ジョー・キングの場合 12
第二十七節
「…お前だって対して変わらんだろうが」
「…そうだな」
無骨な男の手で、そっと3/4ほどしかカバーされていない乳房の上から手を置いてみた。
「…妙なもんだ。こういう風に接するのは初めてだ」
「バニーになった経験は無いってのか」
「…無い」
ジョーの方は身体…バニー衣装はほぼ完全に装着された状態だ。バニーガールと言えば!のスタンダードな黒である。
ハイレグの身体の脇が編み上げ形状になっており、垂れたひもが余計にセクシーだ。
「そろそろ教えておいてやろう。最後まで知らないのはアンフェアだからな」
「…何だよ?」
「私は確かにメタモルファイターだが…ギャンブルに特化した特殊系だ」
しばし沈黙。
「…何だと?」
「だからこそこんなところにいつまでもいるんだよ」
「特殊系?イカサマか?相手の手を読める透視能力とか?」
「違う違う。そういう能力じゃない」
「…分からん。バニーガールってだけならオレもいるし…」
「ギャンブルに特化したメタモル能力と言ったろ?」
「説明する気ならちゃんとやれ」
「ギャンブルの醍醐味とは…私に言わせれば『負ければ全てを失うかも知れない』というヒリヒリした緊張感だ」
目を剥いているイケメン…ジョー。
「そう…かよ」
はしたなくも半分むき出しになった尻をぽりぽりかくバニーガールとなった身体のシン。
「だからどんな大富豪になっても全てを掛けたギャンブルは出来る。出来るが…」
「スリルが足らんってか?」
「ただのスリルジャンキーじゃ駄目だ。最善を尽くして尚ギリギリの勝負が希望だ。だからレイヤー方式を思いついた」
「レイヤー方式?」
「下から変わって行く今のやり方だよ」
「…お蔭でえらい迷惑だ」
ジョーは…楽しんでいる余裕はあるまいが…、大きな胸の谷間を見せつけながら渋い表情をしている。
「負けたら殺される勝負ってのも駄目だ。恐怖が先に立ちすぎる。もっとこう…絶対に負けられず、受け入れておかしくない条件でないと」
「何を言ってんだか分からん」
「お前は勝利の報酬として1,000万ドル(約12億円)のギャンブルを受けたな」
「…ああ」
「ギャンブルというのは質草があって初めて成り立つんだ。お前は自動的に1,000万ドルに相当するチップを張ってる」
「…今のオレの所持金は1万ドル(約120万円)ぽっちだぞ?ベガスじゃ素寒貧も同然だ」
「金じゃねえよ」
しばし沈黙。
「…まさか…」
「それが私のメタモル能力だ。この私とのメタモルファイトで敗れたメタモルファイターは…永遠に女になったまま戻れない」
第二十八節
「…はぁあ!?」
「貴様まさか勝負に敗れても一時的に肉体が女になってマスカレード(≒コスプレ)させられる程度に考えてたんじゃないだろうな?」
悪いが考えてた。
「…この勝負無効だ!そんな話は聞いてない」
「残念だが貴様はもうそこまで含めて同意してる。始まる前に言ったな?戻るための解除条件があり、その内容は教えられないと」
「…」
そんなことも言ったっけか。
「解除条件が存在しない…男に戻れない…ってのがその答えだ。私はウソはついてない」
「バカな…それって、負ければお前も女になったっきり戻れないってことだぞ!」
「だからそういう能力なんだよ!」
「…お前こそクレイジーだ。何なんだその能力は…プレイヤー二人とも追い込むだけで全く自分が有利にも何もなってないだろうが!」
頭を振るジョー。
普段ならさぞかし決まっている二枚目の仕草なんだろうが、胸から下が真っ黒なバニーガールでは下手なコントだ。
「そこで試されるのが精神力だろ?これまで何人の自称ギャンブルにも強いメタモルファイターと戦ってきたことか。連中は一攫千金を夢見て私の前に座り、仮に負けても一夜のバニーガール体験を楽しもう…という程度の心構えで戦う」
「…」
「試合が始まって真相を聞かされるともうメロメロだ。」
そりゃ、負ければ永遠に女になっちまうんだから平常心を保つのは難しいだろう。
メタモルファイターたちは言ってみれば常に「優位戦」を戦っているみたいなものだ。
一般人相手には腕力ではまず負けない。
互角に戦えるのはメタモルファイター同士ってことになるが、メタモルファイター同士で行われるメタモルファイトは、どこかなあなあになりやすい。
常に自分がやり返される可能性も考慮すると、たまたま勝ったところで一方的に勝利を誇るのは危険だった。次にやり返されない保証はないからだ。
そしてそれらの心理も全て「メタモルファイター同士の戦いは、負けて女にされ、女装させられても元に戻れる」という前提に支えられている。
それが崩れて、「敗北=女への性転換」ということになれば手も竦むだろう。
「こんな素晴らしい方式を思いつかなかったから今までやって来たのは7スタッド・ポーカーばかりだが…圧倒的優位からボロボロになっていくプレイヤーのどれだけ多かったことよ」
「…質問いいか?」
身体が完全にバニーガールになっている…表現は悪いがマヌケな…スタイルで質問するシン。




