皇法子の場合 11
第二十一節
「いい心がけだわ。了解」
「もう一つは?」
「勝負してよ」
瑛子の目が光った。
その場に緊張が走る。
「それは…メタモル・ファイトしたいってこと?あたしと」
何故か軽い調子で不思議ちゃんキャラを崩さずに言う彩香。
「ああそうだよ。信用できるってんだったらお互いを一時的に変身させるのも問題無いよね?」
考えている彩香。
「あたしは構わないんだけど…もしかしてメタモルファイター同士で余り戦ったことないの?」
図星を衝かれ、若干動揺する瑛子。
替わって群尾が答える。
「恥ずかしながら最近「メタモル・ファイト」の概念を知ったくらいなんですよ」
「「最近!?」」
皇と彩香の声がハモった。
「じゃあ、それまでどうやってたの?」
「普通に殴り合ってました」
「それじゃボロボロでしょ?」
「ええ」
体育館倉庫内から体育館に舞台を移しての壮絶な戦いが蘇る。あの時は加減が分からなかったので相手を半殺しにして放置するしかなかった。
「あっきれた。じゃあ普通にファイトしたことは無いワケ?」
「いえ、この間関西からの遠征ファイターと戦いました」
自分のことではないのにスラスラと淀みなく答える群尾。
「ここから瑛子ちゃんに聞くわ。瑛子ちゃん?」
「沢尻でいいよ」
第二十二節
「…あらそう。じゃあ『沢尻さん』、そのファイターとは戦って勝ったの?負けたの?」
「…うるせえな」
「負けたんだ」
「特殊なルールでしたので」
群尾を手で制止する皇。お前は口出すな、という意味だろう。
「条件戦か…お互い怪我しなくても大丈夫だったでしょ?」
黙ってうなずく瑛子。
「お互いの能力は掛けられたの」
「…まあな」
「あなたの能力は知ってるけど、相手の能力…っていうか、あなたはどんな格好したの?」
黙って渋っている瑛子。
「メタモル能力は相手の服を女物にする能力だよ?瑛子ちゃん…じゃなくて沢尻さんは生まれつき女の子でしょ?別に恥ずかしくないじゃない」
不思議なもので、そういう風に言われると聞いている群尾も何だか恥ずかしくなる。男女関係なく「相手の思うがままにされる」経験の有無を聞いているということが恥ずかしさに繋がるのだろうか。となるとこれが男同士だったりしたら…と思ってしまう。
とても自分はメタモルファイターとしてはやって行けそうに無い。
この能力は生まれつきらしいのでそもそも関係ないのだが。
「その…あれだ。就活すんのに着る色気のねえ格好だよ」
「…ひょっとしてリクルートスーツ?」
「じゃねーの」
顔を見合わせている皇と彩香。




