倉秋健人の場合 39
第七十七節
「ここは大人の対応をしましょう。ボクたちメタモルファイターにとって女性ものの本物の衣装ってのは宝の山です。それを供給してくれる相手なんですから」
うんうん、と勝手に頷いている倉秋と栗原。
「そちらもお忙しいでしょうから、ボクらはこれで勝負は終わりでいいです」
「そうですか」
「ただ、先ほどの武林さんへの暴行…あれは許されません」
「あんだと?」
栗原がすごんだ。
「あなたが首謀者でしたね」
「だったら何だよ」
背が高く、メタモルファイトを勝利で終えたこともあって男の姿のままの栗原。
半ば自主的に衣装交換を持ちかけ、望んで女子高生の制服に身を包んでいる斎賀を小ばかにしたように見下ろして来る。
「幸い大きな怪我こそしていないようですが、ああいう使い方は悪質です」
「負ける方が悪いだろうが」
「ボクたちがやってるのは殺し合いでも辱め合いでもありません。メタモルファイトです。ルールのあるスポーツなんですよ。本気でデスマッチやりたいならそういう相手を探してください」
「かーわいいそんな恰好で言われても説得力ねえなあ。スカートは履き心地いいか?どうなんだ?ん?」
「…いいですよ。快適です」
スカートをつまんで横に広げたりこそしなかったがよどみなく答える斎賀。可愛い。
「おい鴫野!」
突然不思議の国のアリスコスプレ状態の女子社員を怒鳴る栗原。ビクッ!となる。
「今すぐ変身戻せ」
「えっ!?でも」
「いいから戻せやあ!!!」
アリスの可愛らしいコスチュームの胸倉を掴んで釣り上げる栗原。
「やめろお!」
「ゴメン!」
第七十八節
斎賀が身体に違和感を感じる。
「う…うわああああああっ!」
ミキミキと鳴る斎賀の全身。
すると、同時進行で離れたところに立っていた気の弱そうな小娘が身に着けている不思議の国のアリス風衣装が、見る見るうちに変形していく。
「あ…」
たちまちそこにはダブダブの男子高校生が着る様なブレザーがあった。
小柄でメリハリの小さな体型とはいえ、やはり女性なので「男装」はいかにも無理して背伸びした女と言う風情である。
「ぐあああああああーっ!」
斎賀が苦しんでいる。
見た目の変化はなさそう・・だが、違う。
その服…女子高生の制服…の下の肉体が元の男子高校生のそれに戻って行きつつあったのだ!
あちこちがパンパンに張りつめる。
幸い、それほど筋肉質でも大柄でもなかったため、ギリギリで踏みとどまりはしたのだが…そこには、着ている服だけが女物になった…「女子高生の制服姿の男子高生」が完成してしまっていた。
「あ…これは…」
「ひゃーっはっはっはー!かーわいいぜーえ!」
次の瞬間、瞬時に目の前にかっ飛んで来た栗原が、哀れ「女子高生女装」…今度と言う今度は正真正銘の…姿となった斎賀の顔面に向かってパンチを繰り出した。
そのパンチは普通のパンチではなかった。
じゃんけんでいう「ちょき」…そう、「目突き」攻撃だったのだ。
流石の斎賀もメガネつきとはいえ咄嗟に身体を逸らして顔面をガードする。
次の瞬間だった。
「ぶわり」と言う音がして、下半身が涼しくなる。
「!?…わああああああーっ!」
一瞬遅れてショックがやってきた。
なんと、思いっきりスカートをめくられたのだ!




