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倉秋健人の場合 23


第四十五節


 メタモルファイター同士においては、それこそお互いに約束し合った段取りでもない限りはセクハラ発言などありえない。

 何しろ「お互い様」「明日は我が身」なのである。


「昨日のあなたと同じくらいには良好ですよ」

「へっ!格好つけんじゃねえよこの変態が!」


 綾小路がギラリと睨みを効かせる。


「それ以上の不規則発言は慎んでください」

「何だと?」

「この上問題発言があればそちらのチームの判定負けとさせて頂くことになります」

「控えろ栗原」


 やっと倉秋が制止する。

 へっ!と悪態をつきながらとりあえず黙る栗原。だがニヤニヤが止まっていない。


「それじゃこちらのターンですね」

「え…」

「お忘れですか?勝者は敗者の着替えを強要できるんです」

「あ…」


 何故か青ざめている女子高生スタイルに変えられた沙耶。まあ、年相応に可愛い。


「そんなに怖がらないでくださいよ。今まで散々男に恥ずかしい恰好をさせてきたんでしょ?しかも簡単には戻れない様に」

「どういうことだよ」


 橋場が口を挟んだ。


「ひでちゃん。メタモルファイトって基本はお互い様だし、能力を解けば服も戻るけど勝者が敗者の着替えを完了させちゃってるど、迂闊うかつに戻らされるとさっきのアキラっちみたいなことになっちゃうでしょ?」

「…そうだな」

「つまり、「元に戻らされたくなかったらいうことを聞け」が通る訳だ」

「…こいつら…」

「普通は『性転換して女にするぞ!』とか『女装させるぞ!』が脅し文句になるけど、『元に戻しちゃうぞ』ってのを脅しに使うなんてね」


 …確かにこれは盲点だった。もうないと思ってたシステムの死角である。

 最も、これは豊富な着替え衣装を準備出来るこいつらならではともいえる。普通の男…それこそ橋場みたいな一介の男子高校生…は女物の服なんぞ持っていないからな。



第四十六節


「指定する前に一つだけ質問させてください」

「…はい」

「今まであなたはかなりのメタモルファイトを無敗ということでしたね?」

「…ええ」

「その相手はみんな男性ですか?」


 質問しているのが絵本の中から抜け出してきたみたいな美少女、不思議の国のアリスなので何ともシュールな絵面だ。


「…はい」

「かなり色んな衣装を強要したでしょ?」

「…はい」


 やっぱりだ。

 女にそんな力を持たせるもんだから、男を着せ替え人形にして楽しんでやがる。


「最後に一つだけ」

「…はい」

「その能力、メタモルファイター相手以外にも…自衛のために一般人にも使いましたよね?」

「…」


 かなり長い沈黙。


「…はい」


 なるほど。

 橋場や斎賀たちは、仮に自衛能力として相手を女にし、女子高生スタイルにさせることはあったが、その後の着替えということになると手が出せない領域だ。

 だが、生まれつきの女として生きてきたこの鴫野となると、自前…自分の女物がある。

 これを着せ替えていたぶることは可能な訳だ。

 ついさっきまで男だった存在に自分の服を着せることに抵抗が無いのならば…だが。


「まあ、これまでどういう風に使ってきたのかはいいです。今回の勝負の決着を付けましょう」

「斎賀さん…お分かりかと思いますが、気持ちは分かりますけど報復的な着替え強制はご遠慮くださいね」

「そんなことしませんよ。そうですね…この恰好をしてください」


 しばし沈黙。


「え?」

「この衣装ですよ。不思議の国のアリス風ワンピース。別にいやらしくないでしょ?」


 バチッ!とウィンクするアリス。調子に乗り過ぎだ。



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