皇法子の場合 04
第七節
「お断りだね」
「瑛子さん!」
「こんな訳の分からん奴らに従う義理はねえよ」
すると、つかつかやってきた人物がす…とすめらぎの隣に腰を落とした。
「難航してます?」
「多少ね」
その人物は全身を真っ白にコーディネートした…年齢不詳の女性だった。
女子高生程度と言えばそういう風にも見えるし、二十代と言われても別に驚かない。
ともあれ、波打つ髪が背中を越えてお尻くらいにまで達している。
そして、全身がフリフリの装飾に彩られており、手首が大きく広がった袖やら、地面を引きずりそうなほど長いスカートなど、何とも浮世離れしたスタイルだ。深窓の令嬢…というか、お嬢さま趣味というか…。
「…あんだお前は」
「…?」
可愛らしく小首を傾げるが、心動かされそうなのは群尾くらいである。
「あたしの用心棒よ」これはすめらぎ。
用心棒といえば、見上げるような大男だの屈強な格闘技の達人といった人間に使う表現にこそ相応しい。少なくとも目の前のお嬢さんには似つかわしくないだろう。
「…つまり、メタモルファイターだと」
「そういうこと」
なるほどそれなら頷ける。
箸…もとい…スプーンより重いものは持ったことが無さそうなこのお嬢さんはその辺のケンカ自慢十人集めて来るよりも戦闘力があるってことだ。
「質問いいですか?」
「ええ」
すめらぎが受けてくれる。
「ボクたちが行動するにあたって情報提供をしていただけると理解していますが」
「そうだね」
「つまりどういうことだよ」
「ボクたちは今まで当ても無く街を流したりして襲われてる女性を助けたり、カツアゲの現場を押さえたりしてきたけど、そういう情報を提供してもらえるってことさ」
第八節
「…いらねえよ」
「瑛子さん。これは受けといた方がいい」
「お前いつもそういうよな」
「間違いなく効率的だよ。それに」
「…何だよ」
群尾がすめらぎ&謎の少女趣味に振り返る。
「いざとなったら助けてくれますよね?」
「出来る限りはね」
「助けなんかいらねえよ」
「普通の乱暴者相手ならそうだろうね。でも、相手もメタモルファイターだったら?」
「…何だと?」
「分かってるじゃない」
「あたしには分からねえよ」
「JKちゃん」
白のお嬢さまは何故か瑛子をそう呼んだ。
「そうなるとねー、互角になっちゃうの~」
のんびりした喋り方だ。
「私たちは言ってみれば私設警察みたいなものよ。社会問題に関心があるとある大富豪の財産を使っての社会貢献ってところね」
「…社会貢献?」
「ええ。世の中、警察力に頼ってたら全く解決しないグレーゾーンの事件だらけだわ。かといって法の整備なんか待っていられない。今この瞬間にも『民事不介入』って法律には何の根拠も無い看板掲げて鼻くそほじりながら温泉旅行のことばかり考えてる不良警官の目の前で不良がいじめられっこを殴り殺してたり、腐った親が子供を窒息させてたりするのよ」
穏やかな話ではなさそうだ。
「ストーカーなんて典型ね。どう考えてもストーキング行為が行われてるのに何度訴えても警察はナシの飛礫。まんまと殺されちゃう。どれだけ隠してもストーカーは相手の居場所を嗅ぎ付ける」
「しかしそれは…」
「実際に犯罪を犯してるのにストーカーは野放し。かと思うと実際にやってもいない痴漢冤罪で人の人生をムチャクチャにする」
「…」
「要するにシステムの問題なわけ。面倒くさい相手は放置、逮捕件数が稼げそうなのは無実だろうとぶち込む。全部自分たちの都合」
「それは言い方が厳し過ぎますよ。警察の皆さんだって一生懸命やってます」
今度はすめらぎが飲んだ。




