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倉秋健人の場合 48

第九十五節


「…あらそう。それなら余計に良心の呵責に悩まんですむわ」


 元々全く感じている様には見えなかったが、そこは黙っておく。


「じゃ、とりあえず着替えようか」


 真琴の制裁はまだ終わっていなかった。


「持ってきた衣装の中にあんでしょ?過激な衣装が」

「何をするつもりだ?」

「万が一のことも考えて女装してもらうの」


~約30分後~


「あらあらセクシーだわー」


 全く感情のこもっていない声で言う真琴。


「…」


 頬どころか耳まで真っ赤になってもじもじと股間部分を覆う様に立ち尽くす元・倉秋と元・栗原。

 彼ら…いや、彼女ら…は倉秋が黒、栗原が赤の「バニー・ガール」の衣装に身を包んでいた。


「…確かにな」


 バスト・ウェスト・ヒップとメリハリの効いたセクシーボディ…というには若干発育が足らない若々しい女子高生の体型を毒々しいほどに妖艶なコスチュームに押し包んでいるのが何とも背徳的だ。

 耳をかたどった髪飾り…バニーカチューシャや同色のハイヒールなどのバニー付属物を身に付けさせられているのは当然として、ちりちりと重いイヤリングや濃いめのメイクもばっちり決まっている。


「ま、あたしのメタモル能力は強烈だからまず解けないんだけど、仮に解けても…かなり痛々しいことになるわね。解けんけど」


 確かに今この瞬間に元の男の身体に戻ったらその悲惨さは武林の非ではないだろう。


「じゃあ、このまま都内クルーズにしゅっぱーつ!」

「…はあ?この格好で表に出すのか!?」

「そらそーでしょうが。ハイヒール大変だと思うけど…ここ秋葉原からスタートして中央線沿線横切って新宿までゴー!」


 マスカラが剥がれ落ちそうに眼を見開く黒バニー(倉秋)。


「ちなみにスマホも何も所持品も所持金も一切無しで、徒歩で言ってもらいマース」

「…まこ…と…」

「もうそろそろ暗くなってきたから、たどり着くのは明日かな?真夜中にそんなカッコで歩いてたら職務質問とか受けるかもしれないし、怖い思いもするかもしれないけど…まあ自己責任で」


 はあはあと動機が激しくなっている赤バニー(栗原)。


「あ、言うまでも無いけどもうあんたがたメタモル能力とか使えないから。素早くも動けないし怪力も戦闘能力も無し、ましてや自衛のために相手を性転換する能力も無いし、メタモルファイトも出来ないから」



第九十六節


「あ?おトイレ?公衆トイレがあんでしょ。知らんけどどっかに。ああそうそう、確かその恰好って大きいのも小さいのも一旦ほぼ全裸にならないと用を足せないらしいから…まあ頑張って」


 恐ろしいことを次々につるべ打ちにする真琴。


「新宿歌舞伎町を隅から隅まで歩いたらそこからは解放してあげる。それじゃレッツゴー!」

「っ!…んーっ!!んんんんんーーーーっ!?!?」


 物言わぬ絶叫を(多分)しながらしゃなりしゃなりと歩いていくバニーガール二人組。

 歩き方まで一直線のラインを両足で踏みながら歩くやりかたなので、お尻がぷるっぷるに震える。

 真後ろから見送っていると、それぞれのお尻の頂点辺りから(かかと)のラインまでまっすぐに走っている「バックシーム」と呼ばれるラインが、ただでさえ(なまめ)かしい網タイツを余計にセクシーに魅せている。


 何やら出入り口近くのメイド喫茶部分で「きゃー」とかの悲鳴が聞こえた気がするが…気にしないことにしよう。


「…ということで、悪いんだけど後始末頼んでいい?」


 真琴が小さくなっている鴫野に振り返った。


「あ…あの…」

「営業行ったっきり大の男が二人行方不明ってんじゃ体裁が良くないでしょ?」


 体裁がどうとかのレベルじゃない気がするが。


「衣装も派手に使ったし…損害も偉いことになってるけど、全部あの二人がやらかして逃げたことにすればいいからさ」


 実際問題そうするしかないだろう。残されたのは真琴の能力で生成され、バニーガールに着替える関係で脱ぎ捨てられたセーラー服…下着まで込み…一式くらいのものだ。ちなみに綺麗に畳ませてある。


「あの…」


 相変わらずもじもじしている鴫野。元々内気なのだろう。


「何?不満なら一戦お相手しようか?」

「いいえ!無理です!」


 そりゃそうだ。目の前で公開処刑同然のセクシー残酷ショーを見せられた後である。


「あの…先ほどの契約の件ですけど…よろしいでしょうか?」



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