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ジョー・キングの場合 06


第十五節


 周囲を見渡すシン。

 階下で噴水が吹き上がり、ジャズバンドが演奏を奏でている二階のベランダだ。

 周囲にはひっきりなしに人が行き交っている。

 隣の席では小休止中の観光中のプチギャンブラーがハンバーガーをほおばり、少し離れたところの家族連れがサンドイッチを頬張っている。

「…ここで?」

「そう、ここでだ」

 トンだことになった。

「…あのな、あんたのは知らんが、オレの能力は公衆の面前でやるのには向かん。目立つからな」


 何しろシンの能力は「バニーガール」なのだ。


 グラマーでセクシーな女体に切れ上がったハイレグ、妖艶な網タイツ、(なまめ)かしいハイヒール、挑発的なお尻飾りに濃厚なメイク、兎の耳飾りに巨大なイヤリング、そして胸の谷間に真紅のマニキュア…。

 カフスボタンや蝶ネクタイなど、意図的に男性的な記号を(ちりば)めることで逆に女性性を極限まで引き立たせた「裸よりも恥ずかしい」と言わしめる…ある意味において最も女性的で…ということは男にとっては最も屈辱的な…日常からかけ離れ、浮世離れしたスタイルなのだ。

「そうか。それは楽しみだ」

 知ってか知らずか好きなことを言いやがる。

「チャンプの余裕ってか?…さぞかし自信があるんだろうが、この勝負方法だとあんただって無傷って訳にはいかねえんだぞ」

 公平に確率計算するならば勝率は1/2。

 最終決着が為される段階に於いては恐らくお互いはほぼ完全に女になっていることだろう。どちらが先に鼻の差を振り切ってゴールするかどうかの勝負なのだ。

「キミの方こそもう負ける心配かな?」

「いや…そうじゃねえけど」

「指摘してくれたのはキミだ。シン。私はゲーマーではなくてギャンブラーだとね。負けるリスクが大きければ大きいほど興奮するんだ」

 あっちゃー…と思った。

 そうだった。ギャンブラーってのはそういう人種だったのだ。

「せめて能力を教えてくれんか」

「断る。初見の相手とどう戦うかも醍醐味だろ?」

 それは確かにそうなのだ。ただこの場合はちと条件が特殊すぎる。

 シンもメタモルファイトの経験はある。

 相手はセーラー服だのブレザーだのといった「制服」系が多かった。

 どこにでもいる女子高生…という体で、それこそありとあらゆる場面で食らってもそれほど目立つまい。建物の中だろうがエレベーターの中だろうが電車の中だろうが…。

 まあ、日本なら制服姿の女子高生などどこにでも溢れているし、観光地の歓楽街を歩いていてもそれほど目立たないが、アメリカで日本の女子高生制服スタイルは目立つことは目立つだろう。だが、ギリギリ普段着で押し通せなくもない。


 しかし、バニーガールはそういう訳にはいかない。


 ありとあらゆる場面で目立ちまくる。それこそ生粋の女性相手に掛けたとしても凄まじい羞恥プレイだ。ましてやそれを男相手に仕掛けるのだから…。

 この能力は目立ちすぎるので使いにくいのだ。

 そういう意味では制服系や普段着系のメタモルファイターが羨ましくはある。


「提案がある」



第十六節


「…今度は何だよ?終わったらそのままストリップでもやれってのか」

「悪くないアイデアだが…そうじゃない」

 指でテーブルを指すジョー。

「…?何だよ」

「段階を経ようじゃないか」

「段階?」

「キミの能力がどうあれ、下から順に上に向かって上がるようにお互いを変化させるんだ」

「…なんだって?」

「肉体の変化と服装の変化を同時にだ」

 少し考えるシン。

「…聞いたことはあるが、オレはそういう風に使ったことが無い」

「心配いらん。これもお互いに同意してさえいれば可能なんだ」

 そんな話は聞いたことが無い。

「私自身が何度も試してる。心配するな」

 その心配をしてる訳じゃないんだが…。

「テーブルの下だから目立たないって?」

「多少はな」

「…ジョー…分かってると思うがそいつぁキメラだぞ」

「ああ」

 キメラとはファンタジーに登場する「合成獣」のことで、転じて動物実験などで複数の動物を繋ぎ合わせた状態を指したりもする。

「上半身は男、下半身は女…みたいなことになるぞ」

「そのつもりだが?」

「経験あると言ったな」

「ああ」

「なら分かってるだろう。メタモルファイトは普通は相手の肉体を完全に女にしてから服装を変える」

「そうだな」

「…下から上への部分変身と女装を並行させるってことは…人はアイデンティティを頭部で認識するもんだ」

「学術的知見をどうも」

「分からんのか?通常の変身なら「男装した女」「女装した女」が出現するだけだが、そのやり方だと少なくとも見た目は「女装した男」にしか見えんものが出現することになる」

「…そのつもりだが」

「本当に経験者か?こう言っちゃ何だが…あれほど気色の悪いものは無いぞ」

「かもな」

 肉体まで女性化しているかどうかなど、外から分かる訳が無い。仮にそこまでくっきり分かるということは元がかなりの程度男性的ということであり、それはキメラ状態をより鮮明にする。

「それこそ何らかのスカート系衣装だった場合、下半身だけ女にしてスカート履かせた状態だったとしても普通は「男がスカート履いてる状態」にしか見えん。分かってるのか?」

「…ああ」


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