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ジョー・キングの場合 10


第二十三節


「スペードだ」

 シンは3回連続で黒を引き当て、必死の反抗を試みるものの、やっとジョーの革靴のつま先がとがってきたくらいである。

「では私が引こう…ダイヤだ」

「あ…」

「出目の偏りも無い。確率から言ってもイカサマもしていないのは分かるな?」

「…」

「手を出すんだシン」

「う…あああっ!」

 精神の動揺が酷い。

 一気にふくらはぎの真ん中くらいまで網タイツに包まれた「女の脚」にされてしまった。

 見た目は愈々、異様なことになっている。

 もう見て確かめる気にもならない。

「見てもいいし、触っても構わんよ?」

「うるせえ」

 とはいうものの、ふくらはぎに力を入れると…ストッキングと網タイツの感触…なのかどうか分からんものがする。

 なんとここから2連続で赤を引いたジョーは、一気に膝を越えて、ふとももの真ん中くらいまで網タイツと化していた。

 ほぼ「脚だけ女」状態である。

「…」

 しかも、単に脚だけ女になったのではない。およそ考えうる限りもっともセクシーな見た目を持つ網タイツに包まれ、真紅のハイヒールを履かされた状態でである。

 ご丁寧に網タイツは(かかと)からお尻の頂点に向かって「バックシーム」という縫い目が濃く走っており、単なる色の濃いタイツや網タイツに倍するセクシーさを演出しているのである。

 遠くから何やらひそひそ言っている声が聞こえる気がする。

 そりゃそうだろう。

 ふとももから下だけバニーガールコスプレしてるおっさんがいたらシンだって遠くからガン見してしまうだろう。

「…続けよう」

「質問いいか?」

「…いいとも」

「カードのめくり合いに勝って、相手を攻撃していい時間は何秒くらいだ」

「…余り考えたことは無いが…5秒くらいじゃないか?」

「その時間中にきちんと攻撃を喰らわないと駄目ってことだな」

「そういうことだ」

 ジョーは考えた。

 なるほど有効時間を把握した上で、ギリギリまで我慢して最後に少しだけくらって耐えようというのだろう。悪くない発想だが…気づくのが遅い。

「もう一つだけ確認」

「言ってみろ」

「一回の攻撃につき、少しも変化をしなかった場合は反則負けってことだよな?」

「そうだ。最初に確認した通りだ。当然だが全く攻撃をしない場合も同じだ」

「分かった。めくろう」

 一体何をたくらんでやがる?

「スペードのエース。ノワールだ」



第二十四節

「カモン」

 これまで通ったシンの攻撃は、焦げ茶色の革靴を真っ黒にする程度しか通っていない。

 ふとももから先をあられもない網タイツ姿でさらしている今の状況に比べればダメージゼロに等しい。

 いつものように手を触れるシン。

「…?」

 おかしい。攻撃の意思を何も感じない。

 もしかして物凄く細い攻撃を通そうとしてる?そんなことをして何の意味があるんだ?

 攻撃をするつもりが無いのか?

 もしかしてギブアップってことかね。


 …それにしてもおかしい。もしかして物凄く細い攻撃をして、こちらに全く通させず、反則勝ちを狙ってる!?


 なんて捨て身の戦略を取りやがる。クレイジージャップめ!

 仕方が無い、危険だが大きく精神的ガードを解いて受け入れ体制を取ろう。


 …おかしい。攻撃の意思を感じないぞ?どうなってる。


「時間切れだ」


 急な声だった。

 えっ!と思うヒマも無く、一気に変身の意思が流れ込んでくる。


「うわあああああああああーっ!」


 革靴は見目麗しい流線型へと変貌し、漆黒の光沢を放つ。

 蛇の様にストラップがうねり、足の甲を押さえつけ、形を浮き出させるくるぶし。

 細マッチョに筋肉質にまとまっていた脚は、肉感的な脚線美を形成し、ふっくらと皮下脂肪がついていた。

 そのフォルムに残らずまとわりつく網タイツ…。

 バックシームが走り、お尻の頂点を越えてパンツ部分に飲み込まれて行く。


 そう、下半身を完全に女…バニーガールにされたジョーは、ハイレグにお尻のしっぽ型の飾りまで装着させられていたのだ。

 当然の様に男性器の感触も喪失していた。


「あ…ああ…」


 真上から見ると、三角形型のパンツ部分が見下ろせる。完全に「女の下半身」だ。

 男性器があるべきふくらみは無く、ただただ安産型の(でん)部がセクシーコスチュームに包まれているだけだった。


「こっちは黒バニーだ。逆転だな」


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