皇法子の場合 10
第十九節
「今病院ってどこも人手不足なんです。しっかり働いてくださいね。やり甲斐のある仕事なんで」
「そんな…オレは…おと…こ…」
鈴の鳴るような可愛らしい声で怯えた子猫の様に必死の精神的抵抗を試みる元・DV男。
「あらあら~。駄目よ~女の子がそんなこと言っちゃ~」
華奢な看護師をきゅっと抱きしめる彩香。
「あ…」
「これからは口調も女の子っぽくすること。大丈夫!身だしなみ…着付けとかメイクとかの知識はちゃんと埋め込んどいて上げるし、月のものとかなんやかや日常生活は乗り切れるようにしとくから」
触れ合いそうなほど近い目と目。
「大丈夫。あたしも鬼じゃないんで、それでいて男の頃の知識とか意識とかは全部そのまま残しといてあげるから」
「っ!?!」
「でもって、男の人といい関係になろうとしても絶対断る様に精神ロック掛けとくね。これで女の幸せは成就しないから安心して。もしもそういうことになるとしたら…無理やりだから」
群尾はぞ~っとした。
メタモル能力は女性に持たせるべきじゃないのかも知れない。いや、男であってもよほどの徳性が無いと使わせるべきではないだろう。
~数分後~
「いつも…あの調子なんですか?」
「まあね~」
どうやらすっかり「妖精さんモード」になってるらしい。
「看護師としての働き口はウチの組織で幾らでもあっせんしてるんでね。住みこみで死ぬまでさ」
「そうですか」
第二十節
「ぶっちゃけあんな社会のダニ、その場でぶっ殺してもいいんだけどさ。使えるモノは使わなきゃ」
ヒドいことを言っている皇。
だが確かに、恐らく女性のヒモとして寄生するだけの生活。たまに稼ごうと思ったら因縁を付けてお金をせしめる…およそ生産的とは言い難い。
それが幾らかの労働力として計算できるのだとしたら社会にとって差引どれだけのプラスとなろうか。
「ということでお願いできるわよね?」
「いいよね?瑛子さん」
むすっとしている瑛子。
「…知ってっだろうけど、あたしの能力ってJKなんだけど?」
「構わないわ」
「クズ男をJKにした後どうするかとか考えたことないんだけどそれはいいの?看護師さんにするとか出来ないんだけど」
「ま、それはあたしたちの仕事。組織に所属してくれるんだったらある程度は方針に従ってほしいけどね」
考え込んでいる瑛子。
「二つ条件がある」
「どうぞ。とりあえず聞くだけは聞くわ」
「一つは、ターゲットの調査結果を出来るだけ詳しく教えて欲しいってこと」
「いいわよ。あまっちゃん(天使彩香)にだって誰だって基本は説明するの。問答無用ってことは無いから安心して」
「でも、緊急の場合は?」これは群尾。
「説明受けないんだったらやらない。他あたって」
瑛子はきっぱり言い切った。




