倉秋健人の場合 40
第七十九節
メタモルファイター同士、「女にされてのスカートめくられ」は挨拶みたいなもんだ。特に仲間内では変身そのものが物珍しいころはよくやる。
だが、肉体まで女に変わってしまっているためにある意味恥ずかしさも突き抜けてしまっているところはある。
だが、今やられたのは「女装させられた状態」でのスカートめくり…いやスカートめくられである。
真琴が動いた。
咄嗟に斎賀と栗原の間に割って入る。
「…邪魔すんな」
「これ以上やる気?」
「…」
流石の斎賀もこれには精神的ショックが大きく、その場にうずくまってしまう。
今のこの服装はメタモルファイトの結果とは少し違うので瞬時に解除して男の服装に戻すことが出来ない。
幸か不幸か先ほどの衣装交換の際、下着までは交換しなかったためめくり上げられたスカートから覗いたのは白いブリーフだけだった。
とはいえ、「男の身体でスカートをめくられた」ことには変わりがない。
「栗原さん!言いましたよね。報復的なメタモル能力の行使は禁止だと!」
綾小路がいきり立つ。それはそうだろう。公然と立会人の立場を侮辱したのだ。
「俺じゃありませ~ん、こいつで~す」
「そんな!」
男子高校生コスプレ状態になっている鴫野が泣きそうになっている。
「そんな言い訳は通りませんよ。あなたが脅迫してやらせたでしょ」
「あ、すいあせんっす」
まるで反省の色が見られない。
「じゃあこれで2試合目は正式に終わりってことでいいっすか?」
「まずはそうですね」
「鴫野、それじゃあ相手の能力を振りほどけよ」
斎賀の顔色が変わった。
「待って!ちょっと待ってください!」
「え?」
第八十節
返事を聞く前に何も考えずに鴫野は自らに掛けられた斎賀の能力を解除していた。
鴫野の場合女 → 女の変身なので、肉体には変化が殆ど無い。
だが…大事なことを忘れていた。
「あ…あああああっ!」
再び立ち上がった斎賀の肉体を縛り付けていた女子高生の制服がぐにぐにと変形している。
「あっ!ご、ゴメンなさいっ!」
必死に鴫野が言うがもう遅かった。
せめてもの抵抗とばかりにがに股気味に開いた両脚が外側から「がっ!」と掴まれて無理やり両脚が接触せんばかりに近づけられる。
それは…プリーツスカートがタイトスカートへと変形していくことで起こっていたのだ。
「うわ…やめ…やめてやめてええっ!」
抵抗虚しく「女子高生の制服」は「紺のOLのスカートスーツ」へと変貌を遂げていた。
斎賀が仕掛けたメタモル能力が戻ったのだから当然だ。
そして斎賀と鴫野は現在、お互いの衣類を好感した形となっている。男子高校生とOLが…だ。結果は火を見るより明らかだ。
ビリ…と音がしてスカートの一部に亀裂が入ったらしい。
斎賀の体格とはいえ、小柄な成人女性とサイズが全く同じという訳には到底いかなかった。
ブラウスは乳房も無いのにパンパンに張っており、肩には細い体格がめり込み、うっ血しそうだ。
「こっちこい!」
真っ黒なドレス姿のままスカートを引きずりつつ「無理やりOL女装させられている」哀れな男子高校生を引きずって行く花嫁姿の橋場。
「真琴!あと頼む」
「了解!」
先ほども武林を臨時に着替えさせた密室のトレーニングルームに駆け込む。
目の前をしゅるしゅると衣擦れの音とかぐわしい芳香を振りまきながら通過する花嫁を見て栗原がじっとしている訳が無い。
いざ部屋に突入するところまで至ったところで「ぐん!」と目の前の地面を引きずって動くトレーンを勢いよく踏んづけた。
「きゃっ!」
花嫁の様に小さな悲鳴を上げて黒ドレスが倒れ込んだ。
「ひゃーっはっはっはー!」




