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倉秋健人の場合 14


第二十七節


「…倉秋さん…でしたっけ」

「ええ」

「そちらのチーム全員拳法使いとかってことないですよね?」

「まさか。私は道場通いの経験も無いサラリーマンですよ」

「じゃあ、2戦目はボクが…」


 前に進み出ようとした斎賀を栗原が手で制止する。


「はいストップ!」

「…?何です」

「終わったのはメタモルファイトの部分だけです」

「何の話だ」これは橋場。

「言ったでしょ?ペナルティですよ。負けたプレイヤーは勝ったプレイヤーの指示した服を着なくてはならないってね」


 周囲に戦慄が走った。


「う…うおおおおおっ!」


 可愛らしい色合いの制服に身を包んだ可憐な乙女に似つかわしくない声を上げながら武林…の変わり果てた姿…が何やら抵抗している。


「…まさか…」


 斎賀が栗原を睨む。


「そう。メタモルファイターは相手の精神を操れます。ある程度はね。試合に負けたんだからこれくらいは当然でしょ」

「しかし、メタモルファイター同士、相手の意向を完全に無視したりは出来ないはず!」

「そりゃ自殺しろなんて命令は出せませんよ。でも、女性が服を脱いだり着たりするのは別におかしくないでしょ?」

「なっ!」


「い、いやだぁ!やめろ…やめてくれええええっ!」


 必死の精神的抵抗も虚しく手を背中側に回し、スカートのファスナー「ちいいい~い」と下げた武林(OL)は、両手でピンクのスカートの両端を持つと、一気に足元まで引き下げた。

「きゃーっ!」


 嬉しそうな悲鳴が敵陣営から上がった。



第二十八節


 スカートがあった部分には、膝上までの長さのスリップが刺繍のふちまでモロ見えになっている。

 徒党を組んでメタモルファイトをしている集団においては、味方の男が女にされ、女物を着せられる「変わり果てた姿」になってしまう光景は日常茶飯事なのだが、流石に女物の下着を見せつけながら一枚一枚脱いで行く光景はそうそうお目に掛かれない。


「やめ…ろぉ…」


 白魚の様な細く長く美しい指…家事がギリギリしにくそうに伸びた形のいい爪の指先…でベストを脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを一つ一つ外していく。


「綾小路さん!これじゃ公然ストリップです!」

「栗原さん。確かに約束は約束ですが、これ以上の強制露出は立ち合い人として認められません!」


 肩をすくめるジェスチャーをする色男。


「ごもっともです。沙耶さやちゃん!」

「は~い」


 にこにこ顔の紺色の制服めいた格好の女が何やら大仰なものを出して来る。

 それは巨大なフラフープみたいなものである。


「これは…」

「着替え用の簡易テントみたいなものです。これを」


 沙耶と呼ばれた女が遂にブラウスまで外され、メイクが決まった顔でキャミソール状のスリップだけを身に着けた下着姿の女状態とされた武林の足元に持って行く。


 無造作に落とされたピンクのスカートとベストを拾い上げるとリングをくぐらせ、真ん中に武林を立たせる。

 そして、そのまま一気に引き上げた。


「…なるほど」


 白い幕がそのまま引きあがり、半裸の下着姿だった武林を隠していく。コスプレなどにも使われる小道具である。


「これなら文句無いでしょ?」

「…まあ、いいでしょう」


 そのリアクションを確認すると、ふと考えていた栗原が何やら思いついたようだ。


「そうだなあ…色々考えてみたけど、武林さんには…エレベーター・ガールの制服なんて似合うんじゃないかなあ」



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