倉秋健人の場合 05
第九節
「…と、言う訳です」
目の前にはすっかり元に戻った斎賀がいる。
「これじゃまるで変身ヒーローだ。変身ヒーローが女になるなんぞ聞いたことがねえよ」
「しかもセーラー服だもんね」
斎賀が首を振っている。「そんなマンガやアニメの主人公は今ざらにいます」という意味ではない。
「全く違います」
「…どこが」
「まず、衣装や変身後の姿を操ることが出来ません。協力してくれたファイターの属性に完全に依存します」
つまり、真琴ならセーラー服、武林ならブレザーと言う具合に変化後を選べる訳じゃないということだ。
「橋場さんはそれこそ自分の意思で人知れず勝手に変身したり戻ったり出来るとイメージしてるみたいですけど、このややこしいリクエストを承諾してくれる人がいないとそもそも無理です」
「あたしみたいなね」
「そうです!正にその通り!」
「いいから」
軽く咳払いをしてメガネのツルの中央を押して上げる斎賀。
「あと、これはメタモルファイトの試合中の副産物としての変身です。ですから使えるのは一度に一回きり」
「…一回だけ?」
「ええ。要するに変身1回に纏わる開始・終了の取り決めみたいなもんですから。自由自在に変身したり戻ったりできる能力を得る訳じゃありません」
真琴が手を挙げた。
「メタモル能力は?」
「…さっきは特に何か決めました?」
「いや、特には」
「だったら原則通りです。メタモル能力はそのままでしょう。ただし、メタモルファイター相手にメタモルファイトを新規開始は出来ません」
「じゃあ…どうする?」
「さっさと変身を介助して試合の影響を無くすか、或いはメタモルファイトじゃない、普通のケンカをするしかないでしょうね」
第十節
「…メタモルファイトじゃないケンカってありうるのか?」
身を乗り出して来る武林。
「…あまり経験はありませんが…そうするしかないでしょ」
「そうか…そういう手があったのか…」
「お前…何を考えてんだよ」
橋場が武林に呆れていた。
「オレは腕試しがしたいんだよ!この能力が目覚めてこっち、まともにケンカが出来てねえんだ!」
「お前のカラテをメタモルファイター能力で叩き付けたら一般人なんぞ死んじまうぞ」
「だからつまらんのだ!かといってメタモルファイターはメタモルファイトしかしねえし」
「お前は苦手だもんな。メタモルファイト」
「うるせえ」
真琴が残りのアイスティーを吸い切り、ずるずると音を立てた。
「なるほどねー。大した分析だわ―」
「どう思います?鬼頭さん」
「多分その分析で当たってると思う」
「そうか」
「でも、使い道あるのかなあ」
腕を組んで考えている斎賀。
「身分を隠しての潜入捜査とかならアリかもしれません」
「あの…あたしバカだからあんまり詳しくないんだけどさ、潜入捜査って場合に寄っちゃ何か月も何年もやるんだよね?」
「…そうですね」
「その間ず~っと女なわけ?子供できたりしたらどうなんの?てか月のものもくるけどそれも処理しないと駄目なんだよね?」
「…それは実際にやってみないと何とも」
「参考になりそうな話を聞ける人間なら知ってる」




