皇法子の場合 03
第五節
スマートフォンをばたりと置いて瑛子が割り込んでくる。
「ぜんっぜん話が見えないんだけど」
「あら、やっぱり興味が湧いたのかしら」
「…わけわかんねーっつってんだよ!」
きりりと怖い表情になる法子。
「ちょっとは目上の人と話す時の礼儀をわきまえなさい」
「はぁ?突然現れた訳のわからん女に尽くす礼儀はねえよ」
「話の続きいいですか!?」
強引に割り込む群尾。空気読みマンだ。
「組織…とおっしゃいましたね」
「ええ」
「その組織は学校敷地内に監視カメラや盗聴器を設置したりしてるんですか?」
「必要ならね」
「それは…管理者の許可を取ってですか?」
「取る訳ないでしょうが」
「…ボクの記憶が確かならば違法に収集された証拠は裁判で使えないと思うんですが」
少し考えてからぐいと残りの紅茶を煽る法子。群尾と瑛子は口も付けていない。
「その通り。よくお勉強してるわね」
「だったら…」
「悪いけど、あたしたちは警察だの裁判所だのに頼る気は全く無いから」
「どういうことです?」
「言ったでしょ?社会正義を実現するための組織だって。ウルトラマンとか仮面ライダーみたいなもんよ。ちょっと古いか。あ、どっちも昭和の方ね」
「…まだ分かりません。ボランティアですか?」
じっと群尾の目を見てくる法子。
「報酬はもらってないわ。というかあたしたちは依頼を受けて、報酬を受けて動く組織じゃないのよ」
「勝手に助けてると」
「ご名答。そういうこと」
「大きなお節介だね」
「ある意味そうだね。あなたがレイプ被害の女の子助けてるみたいなもんよ」
第六節
「どうしてそれを?」
「何でだと思う?」
顔に「わかってんでしょ」と書いてある。皇法子と名乗る女。
「…監視してましたね」
「はあぁ!?」
瑛子が勢い込んだ。
「帰ろう!たぁくん!気色悪い」
「待った!」
珍しく大きな声を出す群尾。
「…ボクなら狙撃班を待機させますけど…どうです?」
「あらあら。過激なマンガ読み過ぎよ」
しかし、目が「その通り」と言っている。
「瑛子さん。話を聞いた方がいい」
「あんだと?」
「覚悟はしてたけど…目を付けられたみたいだよ」
「はぁ?」
「理解が速くて助かるわ」
「用件を端的にお願いします。狙われてるのは気分がいいものじゃない」
「被害妄想が甚だしい…と言いたいところだけどお見事。狙撃班はいないけど、この場に来たのは私ひとりじゃないのは確かよ」
「何だよそりゃ」
「ボクらの能力を知ってるなら当然だ」
「そゆこと」
「もしも瑛子さんが本気で暴れたらメタモルファイターでもない限りは瞬時に撲殺される。用心するのは当たり前だろ」
敢えて間合いを取るために目の前のコップに入った水を煽る群尾。
「すめらぎ…さんでしたっけ」
「ええ」
「つまりボクらをスカウトしたいって理解でいいですか?」
「…」
じっと群尾の目を観る美女。凝視すれば目尻の皺を確認することは出来るが…目鼻立ちのくっきりした美人ではある。
「…そうね。そうとも言える」




