倉秋健人の場合 17
第三十三節
「レンタルロッカーって何だよ」橋場。
「…ボクも見たことは無いんですけど、女装趣味の方々は自宅に女装グッズを持ち帰れないので、クラブ内に有料でロッカーを借りてそこにしまって帰るんだそうです」
「その様ですね」
「レンタルロッカーは無いと」
「はい。お買い上げ頂いた下着類はご自身で保管されて下さい」
「出来る訳がねえだろうが!」
そんなもの持って帰って部屋に放置しておけというのか。
「廃棄はお願いできるんですか?」
「こちらで分類用の袋を準備しますので、入れて頂くところまでお願いできればあとはしかるべき処理をいたします」
「…?つまりどういうことだよ」
「捨ててくれるってことです」
「は?」
「あの高級なブラもパンティもスリップも…ストッキングも、使い捨てで毎回負担しろと」
「…いえいえ。そうは申しておりません」
「でも、そう言ってるのと同じですよね?」
背後でニコニコしている女。何て奴らだ。
テントの中。
まるで自分の手足ではないみたいに…ある意味そうだが…手際よく黒ストッキングをくるくると手の中に納まるほどに筒状に丸めると、それぞれを脚に通していく。
「あ…」
突っ込んだ先から空中に出現するかの様に形成されて行く艶かしい黒の脚線美…。
両脚とも終わると、ぐいぐいとガニ股みたいな格好悪い挙動で股間に押し付ける。
女ってこうやってストッキング履くのか…。
そこにはブラジャーと黒ストッキングの中に灰色に押しつぶされた白いパンティという何ともはやな格好の女があった。
「ん…」
身体が勝手に前傾し、床に置かれていた純白のスリップを取り上げる。
また…これを…。
考える間もなく身体が前掲し、うっすらと肌色が透ける脚が上がると、ひんやりとした感触の中へと差し入れられて行く。
「ふあ…」
第三十四節
しゅるしゅるしゅるっ!とシルクの衣擦れの音がし、くすぐったくもストッキングの上から乙女の柔肌を撫でていく。
「ん…ぁ…ぁぁっ!」
やがてその柔らかくもすべすべの官能的な肌触りはストッキングに包まれた丸いお尻を撫で上げ続けながら、胴回りを嬲り、背中とアンダーバストを包み込んでいく。
「あ…」
やっとブラジャーと同じ様に肩ひもとして引っ掛けられ、落ち着いた。
その時だった!
テントの外。
「もうそろそろいいでしょ」
栗原が言うと同時にピン!と指を鳴らした。
テントのそばにいつの間にか立っていた女が、一斉に幕を下ろした!
「っ!!!!」
「きゃーーいやーー」
また楽しそうに悲鳴を上げる女。にっこにこの笑顔である。最もさっきからずっとそういう顔だが。
そこには膝上の丈のスリップから黒ストッキングを覗かせているだけのあられもない武林の姿があった。
もう元の硬派の男の面影などみじんも無い。
下着姿の着替え中の女…でしかない。
「さ、続きだ」
武林の動きは淡々と続いた。
どうやら本人は精神的に抵抗しているらしいのだが、外からは分からなかった。
ブラウスを着、スカートをずり上げ、ベストを着、そしてハイヒールを履き、帽子をかぶる。
見る見るうちに「エレベーターガール」が出来上がって行く。
なるほど我々メタモルファイターの能力はじわじわと身体を女にし、服を女物にしていく能力であるが、この「精神を操って無理やり着せる」というのもまた、別の形で「女にする」ルートだな…と思わされる出来事だった。
どうやら仕草まで操られているらしく、両脚を綺麗に揃えて楚々と動き、鏡の前まで移動する武林。
「武林お前…」
気の毒過ぎてこれ以上声を掛けられない。




