皇法子の場合 09
第十七節
笑顔のまま長い髪で見下ろしている彩香。白くゆったりした服装がお嬢さま的な雰囲気を醸し出すが、今は横たわる屈強な男を見下ろす格好だ。
「…態度次第じゃ考えても良かったけど…問答無用で女をぶん殴る根性はもう許されませ~ん」
ぱ…と手を離す。依然としてニコニコしている彩香。
「野郎…ぶっ殺してやる!」
痛むらしい手を押さえながら立ちあがる男。
「これからはそういうの無しで~す」
「…なん…だ…と…」
すぐに飛び掛かって来ればよさそうなのにその場に立ち尽くしているDV男。額に脂汗が滲んでいる。
「ぐあ…あああっ!」
髪の毛がムクムクと生き物のように波打ち、そして伸びて行く。
無駄に広かった肩幅がガキガキと縮み、逞しい筋肉がしぼみ、ふっくらと柔らかい皮下脂肪となって薄く身体全体を包み込む。
「な、何だぁ!?」
「見ての通りで~す(ニコニコ)」
厚かった胸板が薄くなって行くが、そこには形のいいお椀型の脂肪の塊が残された…乳房だ。
ぐぐぐ…とウェストがくびれていき、反対にお尻が膨らんでいく。ただ、「出るとこ」は今回はそれほど出ていない控え目な体格らしい。
「バカな…そんな…」
信じられぬ!という目つきで目の前に翳されている手が、毛むくじゃらの節くれだったそれから細く長く美しい「女性の手」へと変貌していく。そしてそれを観ているのもノーメイクなのにまつ毛の長いパッチリした目の美女の顔である。
第十八節
その場から動けなかったウェイトレスさんが余りのことに呆然と立ち尽くしている。
あまりいない他の客は…そもそも事態が把握できていない。
「ほんじゃ仕上げ行くよ」
「ああっ!」
何とも艶っぽい声で背中をのけ反らせるスレンダー…というには細すぎる美女。
大抵の男は大小の差はあれこういうリアクションになる。…生まれたばかりの初々しい乳房にブラジャーが装着されたのだ。
粋がって履いていた黒のビキニパンツが白のパンティへと変貌する。
「あ…あ…ああ」
小汚かったジーンズと無地のシャツが白く染まって行く。背中まである長い髪は上品にまとめられて行く。
「…これって」
離れたところで群尾がつぶやいた。
「予想できたかな?」
「けっ!」瑛子が毒ついた。
「きっと今までは悪魔だったと思うけど…これからは天使になってもらいましょ~」
「よ、よせぇっ!!」
だが、変化は止まらない。
白く一体化したジーンズとシャツは「ワンピース」状に溶けて混ざりあい、一本の筒となり、丈を短くして脚を露出させた。
「あああっ!」
露出した脚にはいつの間にか白いストッキングが履かされていた。
DV男は、今や「白衣の天使」こと看護師さん…旧・看護婦さん…になってしまっていた!
「おまけもつけといたよ」
今では衛生面で敬遠されているナースキャップに、どこからともなく現れたクリップボード、そして何とも暖かそうな紺色のカーディガンまで着せられていた!
もうどこからどう見ても「看護婦さん」である。




