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倉秋健人の場合 12


第二十三節


「そんな勝手な話はねえよ」

「当方としては構いませんよ」


 倉秋が言う。


「団体戦承認ということでよろしいですか?」

「…いいですか?」


 斎賀が綾小路に許可を求める。


「私の方こそ。すいません」


 ちらりと綾小路が真琴の方を見る。


「あたしはオブザーバーってことで。参加していいんならするけど」

「…そうだな。そうしてくれ」


 このおっさんたちの実力は知らんが、真琴を出したんじゃ余りにも大人げない。別に負けても命まで取られる訳じゃない。この人たちだって営業なんだから。


「先鋒はオレだ」


 ボキボキと指を鳴らして武林が前に出る。


「では私どもも先鋒を決めましょう」

「そこのあんちゃん、あんたとやりたい」

「…僕…ですか?」

「女とケンカ出来るかよ」


 もう一人の若い女のことを言っているのだろう。


「では…お名刺を」

「いらん」

「そうですか」


 名刺をしまう若い男。良く見なくてもすらりと背が高いイケメンだ。


栗原歩都くりはら・ふとと申します。よろしくお願いします」

武林光ぶりん・あきらだ」


 早くも身体を低く半身に構えている武林。


「条件を確認しましょう。ぶりんさん…でしたよね?武林さんは普通に戦われると」

「ああそうだ」

「どうなれば決着しますか?」

「ケンカの勝敗は当事者同士が決めるもんだ」

「…それでは果し合いです。見たところ空手の構えですが、空手にもルールがあるでしょ?」

「それがどうした」

「では武林さんが有効打を僕に五発ヒットさせれば勝ちということで」

「いいだろう」

「ただ、僕はメタモルファイトさせていただきますよ」



第二十四節


 空気が変わった。


「…何…だと?」

「それはそうでしょう。僕はあくまでもメタモルファイトをするつもりです。しかし、武林さんがそうでないというならそれに従うまで」

「そういうのはありなのかよ」


 これは橋場。


「別に問題無いでしょ。メタモルファイター同士でお互いの勝利条件が違う戦いだって当人同士が同意していれば可能なはずです」

「しかも片方はメタモル能力を使わずに…か」


 一応変身決着だ。武林の能力は見た目に似合わずコテコテの女子高生スタイルだから、あのミニスカートでは見えそうになる以外の動きの制約は無い。それこそ生半可なスーツのズボンよりも動きやすくなるくらいだ。

 そりゃ女になって着替えさせられるからブラもするし乳房も出来る…が、それこそ「THD」…「タイトスカート・ハイヒール・不明」のどれも満たさない。

 使うメリットはそれほどない。

 ただ、変身決着であるからには相手を変えれば勝ちだ。そこには「意識配分」などの複雑な駆け引き・攻防があり、力任せの武林には苦手な分野だ。

 公平なジャッジもいるこの場面で「有効打五発」という勝利条件は理に適っている。

 こいつが口八丁で戦局を有利に導けるとは思えない。偶然の産物って奴だ。


「じゃあ、僕の方は変身決着です。見た目だけでいいですね」

「ああ」

「分かりました。では立ち合います」


 中央に開いたスペースで睨みあい、二人の間に立つ綾小路。


「では試合…開始!」


 いきなり前蹴りを放つ武林。すぐに交わされて距離を取る栗原。


「あれは…体捌さばき?」

「何だよそれ」

「空手の型の中にはありません。…合気道系かな」

「へー」


 武林は鬼の様に次から次へと技を繰り出すが、どれもこれも栗原が涼しい顔ではたき落としていく。


「パーリングだ…ボクシングですよ」

「お前ホント詳しいのな」

「つまりどういうこと?」


 真琴が顔を突っ込んでくる。


「もしかしたら武林さん…ケンカでも適わないかもしれません」

「何で?」

「あの人…栗原さん…拳法使いです」



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