倉秋健人の場合 27
第五十三節
真琴だった。
「どちらかが触ったらその時点でそのトライは仕切り直しなんだよね?」
「…そう考えてます」
「距離が離れた段階で再開するんでしょ?」
「ええ」
「どちらかがしがみついて離れない場合は?」
「…ジャッジに引きはがしてもらいましょう。それこそボクシングのクリンチみたいにね…いいでしょ?」
「お望みとあれば」
これまで戦った相手の衣装…なるべく変なのでいうと…制服系はまあ何とかなる。スクール水着にお嬢さま学校の制服…一番変わったのだとチャイナドレスか。
かなり激しく動き回るから「THD」の内「タイトスカート・ハイヒール」をやられるとかなり辛いが、相手もこちらに近づかないと触れないから待ってれば相手が来ることになる。
元々脚の運動性は余り関係が無い。それでもタイトスカートが辛いことには変わりがないが…。
衣装の一部でもいいってのはこちらには朗報かもしれん。こちとら膝下丈のセーラースカートだ。
動きやすいのは間違いないがかなり大きく広がる。余り想定できんが、後ろから追いかける形になってたりしたら一方的にスカートの裾を触ってポイント出来る。
ジャッジがいるからその辺りの判定には心配が無い。
スチュワーデス…CA制服…もかなり動きにくいのは間違いないが、身体にかなりぴったりフィットするからセーラー服よりは「スキ」が少ない。
どうやらこのオヤジ、こちらがどうせこの頃のガキの制服だと思ってタカをくくってるな?まさかクラシックなロングスカートのセーラー服だとは知るまい。
つまり、変身後の攻防でも決して不利にはならない。必然的にこちらが相手に掛ける状態のスカートがかなり長いからだ。
確かに相手の衣装も知らずに条件戦を受けるのは無謀だが、変身が絶対条件じゃない。さっさとタッチ終わって終わらせてしまえばいいだけだ。
つまり「そもそも変身後を想定しなければいい」のである。
「分かった。やろう」
「そうこなくっちゃ」
斎賀(女子校生)が大声を上げた。
「すいません!」
面倒臭そうに倉秋が答える。
「…なんですか」
第五十四節
「どちらかがラウンドを取った段階で一旦インターバルを取らせてください」
「インターバル?」
「休憩ってことです」
今度は倉秋が考えている。
「休憩ねえ」
「1分あればいいです」
「いいですよ。インターバル」
「…橋場さん」
「オレは構わん」
恐らく倉秋と考えていることは同じだ。
下手に相手に考える時間を与えれば対応を練られてしまう。その隙を与えずに一気に勝ちたい。だが、それは相手も同じだろう。
「ならよろしいですか?」
綾小路が促した。
「中央、お互いの手が届く場所から始めましょう。タッチ判定を目視するのは立会人としては気を遣いますがね」
「よろしく」
「じゃあ、手を繋いだ状態から始めましょう。最初のラウンドだけはね。次からは離れてスタートです」
「…はあ」
バカ正直に右手を出す橋場。
お互いに握手をする様な形となる。
「では試合…始め!」
次の瞬間だった!
橋場は手を離して間合いを取るか、少なくとも相手の手が片方ふさがっていることを利用して顔面へのパンチでも食らわせようかと考えていたのだが、あらゆる対応の候補の中で全く予想していないアクションが来た!
ぐいい!と手前に引っ張られたのだ!




