皇法子の場合 01
第3章 皇法子の場合
第一節
オープンカフェだった。
「とりあえずお名刺」
「…」
「頂きます」
群尾拓哉が名刺を受取った。
「皇法子」とある。
「失礼ですが何とお読みするんでしょうか?」
「すめらぎ・のりこです。名前負けしてるって言われるわ」
目の前に座っているのは二十代後半から三十くらいに見える美女だ。
背中まである波が掛かった様な髪型が特徴的で、モデルみたいにすらりとして目鼻立ちのくっきりした美人である。
中南米の褐色の美女を思わせるイメージだ。
「そっちの彼女…とりあえずお名前いいかしら?」
「あぁ?」
また彼女が警戒モードに入ったな…と群尾は頭を抱えたかった。隣に座っているのは沢尻瑛子。二人は瑛子のメタモル能力を駆使して人助けをしている。
…出来る範囲で。
「山田花子だよ」
「ちょっと!」
「うるせえ!」
肘をついてむっすりモードである。
「ジェーン・ドゥってわけね」
「いえ、まだ死んでません」
「…これは失礼」
目の前に出された紅茶を、法子だけが口を付ける。
第二節
「…警戒されてるみたいね」
「そりゃな」
今にも噛みつきそうな瑛子。
「あの…用件は何です?」
「あなたは」
「群尾と申します」
「群尾くんは…彼女のマネージャーってところかしら」
「…一応は」
「頼んだ覚えはねえよ」
相当荒れている。こりゃ後で機嫌を直させるのは一苦労だ…と群尾は思った。
「さっきの現場、お見事だったわ。校外で行われてたいじめ現場に踏み込んで下手人三人をフルボッコ!」
瑛子はメタモルファイターなので腕力もまともな人間よりはるかに強い。恐ろしく素早く動くことが出来、格闘をさせても強い。
その上…条件さえ整えば相手を男女問わず年頃の少女に変身させ、女子高生の制服を着せてしまうことが出来るのである。
これまで多くの通報されていないだけの鬼畜男やら、不良大学生レイプサークルなどを成敗してきた。
在野のメタモルファイターには様々なタイプがいるが、瑛子はもっぱら一般人相手に「正義の暴力」を振るう方だった。
他にはメタモルファイトと称してメタモルファイター同士の性転換・女装化させバトルに面白さを見出すタイプもおり、中には己の欲望の為に与えられた力を悪用するタイプもいた。
「ありがとうございます」
「うん。で、ね」
身を乗り出して来る法子。
「あいつらってウチの組織が狙ってた『得物』だったわけ」
「…意味が分かりませんが」
「隠しても駄目よ。あんたがた、彼女の力を正義に使った一種の『義賊』なんでしょ?」




