ジョー・キングの場合 05
第十三節
「花札まで売ってるたあ恐れ入った」
「タロウ(タロット)カードやククカード(*タロットやトランプの元になったと言われているカード)もある。ダイスも、どの種類でも揃ってる。「チンチロリン」も可能だ」
「参ったなこりゃ…あんたたぶんおいらより日本のギャンブルゲームに詳しいよ」
「結局どんな方法だ」
「あくまで提案だが…」
シンが先ほどのデッキに抜いていたキングを混ぜてシャッフルする。
「お互いに色を宣言する」
「色?」
「そう、スート(マーク)じゃなくて、色だ。黒か赤か」
「黒か赤だな」
「どっちでも好きに呼んでくれ。でもって、めくれたカードの色のプレイヤーは相手のメタモル能力を喰らう」
「…何?」
テーブルに緊張が走った。
「単純でいいだろ?」
「喰らう…とは?」
「そのまんまの意味さ。相手を女にし、能力の衣装を着せる」
「…このルールだとシャッフルが終わってデッキ(山札)を積んだ瞬間に勝負が決まっていることになる」
一呼吸置くシン。
「仮にどちらかの色が10枚めくれた瞬間にそっちのプレイヤーが勝ち…とかならそうだろうな。けどこれはメタモルファイトだ。どれだけ相手のメタモル能力を精神力で耐えきってこらえて見せるかは…プレイヤーの力量なんじゃないかね?」
頭をかくんと前に倒して震えているジョー。
「…」
シンは怒らせてしまったか…と鼻の頭を掻いた。仮にそうだとしてもまだ試合開始を確約した訳じゃない。振り切って逃げるだけだ。
「…素晴らしい…」
「何だって?」
「こんな素晴らしいルールを提唱されたのは初めてだ」
下手すると瞳がうるうるしている様にも見える。そんなに感動したのか。
「是非対戦させてくれ。いや、もう逃さない。絶対に対戦してもらう」
「そ…そうか…」
少し気おされているシン。
元々シンは正々堂々と戦う積りだった。メタモルファイトにしたのは、負けても一時的に女にされて女装させられるだけだと分かっているからだ。大金掛けるのはそもそも無理なのだ。
「こちらからもルールを提唱したい」
「あ…ああ」
今の言い方だと半ば同意してるんだが…まあいい。元々やるつもりだったからな。
「その方法論だと変身決着ということだよな?」
「ま…そうかな」
変身決着とは、どちらかが相手を完全に性転換&女装させきった時点でさせたプレイヤーの勝ちとするルールである。メタモルファイトは「相手の気持ちを折る」ゲームなので、本来はこの段階ではファイトは終わらないのだが、双方の合意があれば終了条件をあらかじめ設定することが出来る。
第十四節
「どの段階をもって「変身完了」と見做すんだ?」
「…」
確かにそれは大きな問題である。
「仮に…仮にだが、私が往生際が悪いプレイヤーだったとして、全身変わってるのにあくまでも認めない!と言い張ってたとしたら?」
「…ふん…じゃあこうしよう。まずは見た目…物理的に全て変える」
「ふんふん」
「衣装…これも全部変える。アクセサリーやメイク、小道具などもあればそれも」
「ふんふん」
「次に仕草」
「仕草?」
「…オタクらやらんの?オレたちはメタモルファイトする際には相手の仕草を女らしく勝手に無意識に振る舞う様に操作するんだが」
「wonderful…」
「最後に口調」
「口調?」
「英語には無いから分かってもらいにくいだろうが、少なくともウチの国じゃあ男と女で言葉遣いが違うんだよ」
「何だって?」
「『女言葉』とかって言ってな。それも完全に操作する。どれだけ男として普通に喋ろうとしても勝手に女言葉が出て来る」
「oh my god…」
「この前提が整った段階で、更にあと一押しすれば終わりだ」
「…最後の最後だけはカードがめくれた瞬間に決着ってことか」
「それくらいはゲームっぽくていいだろ」
「ジョーカーは?」
「…ラスベガスじゃあジョーカーは使わないと聞いたが」
ラスベガスで行われているブラック・ジャックやポーカーなどにおいてはジョーカーは除外することになっている。
「このゲームならありだろ」
「…なら、双方が攻撃だ」
考え込んでいるジョー。
「不満か?」
「全く不満は無い。それでいい」
大きく深呼吸をするシン。
「なら始めよう。ポーカー・ルームとかあるんだろ?」
「いや…ここでいい」




