倉秋健人の場合 11
第二十一節
「なるほど。確かに面白そうではありますね」
綾小路ががさがさと硬いビニールの音をさせながら女子高生の制服を手に取りながら言う。
「でしょ?いかがです?まずはサービスで置かせていただく訳には…」
「ただ…」
「ただ…?」
がさりと女子高生の制服をテーブルの上に置いてから続ける綾小路。
「幾つか問題点と疑問点がありますね。お答えいただいていいですか?」
「お待ちください!」
手を挙げて制止する倉秋。
「折角ですから論より証拠、実践して見せるというのはいかがでしょう?」
「実践…」
「路上販売の包丁も切れ味を披露するでしょ?目の前でまずはご覧に入れますよ」
「はあ…」
「助手を二人連れて来ています。いつもでしたらこの2人にメタモルファイトをさせるところから行うんですが…」
なんつー営業だ。
橋場はドン引きになった。
扱ってるモノがモノなのは分かるんだが、実演販売で性転換して見せるというのは類を見ないだろう。
何故か男女ペアなんだが、典型的なものを見せる必要があるこの場面で、女が女になってもインパクトは無い。つまり、誰が犠牲になるのかはこの場合分かりやす過ぎるほどだ。
「幸いお客さんもいらっしゃいます。どうです?『団体戦』と参りませんか?」
「おい!勝手に決めるな!」
武林が声を上げる。
「あ、もちろん無理強いは出来ません。そちらさまがよろしければですが」
こちらをちらちら見てくる倉秋。
仕方が無いので橋場が答える。
「…そっちは三人みたいですけど、こっちが三人選べばいいんですか?」
「ええ」
「…どうする?」
「ボクはやりたいです」
斎賀は即答だった。
「一応訊くがアキラは?」
「…勝ったらどうなる?負けたらどうなるんだ。決着方法は!?」
聞いたのは橋場だが、武林は倉秋に質問した。
第二十二節
「決着方法ですか…基本的には当人同士で決めればいいとは思いますが、それこそ変身決着でよろしいんじゃないかと」
「それで?負けたらどうなる?」
「どうにもなりませんよ。スポーツみたいなものです。ただ、デモンストレーションにお付き合い頂くとはいえ、軽いペナルティくらいはあった方が緊張感があっていいでしょう」
「何だと?」
綾小路が真剣なまなざしで観察している。
「…そうですねえ…ならば負けた方は勝った側の指定する衣装に着替えなくてはならない…というのはどうでしょう?」
「何?」
斎賀と橋場が色めきたった。
「着替え…る?」
「そんなに顔色を変えなくても大丈夫ですよ。たかが服です服」
顔を見合わせる橋場と斎賀。
それもそのはずで、実はこの三人は変身…性転換…した後「着替えた」経験が無い。相手に着せられた衣装そのまんまで戻るのみだったのだ。
仮に着替えると言うことになると必然的に女物ということになるのだろうが、女物から女物に着替える刺激的な行為はしたことが無い。
それに…最大の問題がある。
「まだ着替え未経験のファイターさんたちですね?よろしい。疑問に答えるためにも…いかがです?」
「団体戦だと言ったな」
「…ええ」
睨み続けながら武林が言う。
「3人で団体戦なら2勝した方が団体で勝ちってことになるな」
「…そう…なりますかね」
「個人の決着の後、団体戦の勝敗でもペナルティは付くのか?」
「考えてませんでしたが…お望みなら」
倉秋とやらは大した自信だ。
「なら、一人はメタモルファイトじゃなくてもいいな?」
「何?」
「オレはメタモルファイトは好かんのだ。どうしてケンカなのに女になったり女装したりせにゃならん」




