倉秋健人の場合 13
第二十五節
次から次へと繰り出される攻撃は休む暇も無い。
だが、栗原は実に的確にそれをブロックし、受け流し続ける。
前にも似たようなことがあった。対飛田戦だ。
飛田はベテランのメタモルファイターで、実践で培ったカンと経験で武林の攻撃を捌いたが、栗原は防御も練習の上で使いこなしている。
「これは…凄いですね…武林さん」
「うるせえ!」
数えきれない攻防の末、真正面からモロに正拳突きが入った!…様に見えた。
だが、よろよろとバランスを崩して後ずさっていたのは武林の方だった。
「…!?」
目を白黒させている武林。
「あれは…化頸?」
「何だよそれは」
「太極拳の防御法の1つです」
「太極拳ってあのおじいさんたちがゆっくり動いてる健康体操の?」
「あれは単に動作の一部を健康体操にアレンジしただけで、本来太極拳は最も実戦的で強烈な憲法の1つですよ」
そうこう言っている内に武林が苦しみ始めた。
「ぐあ…あああ…」
わさわさっと髪が伸び、同時に無骨な身体が細くなっていく。
「すいません…大人げないとは思ったんですが…」
「うる…せええっ!」
髪を振り乱しながら襲い掛かってくる。
フェイントを交えながらの回し蹴りにひじ打ちなど、ボクシングなどの立ち技系格闘技では余り見られない技もどしどし繰り出していく。
しかし、みるみる内にその身体は細く可憐に変化していき、ヒップは豊満になり、乳房も豊かになる。
「すっかり女性になられましたね。あと一歩だ」
その瞬間、空中に舞い上がった武林の身体がのしかかるように前方回転して蹴りを放つ。
「っ!?」
しかし、そのキックは相手に防御すらしてもらえなかった。
ふわりと受け止められたかと思うと、今度は逆方向に武林が空中を飛んでいた。
…全く違う装いで。
それは周囲のギャラリーにはピンク色に見えた。
第二十六節
「分かった!栗原さんは八卦掌使いなんだ!そうでしょ!」
「…バレましたか」
「なんでそんなこと知ってんだお前は」
「実際に観るのは初めてです」
「へー」
とか何とか言ってる内にガキい!とふっとばされていた武林が着地する。
ひるまず飛び掛かろうとしたが、ビン!と布が張って動きが制限された。
「!?…ああああああっ!?」
「きゃーいやー!」
…何故か相手の若い女が面白そうな悲鳴を上げる。
「あ…ああ…」
「よくお似合いです…武林さん」
「この…野郎…」
そこには白いブラウスにピンクのベストとタイトなミニスカートで悩ましい女体を包んだOL…武林の変わり果てた姿…があった。
小柄なのに余りにもメリハリのある体型故、ブラウスがかなりキツく皺が寄っており、それによってバストが強調されていた。
武士の情け…なのかそういう能力なのか分からないが、タイトなミニスカートから覗く脚線美には肌色のストッキングが履かされている。
セミロングの髪は髪止めによって落ち着かされており、上品な社会人の女性らしいメイクと、ピアスがほどこされている。ずんぐりむっくりで低く構えると安定感のあるむさくるしい空手家が、今やすっきりと背の高いオフィスレディのお嬢さんとなってしまった。
メイドカフェの中がどこかのオフィスに早変わりした様だった。
「変身決着なのでここまでです。お疲れ様でした」
ぺこりとお辞儀をする栗原。
「くそ…なんてこった…」
目の前に形よく盛り上がった乳房の形のブラウスとピンクのベストがある。
白くつるつるの表面の素材のブラウスの胸部分には白いボータイが垂れ下がっていた。
「我々のチームの一勝目ということで…」
倉秋がにやりとした。
彼らは単なる営業チームじゃない。三人の精鋭メタモルファイター集団だったのだ。




