倉秋健人の場合 20
第三十九節
「月賦は認めてくださいますか?ボクたち学生でお金がありませんので」
「これは困りました。カード支払いも受け付けておりますが、基本は現金払いです。ポイントカードという手もありますがね」
「月賦は受けられないと」
「ただ…割のいいアルバイトをご紹介することは出来ます」
「しつもーん!」
やっと真琴が割り込んできた。
「それって、“若い女の子”がやるようなバイトってことですか?」
「なっ!!」
しばし沈黙。
「…きっとあなたが想像している様なものとは違いますよ」
「じゃあ、お酌する仕事かな?」
「貴様…敢えて無茶なメタモルファイトを仕掛けて無理やり着替えさせて衣装を破損させて大金を巻き上げ、払えなきゃ『身体で支払え』ってのかよ!この悪徳業者が!」
倉秋がははははははは!と呵呵大笑し始めた。
「誤解ですよ誤解。それじゃ我々は人身売買の元締めみたいじゃないですか」
「違うってのかよ」
「…いいですか?もしも本当に借金を背負わせるつもりなら「10万円」なんてケチな金額吹っかけませんよ効率が悪い。それにバイトというのもキャバクラです。風俗じゃありません」
「どう違うんだよ」
「橋場さん!」
手を引っ張って止める斎賀。どうやらこいつには違いが分かっているらしい。
「酔っ払いに尻を撫でられたりはするかもしれませんが、愛想笑いして一緒に飲んでいればハンバーガー屋のアルバイトの数倍のお金が稼げます。悪くありませんよ?」
「冗談じゃねえよ!馬鹿馬鹿しい。大体オレたち未成年だぞ!」
「ひでちゃん、相手を二十歳以上にする能力食らったらどうよ?」
「あ…」
確かにその場合、肉体は二十代の女にされることになる。
「…現金決済ですか」
「これは個人戦の結果です。借を追うのは先ほどの彼です」
「それはカンベンして上げてくれませんか」
「そう言われましてもねえ」
「大体女性として接客なんて無理です」
「お望みならそれも操っておいてあげますが?」
なんてことだ。途轍もなくたちが悪いのに引っ掛かってしまった。
第四十節
「…最後に清算でいいですか?」
「結構です。ただし、私たちはお金を賭けて戦ってる訳じゃないことをお忘れなく」
「…買っても負けてもとりっぱぐれが無いと?」
「ゴールドラッシュの時にお金持ちになったのは金を掘り当てた人間じゃありません。金を掘りに来た人間に道具を売った人間です」
「知ってます。予め市場から買い占めて置いたそれを数倍の値段を付けても飛ぶようにツルハシやスコップが売れたんですよね」
「メタモルファイトそのものに賭けるのは賢い人間のやる事じゃない。周囲でお零れに預かるのが正解です」
しばし睨みあい。
「じゃあ、あたしが中堅でいいですか?」
さっきからニコニコとあちこちをサポートしている若い女である。
「…あなたもメタモルファイター…なんですか?」
「ええ一応」にこにこ。
「…楽しそうですね」
「はい!」
名刺を差し出して来る女。
丁寧にも受け取る斎賀。
そこには「鴫野沙耶」とある。
「…何て読むんです?」
「鴫野沙耶と申します」
「…お名前は分かりました。決着方法は?」
「変身決着でいいんじゃないでしょうか?」
「相手が能力である衣装を着た段階で終了と」
「はい!」
「…お分かりでしょうけど、その条件決着で男女が戦った場合、男が有利になりますけど」
「はい!」
少し離れたところ。
「…つまり、生まれつきの女である相手を性転換させる行程がいらないってことだね」
「まあ、そういうことだな」
「始める前に確認したいんですが…」
「はい!何でしょう!」
気持ち悪いくらいにニコニコはきはきとしている娘だ。新社会人くらいか。




