倉秋健人の場合 45
第八十九節
「そういうことだ。悪く思わんでくれ」
メガネを直しながらゆっくりと立ちあがってくる倉秋。
「お前ら…どこまで…」
「正々堂々と勝負なんぞバカのやることだ。お前らも本気で戦うなら条件闘争に9割の力を入れんか」
二人から視線を逸らさずに綾小路に声を掛ける真琴。
「綾小路さん、この2人とあたしの2対1ってことで本当にいいのね?」
「…残念ですが…紙を提示された時点で見る様に促すのは越権行為でした」
唇を噛んでいる。
「そらそーですって。あたしがいいたいのはこの勝負確かに成立してんのかどうか、そこなの」
「…ええ。しています」
「ふん…ならもう大丈夫だね」
「行くぞおらぁ!」
一瞬身を低くした栗原が凄まじい勢いで拳を前に突き出しながら飛び込んできた。これが俗称「絶招歩法」である。といってもこれは技名ではなく、一般名詞だ。要するに「物凄いステップ」という意味でしかないのだが、日本人はそれを「技名」「奥義名」だと思い込んでしまった例である。
真琴は半身になってこれを交わしに掛かる。
同時に倉秋が周囲を回り込む様にダッシュした。
挟み込もうという肚なのだろう。
…だが、この二人の見せ場はここまでだった。
第九十節
「で?ごめんなさいは?」
「…」
目の前にはもじもじと恥ずかしそうに縮こまる二人のセーラー服姿の女子高生がいた。
「黙ってんじゃない」
「きゃあああああああーっ!」
二人のスカートが同時にめくれあがり、健康的な脚線美と人肌にあたたまった純白のスリップ、小さなリボンの装飾がついたパンティがモロ見えになってしまう。
…目のやり場に困る現場だ。
はっきり言ってこの二人では、二人掛かりでも真琴の敵ではなかった。
「じゃー余り気は進まないけどやってみるかー」
そう言って哀れ女子高生と成り果てている栗原のおっぱいをセーラー服の上から鷲掴みにする。
「あ…よせ…やめ…」
悩ましい表情でうめく栗原(セーラー服)。
「ふん…まあ、今日のところはこれくらいで勘弁してやるわ」
年季の入ったメタモルファイターともなると、女体化・女装「慣れ」はする。個人差はあるにしてもだ。
だから変身させられただけで精神的に陥落することは余り無い。
「ギブアップは受け付けないって話だから最後までやるしかないんじゃねえの?」
橋場が口をはさんだ。
可憐な女子高生たちが恐ろしい表情で橋場を睨んでくる。
「…何だよ。ガチはそっちが言いだしたことだろうが」
本当に「いさぎよさ」から最もかけ離れた連中だ。どんなことをしてでも勝ちに来て、仮に負けても意地でも認めない。
「じゃあ、可愛い女子高生同士でいちゃいちゃしてもらおうかしら」
「…っ!?」
これで女にした男を手籠めにする趣味を持つサディスト気味の男ならそれこそ「美味しくいただく」ところなんだろうが、幸か不幸か真琴は女である。
ならば「精神的に堕ちる」までを相手に任せるのはなかなかクレバーだ。




