている。」
「だっ、だってさ!!それってもう二人とも成長できないし、二人とも前に進めないんだよ!?」
「成長するのも前に進むのも結局貴様だけだ。私はただ取り残される。」
「とにかくっ!!私が結婚してフランと私、離れるのも一つの道だと思うんだよ!!」
「断る。いいか、私は貴様が結婚などすれば相手ごと貴様を叩き切ってやる。」
駄目だ・・・・・・。まぁ、いい。別に私の結婚についてフランにどうこう言われる筋合いはないんだから。フランが許可しまいが私が勝手にフランのそばから離れればいい。それだけだ。
「・・・・・・フラン、私たちはいつまで過去に縛られ続けるの?」
「永遠に決まっている。罪を忘れることが許されるはずもない。」
「じゃあ、どうやったら罪は許されるの?」
「罪が許されるはずなどない。」
・・・・・・・・・。
「じゃあさ、フラン。君は過去の記憶を失っているんだよね?だったらさ、君も罪を忘れていることになるんじゃない?」
「私が罪を犯しているはずはない。」
なにその無駄な自信。
「でなければ、私は
「もういいよ、フラン。この話はやめにしよう。」
フランもおかしくなってるし、私ももうどうすればいいのかわかんないし。
「それに私、もうちょっと考え事したいからさ。ちょっと出てってくんない?」
「・・・・ふん。もう二度と余計なことを考えるんじゃないぞ。貴様と私はこのままでいい。」
そういうと、フランはヒールをカツカツと鳴らしながら部屋から出て行った。
「・・・・お世話係なのにヒールっていいのか?」
歩きにくそう・・・・。暗殺者とかに私が狙われたときとか、走って助けにきたりできなくない?・・・あ、死んでもかまわないからいいのか。
「ああ、忘れるところだった。」
「ふぁっ!?」
また戻ってきたの!?・・・・などと考えているうちに、私の手元にあった結婚候補者リストは灰となった。そしてフランも再び出て行った。ええ・・・・・・。
「困るんだけど・・・・。」
というか、姉さんにどう説明しよう・・・・。手書きだったんだよね・・・・・。




